コオロギ食、まだまだ炎上中です。
2023年2月頃から炎上がはじまり、今や国会でも議論の対象になっているのが、「コオロギ食」。みなさんは、この問題をどうとらえていますか?
コオロギ食が注目され始めたワケ
そもそもコオロギ食が大きく注目されるようになったのは、2013年。国連食糧農業機関(FAO)が昆虫は環境負荷の低い有望な食糧源ということで、食糧危機の解決策として推奨したことがきっかけでした。
その後2018年に欧州連合(EU)が食用昆虫を食品として承認。これを機にベンチャーの参入が活発化してサプライヤーが増加。2025年には世界の昆虫食市場が1000億円規模になるとも予測されています。
日本において本格的に昆虫食製造の動きが活発になったのは、2020年前後。2019年に無印良品が「コオロギせんべい」を、2020年に敷島製パンが「コオロギのフィナンシェ」や「コオロギのバゲット」を発売するなど、大手企業から登場するようになっています。
2023年2月から始まった炎上について細かく掘り下げて、どちらが正しいかなどを議論するつもりはありません。そもそもコオロギ食についてはさまざまな意見があり、さまざまな人が発言をし、行動していることは事実です。
そこでここでは、敷島製パンの「コオロギのクロワッサン」を実食しながら、コオロギ食について冷静に知っておくべき事実や現状を整理していきたいと思います。
コオロギ食はなぜ嫌われているのか?
今回注文したのは、敷島製パンが通販限定で販売する「コオロギのクロワッサン」。価格は10個(1袋2個入り×5)で税込2592円。現在は、これまで使用されてきた食用コオロギパウダーの生産終了に伴い、販売が一時休止となっています。
そもそもこの「Korogi Cafe」シリーズは、高崎経済大学発ベンチャー企業であるFUTURENAU(フューチャーノート)の食用コオロギパウダーを使用して作られている商品で、同シリーズにはフィナンシェやバウムクーヘンがあります。
私の個人的な嗜好はさておき、食べてみるといつものクロワッサンの延長として普通に味わうことができました。ナッツのような風味やコクを感じ、言われなければコオロギが入っているとはまったく想像できません。
ではなぜこんなにも嫌悪感を表すコメントが後を絶たないのでしょうか? 私たち生物には、食べたことのないものをはじめてみたとき働く防衛本能(フードネオフォビア)が備わっていることや、日常的に昆虫を食べる食習慣がないこと、ゴキブリなどの虫被害の経験などが恐怖心や不安感を後押ししてしまうことも要因として考えられます。
また、アレルギーの危険性については不明確な要素があります。FUTURENAUTの公式サイト内にある説明によると、甲殻類、ダニ、軟体動物などにアレルギー症状を示す被験者に対して交差反応性を持つ可能性があるとの研究報告があるために、管轄の保健所の助言を受けて一括表示外に「エビやカニに似た成分を含みます」という注意喚起を自主的に行っているとのこと。この現状をどう捉えるかは、冷静に判断する必要があります。
今できることとして、敷島製パンのお客様相談センターに質問してみることにしました。
コオロギ以外にカイコパンもあった!
コオロギクロワッサンと一緒に入っているものは、「コオロギカフェ」のチラシのみ。メーカーとしての熱い想いやスタンスを確認したくなって、電話してみました。
なぜ今コオロギパウダーを入れたパンやお菓子を作り始めたのか? とストレートに質問をしたところ、以下の回答が返ってきました。
「2050年の世界的な食糧糧不安やたんぱく質源不足に備え、持続的な食糧の安定供給を目指して作っています。コオロギの他に(蚕の)まゆ」もあります」
えっ、まゆ……? サイトを見てみると、確かにあるではないですか!「食用蚕パウダー」を使っているという商品が。蚕は栄養、おいしさ、環境など、これからの「食」に必要な要素を満たすサステナブルフードなんだそうです。
今後コオロギ論争はどこに行く!?

3月に入り、とうとう国会でもコオロギ食問題が取り上げられるようになってきました。3月30日に行われた衆議院消費者問題特別委員会において、消費者及び食品安全担当でもある河野太郎デジタル担当相は、
「陰謀論者がSNSでコオロギの話を随分拡散しているようで、かなりデッチ上げの投稿が多数見られている。私もそれに巻き込まれて随分、迷惑をしている。現時点で具体的な健康被害事例が確認されていないので、コオロギについて特に現行の原材料表示ルール以上の表示の義務付けを行う必要は現時点ではない」
という主旨の説明を行いました。その後の4月1日、河野大臣はツイッター上でも以下の連続投稿をしています。
「去年の二月だったか、スタートアップ企業関連のイベントで、参加企業がコオロギをやっていたので、試食しましたが、それだけです。スタートアップ企業には頑張ってほしいですが、コオロギ食を特に推進しているわけでもありません。(後略)」
「コオロギを使ったタンパク質を考えているスタートアップと酪農関係の予算にはなんの関係もありません。コオロギ食べるなら牛乳を飲めなどと煽っている人は、元を辿れば、いつもそんなことをやっている人たちです。もちろんダボス会議も関係ありません」
「コオロギを使ったタンパク質の可能性にまじめに取り組んでいるスタートアップ企業や研究者がいます。また、その取り組みを支援している企業もあります。世界的な課題の解決の糸口になればと汗水垂らして頑張っている人たちの努力を、一部の人の扇動に乗って傷つけるのはやめませんか」
河野大臣が発する言葉遣いに理論的な冷静さがあるとは、少なくとも私は感じませんでした。つまり国レベルでもこのような情緒的な表現が交わされている状況ですから、コオロギ食品を口に入れなければならないシーンに出くわしたら、立ち止まって自分の意志を優先してもよいのではないでしょうか。
コオロギについてのアレルギーの危険性が明らかになっていないこと。日本において安全性はもちろんのこと危険性についても正しく評価されているわけではないということ。この二つについては事実だと言えそうです。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
スギアカツキ
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。ビューティーガール連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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