『加藤家の食卓』の中心人物は、お笑い界のレジェンド加トちゃんこと加藤茶さん。そして80歳にして現役の加トちゃんを全方位で支えるのが、本書の著者で加トちゃんの奥様、加藤綾菜さんです。
偏食の夫のため生活習慣病予防アドバイザーを取得
偏食が激しかった加トちゃんのために、生活習慣病予防アドバイザーをはじめとする数種類の資格を取得するなど、今や綾菜さんはプロ妻といってもいいほど。
本書は、医師と栄養士の協力をあおいで綾菜さんが作成した、長生きのためのレシピ集です。もちろん加トちゃんからのお墨付き。さっそくおしえてもらいましょう。
健康で長生きするための食事って?
本書いわく、長生きのポイントは「減塩・減脂・禁煙」。
日本人が高齢になってかかりやすい病気が、「がんと循環器病」。循環器病とは「動脈硬化などにより細くなって詰まったりすることで、心臓や脳の働きが悪くなって起こる病気」と本書。血管を傷める原因のひとつが、塩分のとりすぎだというのです。
ちなみに1日の塩分量ですが、「WHO(世界保健機関)は5g未満、アメリカ心臓協会は3.8g未満」としているそうです。厚生労働省「国民健康・栄養調査」2014.2018年版によると、日本人の食塩摂取量は1日10g程度摂取しているという調査結果に…かなり上回ってますね。
もともと和食の味付けは塩味が中心。調味料もお醤油ベースのものが多いので、塩分を減らすのは至難の業(しなんのわざ)だとあきらめる人もいるかもしれません。
そこで登場するのが、「綾菜流(あやなりゅう)万能氷だし」。濃い味付けが大好きな加トちゃんの舌を唸らせた、簡単にできて保存も可能なだしです。さらに1回分の塩分はわずか0.3gという奇跡! これ、真似しない手はありませんよ。
簡単、便利、時短!スペシャルな氷だし
減塩メニューは味気もおいしさもない。こんな通説をくつがえした、綾菜流氷だしの秘密は3つ。
・手間がかからないこと
・満足できるうま味があること
・栄養がしっかりとれること
貪欲な私達がさらに重視したいのが、簡単、便利、時短、ですよね。大丈夫です、全部クリアしています。それではレシピをどうぞ。
☆綾菜流万能氷だし
【材料(キューブ10個分 1個 塩分0.3g)】
玉ねぎ 1/2個
しょうが 5g(1/2かけ)
酒かす 6g(約小さじ1)
かつお節 6g
しょうゆ 大さじ1
水 1カップ
【作り方】
・小鍋にすりおろした玉ねぎとしょうが、水、酒かすを入れて中火にかける。沸騰したら中火弱にして5分煮る。玉ねぎの甘みとしょうがの有効成分がしっかり出る。

・火を止め、かつお節を先に入れてから、しょうゆを入れ、鍋を回してなじませる。かつお節が沈むまで1分ほど待つと、温度が下がってうま味が出やすい。

・ざるでこす。ペーパーは使わず、かつお節などざるに残ったものは、ヘラやスプーンの背などで押して水分をしっかりしぼり落とす。うま味や塩味が入っているので、よくしぼる。

・製氷皿に3を流し入れる。粗熱がとれたらラップをして冷凍庫で冷やし固める。そのまま2週間ほど保存可能。

※製氷皿のサイズは10×19×5cm。10個のキューブが作れる一般的なものを使用しています。

※製氷機がない場合の保存方法
・ジッパーつき保存袋

保存袋をバットなどに置いて横にすることで、成分が沈殿することを防げます。
・ペットボトル

保存期間は冷蔵庫で3日ほどです。氷だし1個=約18~25gなので、目安にしてください。
栄養価も抜群
いかがですか。麺類のスープや炊き込みご飯、煮魚や肉じゃがなど、何にでも使えるのです。しかも栄養価も抜群。
玉ねぎは「血管を強くするケルセチンはむくみや冷えも改善」。
しょうがは「ぽかぽか成分ショウガオールが代謝を上げて血糖値を抑える」。
酒かすは「食物繊維に似たたんぱく質のレジスタンスプロテインが腸を整え美肌をサポート」。
かつお節は「体内でつくることができない必須アミノ酸が豊富」。
まさに、いたれりつくせり。次に、綾菜流万能氷だしを使ったメイン料理をご紹介しますね。
滋味あふれる一品、飽きのこない美味しさ

夕食に度々登場する豚肉。こってりした味付けが合う豚肉に合わせるのは、ごくわずかな調味料だけ。綾菜流万能だしが、豚肉本来の奥深い味を引き出してくれます。
☆しょうがをきかせた回鍋肉
【材料(2人分)】
しょうが 10g
キャベツ 150g
長ねぎ 50g
片栗粉 小さじ1/2
豚バラ薄切り肉 80g
ごま油 大さじ1
豆板醤 小さじ1/2(お好みで)
氷だし 1個
甜麺醤 小さじ2
砂糖 小さじ1
【作り方】
・しょうがは千切りにする。キャベツは4cm幅程度にざく切り、長ねぎは5㎜幅の細切りにして、全体に片栗粉を軽くまぶす(ムラがあってもOK)。豚肉は長ければ食べやすく切る。
・フライパンにごま油としょうが、豆板醤を入れて炒め、香りがしてきたら豚肉と凍ったままの氷だしを入れて色が変わるまで炒める。キャベツと長ねぎを上にのせ、水大さじ1程度(分量外)を入れて蓋をして中火弱で蒸す。
・蓋(ふた)に水滴がついて、野菜の色が変わって少ししんなりとしてきたら、こしょうをふり、甜麵醬と砂糖を混ぜたものを加え、上下を返すようにざっくりと炒め合わせ、全体に味がなじんだら完成。
ボリューム満点ですが、決してくどくはなく、ごはんが進みそうですよね。
「108歳まで元気に舞台に立ちたい」
加トちゃんの夢を叶えるため、綾菜さんは努力を惜しみません。綾菜流万能氷だしのだしがらを利用した、「めっちゃウマだしがら」も超優秀。
本書に掲載された28レシピで、私達も愛ある長生き生活をはじめませんか。
<文/森美樹>
森美樹
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx
(エディタ(Editor):dutyadmin)

