

扉の向こうは、骨董品で設えた特別室
扉の向こうはただ1室、ゲストのためのスペシャルな空間で、奥に厨房を備える。ここでどんな時間を過ごせるのだろう。ふつふつと晩餐への期待が湧いてくる。
「こちらは店内で、もっとも古くて大きな骨董です。全長7mもあるんですよ」と、店主の岳野基道(たけのもとみち)さんが気さくに説明をしてくれる。
同店は、2018年春まで東京・荻窪で営んでいたが、築地市場が豊洲に移転したのを機に、門前仲町に移転した。「この屏風を飾れる物件を探しました」と笑う。

イタリア料理に加えて日本料理ができる貴重な料理の腕が評価され、在パリユネスコ大使館付公邸料理人として渡仏。帰国後2011年3月に、『坊千代』を開店した。

メニューは、月替りの献立・おまかせのフルコースのみ

例えば、「前に訪ねた時のメニューを、もう一度味わいたい」「高齢の両親を招待するので、柔らかく食べやすいものを」など。このようなリクエストにこたえるのが1日1組、完全予約制の醍醐味で、岳野さんはできる限り対応している。
日本ワインを中心に、料理とのペアリングを

サービスを担当するのは、ソムリエ資格を持つ妻の伸子さん。お酒は岳野さんとともに料理に合わせて選んでいる。
一品一品、器をめでる楽しみも

左から、ボラの子が出回る昨年11月に仕込んだフレッシュなからすみと、一昨年仕込んだ1年熟成のからすみ。そして、コゴミ、ラディッシュ、タラの芽、蒸し鮑、スナップエンドウ、ウルイと季節の野菜と魚介が並ぶ。中央の明治初頭の九谷焼のお猪口には、フレッシュなからすみを裏ごししたソースが注がれていて、バーニャカウダ仕立てとなっている。
からすみ2種はゆっくり食べ比べてみると、その違いに、開眼!
「器は、西洋文化が日本に渡ってきた頃の食卓をイメージして、幕末から大正時代のものを中心に使っています」と、岳野さん。他にも、弥生時代の土器や、パリ在住時代に買ったシルバー、川で集めた石に稚鮎を乗せるなど、骨董に限らない大胆な発想も楽しみだ。
あえて、日本のスパークリングを合わせて

里芋とフォアグラによる、スペシャリテ

パリで公邸料理人として日本料理を作っていた頃、里芋の煮っころがしを作ってアレンジしたというエピソードがある。里芋とフォアグラと合わせ、テリーヌ仕立てにしているのだ。
ひと口いただいてみると、里芋部分もフォアグラのように濃厚!「ソースには15年もののバルサミコを添えていますが、100年もののバルサミコ酢もコレクションしています」と、岳野さん。気になる方は、2,000円(1cc)で追加できるそう。
力強さのある器は、イタリアから取り寄せた大理石をハンマーで割って整えたというから驚きだ。

隠れメニューのナポリピッツァは、注文必須!


岳野さんは、素材の大切さを語る。
「自家製チーズは、モッツァレラの他にリコッタやマスカルポーネも作ります。材料となる生乳は『東毛酪農』の低温殺菌牛乳です。様々な生乳で試作しましたが、これじゃなきゃ納得のいくチーズはできなくて」。
生乳選びは氷山の一角。素材への探求心は、すべてにおいて妥協を許さないのだ。
メインは、春を伝える桜肉が登場

赤ワインと赤味噌を使ったソースは、見た目よりさっぱりしていて、余韻が滋味深い。あしらった白いレースのような野菜は、ツリーケール。古伊万里のブルー、馬肉の赤のコントラストが目にもやさしいひと皿にまとまっている。桜肉に合わせて、桜の小枝を添える細やかな演出にも心を打たれる。

七福柑と銘打った、麗しいデザート


食後には、お好みのヴィンテージカップで一息

味、器、空間、音楽。すべてにおいて最善のおもてなしを



めくるめく変わる創作懐石だけでなく、岳野さんの人柄と雰囲気に魅せられた人たちが、来店時に次回の予約をしていく。なるほど、予約困難になるわけだ。
【メニュー】
おまかせコース 10,000円
ナポリピッツァ 2,000円~(予約時に注文を)
▼ドリンク
ペアリングコース 4,000円
(ワインは1本2,000円で持ち込み可能)
※昼夜ともに2~8名の完全予約制
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
坊千代
〒135-0046 東京都江東区牡丹2-8-403-6240-3200
12:00~14:00(L.O.)、18:00~21:00(L.O.)
不定休
http://bouchiyo.com
https://r.gnavi.co.jp/dr8m79s00000/
この記事の筆者:松井一恵(文筆家)
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