
2024年に50周年を迎えるモンチッチ。
発売当初は「双子」設定だったキャラが、30周年にはなぜか「カップル設定」へと変更され、結婚式を挙げる、2023年にはなんとCEOとして株式会社を設立。
「一体どうなっているの?」
株式会社セキグチ 商品本部 マーケティング部 シニアマネージャー 幡野友紀さんに聞いた。
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【インタビュー前編】⇒モンチッチ50年の歴史……社会現象からブーム終焉まで、いま考える「存在意義」とは
「双子」設定を「カップル」設定へ……の裏事情
2004年の誕生30周年モンチッチの製造・販売を行うセキグチでは大掛かりなプロモーションが計画されていた。

オフィシャルショップの展開や、着ぐるみのグリーティングなどが企画されていたが、さらに多くの方に30周年を知ってほしいと社内で公募した際に上がってきたのが「モンチッチくんとモンチッチちゃんが実際にチャペルで結婚式を挙げる」というもの。
しかし発売当初の設定ではモンチッチくんとモンチッチちゃんは双子だったはず……。
「『双子のように仲が良く一緒にいた存在』という風に30周年以降は解釈されています(笑)。それだけ仲がよかったモンチッチくんとモンチッチちゃんが会長と社長に、結婚したいですってお願いに来た……というストーリーですね。
……まぁ無理やりなんですけど(笑)、これには弊社のモンチッチに対する考え方があります。モンチッチというのは存在自体がぬいぐるみで、ぬいぐるみというのはお迎えした人が関係を作っていくものだとセキグチでは考えているんです。だから30周年の時に結婚式を挙げたモンチッチと、皆様の家にいるモンチッチは違うもので、それぞれ皆さんが1対1で関係性を築いていくものだ、と考えています」
そんな考え方からセキグチでは、ボタンを押すとしゃべるようなぬいぐるみは作られていないという。
あくまでキャラクターや声、性格などは持ち主によって変わるものだから、あなたのそばにいるモンチッチはあなただけの存在にしてほしい……ということか。
別のキャラクターだと「ポケモンのピカチュウは、野生のピカチュウがいっぱいいて、自分のピカチュウと友達が育てているピカチュウは、同じピカチュウだけど全く別のそれぞれのピカチュウだ」が近い世界観。
そのため、モンチッチには名前と誕生日以外の詳細なプロフィールは設定されていない。
まるで島耕作?結婚、そして会社設立へ
そんな中でも、セキグチにいる「モンチッチ」は様々な活動を行っている。
「30周年では結婚式を挙げて、その後『ベビチッチ』が誕生しました。来年は50周年ということで、今年は49周年……40代最後にチャレンジすることってなんだろうね、と社内で話していた時に『会社を立ち上げるとか?』とアイディアが出たんです。モンチッチは実は“社長室長”の経験もあるので、じゃあ次は会社を立ち上げたくなるんじゃないかな?と」
50周年のイベントは「株式会社モンチッチの設立」に決定したが、30周年の結婚式同様、こちらも設定ではなく実際に行ってしまうのがモンチッチ。
「本当に株式会社を起こす手続きを踏んで『株式会社モンチッチ』を登記しました。代表取締役社長だけはさすがに実在の人間じゃないと登録ができないので、セキグチの代表の吉野が兼任していますが、CEOをモンチッチがやっています」
「懐かしい過去の存在」からの脱却

50周年をお祝いする目的で立ち上がった「株式会社モンチッチ」だが、モンチッチの周年だけを盛り上げるわけではないようだ。会社設立のお知らせには「昭和レトロ文化を支援する」と書かれている。
「ここ数年はありがたいことに昭和でヒットした商品についての取材をお受けすることが多くて。弊社としてはモンチッチは現在進行形で今も売り場にあるのになぁ……という思いもあったんです。どうしても1970年代の社会現象を起こしたあの頃がすごすぎて、どこに行っても『昔持ってました!』『実家にありました!』と言われて……もう永遠に“懐かしい存在”でしかいれないのかなと思った時期もありました。
逆にエモくていい!
ここ数年はレトロというもの自体が若い子たちにもブームになっていて『逆にエモい』みたいな形で評価されているのを目の当たりにして、昭和の時の良さをそのまま残しておいても良いのではないかと考えるようになりました。
さらに、今ではシャッター街になってしまった商店街も増えている中で、モンチッチのぬいぐるみや写真を飾ったり、モンチッチを活用したイベントなどを行うことで少しでもお客さんが『あの頃みたいだね』『懐かしいね』と楽しんでくれる役にたてたらいいなと思うようになったんです」
一過性のブームのひとつではなく、あくまでレトロな「文化」としての在り方を見出したモンチッチ。古き良き伝統が残る浅草の街全体を巻き込んだスタンプラリーを実施したり、100年以上続く老舗企業が多く存在する山形で「山形花笠まつり」の広報大使にモンチッチが就任するなど、50周年もモンチッチだけのお祝いとしてではなく、昭和レトロを盛り上げる年にしたいという考えだ。
50年の時を経て、いち「ぬいぐるみ」から昭和レトロの象徴へ……。さらに今後モンチッチがどんな“50代・60代”を迎えるのか楽しみだ。
<取材・文/松本果歩>
(エディタ(Editor):dutyadmin)















