Q. 病気が原因で、犯罪行為をしてしまうことはありえますか?
著名な人や、社会的にも地位のある活動をしていた人が、万引きなどの犯罪行為で捕まったと聞くと、びっくりしてしまうと思います。中には、病気が関与しているかもしれないケースもあるようです。わかりやすく解説します。
Q. 「人格者だと思っていた人が万引きで捕まったという話を聞き、びっくりしました。モラルも高い人で、悪びれずに犯罪行為をするとはとても思えません。何かの病気が原因ということは考えられますか?」
A. 本来の性格に関係なく、反社会的な行動をしてしまう病気はあります
万引きなどの犯罪行為の背景には、本人にしかわからない動機や事情があるかもしれませんので、すべてが病気のせいとは言えません。
しかし、このような反社会的な行動をしてしまう病気は、実際にいくつかあります。代表的なものの一つとして、脳の病気である「ピック病」が挙げられます。ピック病とは、「ピック球」と呼ばれる異常な物質が、大脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞内に現れ、脳が委縮してしまう病気です。原因はまだ明らかになっていません。
前頭葉は、感情のコントロールや理性などを司っている部分です。そのため、この機能が阻害されると、本来の人格・性格には関係なく、自己中心的・反社会的・非道徳的な行動を取ってしまうことがあります。
この病気の場合、残念ながらまだ治療法がありません。ご家族や身近な方が正しく監督を行ったり、地域や周囲のサポートを受けたりして、本人の再犯を防止することも必要です。
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)