メイプル超合金・安藤なつ×ダイエット芸人・やぎゅう特別対談!
MAX体重はなんと120キロ! しかし、35年ものぽっちゃり人生に終止符をうち、コロナ禍で一気に60キロのダイエットを成功させたお笑い芸人のやぎゅうさん。今年2月には『1年半で成功した ダイエット術とは? 60kgやせたら人生が爆上がりしました』を上梓した。そんな彼女と同じ事務所と先輩後輩関係を長年築いているのが、「人生で一度も痩せようと思ったことはない」と言い放つ、お笑いコンビ『メイプル超合金』の安藤なつさん。親交の深いおふたりに、ビューティーガールだからこそ話せる、ふくよかな女性芸人の悩みや、せきららな恋愛事情をお聞きしました!
街で突然ディスられる!?ぽっちゃり女子の悲しき“あるある”
――まず、おふたりは、いつからふくよかだったのでしょうか。“ぽっちゃり歴”を教えてください。
やぎゅう:小6で80キロを超えて、芸人になって10年間はずっと108キロをキープしていました。そしてコロナ禍で食っちゃ寝を繰り返して……、気が付いたら体重はMAX120キロに達していましたね。
安藤なつ(以下、安藤):もうね、やぎゅうちゃんが膨らみ続けていたので、いつか爆発するんじゃないかと思いましたね……。
やぎゅう:そこまで膨らむと、日常生活の中で一般の人にもツッコまれるんですよ。エレベーターで知らないおばさんに、「うふふ。あなた、太っているわねぇ」ってナチュラルにディスられたり。(ディスる=相手を否定する、侮辱すること)。しかも穏やかな笑顔で……。さらに、「そんなに太って体を壊したらどうするの?」「一番悲しむことになるのは誰だと思う? ……親よ」って。
安藤:それ、刑事が犯罪者によく言うセリフじゃん。まあ自分も、大阪のおばちゃんに街中で突然、「あんたデッカイなあ! 通天閣かと思ったわ!!」って叫ばれたこともある。そこまでデカくねえけどな。
やぎゅう:わかります(笑)。あとね、美容室に行くと最初に数冊雑誌を持ってきてくれるじゃないですか。私の場合、3冊中2冊がメシの本です。
安藤:美容師って、正直だよな。
やぎゅう:ほかにも、電車のひじかけの上にお腹の肉が乗ってしまって、隣にすわったおじいちゃんが知らずに私の肉をクッションにしてきたり。そんな“ぽっちゃりあるあるネタ”が本にはたっぷり載っています……。
安藤:おじいちゃん……。
女性として、芸人としてのジレンマ
――ずばり、やぎゅうさんが痩せたきっかけとは?
やぎゅう:コロナ禍の長引く自粛生活で、もう寂しさに耐えきれなくなったのが大きいです。「わたしもやせて恋人がほしい!」と強く願うようになりました。恋愛モードに突入したのは人生初です。35年以上生きてきて、初めて「彼氏が欲しい」って切実に思ったんです。
安藤:それまでは、人生すべてをお笑いに捧げていたもんね。生活のすべてを費やしているというか。あ、あと唯一の趣味といったら、BL(男性同士の恋愛を描いたジャンル)好きっていうくらい。
やぎゅう:筋金入りのBL好き女子でしたね。そうですね……、芸を極めることに命賭けてました。ぽっちゃりネタを極めたくて、80キロ台の中途半端なおデブから、自分で望んで108キロになりましたから。
――最近では、「人を外見で評価や差別をしたり、“いじる”のはよくない」というルッキズムもよく問題になっています。芸人さんたちの間ではどのような反応がありますか?
やぎゅう:本当にこの数年の変化だと思います。芸人の間でも、“体型をいじっても笑いはとれない”っていう空気になってます。私も直接先輩から「(太っているのを)いじりにくい」って言われたこともあったし。だんだん「この体型が笑いの邪魔になっているのかな……」と思いはじめて、いろんな要因が重なって一大決心をして痩せました。
安藤:うんうん。
やぎゅう:でも、ぽっちゃりネタを武器にずっとやってきたので、痩せたら笑いの量も減るんじゃないか?という恐怖心もすごくありました。女としては痩せたいけど、芸人としてそれは正解なのかって。
勝手に「脂肪は武器だ」と信じ込んでいただけだった
安藤:で、実際どうだった?
やぎゅう:……同じだったんですよ。M-1グランプリのトーナメントで108キロのときは2回戦で敗退したんです。そして、痩せたときも2回戦までいきました。私が勝手に「脂肪は武器だ」と信じ込んでいただけでした(苦笑)。痩せてからの方が、できるネタも増えましたし。「おデブはいじっていい」「体型で笑いを取る」っていう時代は終わったんだなあと痛感しましたね。
――安藤さんは昔から一貫して、体型をネタの軸には持ってきませんよね。
安藤:そうですね。メイプル超合金は、片方は赤くて、もう片方は太っているっていう、ただそれだけ。ネタは相方が作ってくれていて、台本が面白ければそれでいいよねって。まあ、しいて言えば、この体型のおかげで、強い言葉やきついツッコミも、私が発すると勝手に丸みを帯びてやわらいでくれるのかなあ~って。
やぎゅう:その、芯が通ってる感じがかっこいいんです。ぽっちゃりなのに、ぽっちゃりをあまり武器にしてない。なつさんは体型だっておデブっていうより、元プロレスラーで今も筋トレもされているから、実は筋肉質でがっちりしていてすごく素敵です。昔から、私の憧れの人です。
安藤:めっちゃ褒めるじゃん。でもまあ、体型のことで相方と「それをコンビの武器にしよう」とか話し合ったことは本当にない。だって、ただでさえふたりとも絵的にもキャラクター的にも大渋滞してるから。もうお腹いっぱいでしょ。
やぎゅう:たしかに(笑)。
痩せたことで、恋愛のトラブルも急増した!?
――やぎゅうさんは、痩せたことでほかにも自分の中でなにか変化はありましたか?
やぎゅう:変化……。少しだけですが、ありましたね。
安藤:どんな?
やぎゅう:人生初の恋愛したいモードに突入したのをきっかけに、マッチングアプリで8人から告白されたり、男性が荷物を持ってくれたりエスコートしてくれたり……。
安藤:すごいじゃん。
やぎゅう:でも、私の警戒心が強すぎてダメなんです。「バックを持つよ」と優しくされても、「……こいつ、バックを手にした瞬間、一切振り返ることなく全速力で持ち逃げするんじゃないか?」とか、デートの最後に「家についたら連絡してね」って言われても、「おいおい、私を監視するのが目的か!?」って疑心暗鬼になっちゃうんですよ。もう悩みだらけですよ、聞いてくださいよなつさん。
安藤:めっちゃこじらせてるじゃん。……ここも渋滞してんのかよ。
<取材・文:青山ゆか、撮影:笠井浩司
やぎゅう
1985年生まれ。サンミュージック所属のお笑い芸人。過去に『エンタの神様』『とんねるずのみなさんのおかげでした』に出演。かつては108キロの豊満ボディを武器にした笑いで活躍していたが、コロナ禍で120キロに増量したことをきっかけに、ダイエットを決意。イラストを得意とし、日々のダイエットを記録したTwitterが話題に。2020年から恋愛&ダイエットマンガ「女芸人[孤独のコロナ]日記」を連載中。
Twitter:@honeytrap_yagi
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