人間には、カラダを動かす筋肉が400個以上も存在します。
その中には大きな力を発揮する代表的な筋肉だけでなく、聞いたことがないような小さな筋肉もたくさん含まれています。とくに肩関節のまわりには、たくさんの筋肉が付着しています。
ここでは肩まわりの小さな筋肉、そして肩関節の動きに関わる重要な筋肉である「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」について解説します。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは
ローテーターカフは、肩甲骨と腕の骨である上腕骨をつないでいる筋肉の総称です。「回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)」とも呼ばれます。
ローテーターカフの筋肉は「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょくかきん)」「肩甲下筋(けんこうかきん)」「小円筋(しょうえんきん)」の4つ。深層にあるため、肩のインナーマッスルとして紹介されることが多い筋肉となります。

この筋肉は細く弱いですが、スポーツ動作はもちろん、日常生活でも大きな役割を果たしています。
ローテーターカフの役割
ローテーターカフにはどのような役割があるのでしょうか。
肩甲骨と上腕骨をつないでいる関節「肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)」の形状は球関節に分類され、さまざまな方向に動くことができます。そのため、腕を自由自在に動かすことができるのです。
さまざまな方向に動く一方、問題点もあります。それは、安定性が悪く関節が外れやすいこと。おそらく「脱臼」と聞くと、肩の関節が抜けたというイメージが多いかと思います。ローテーターカフは、そんな安定性の悪い肩甲上腕関節をスムーズに動くよう安定させる役割を持ちます。
ローテーターカフは鍛えないと衰えるローテーターカフも筋肉ですから、鍛えなければ衰えます。ローテーターカフが弱くなれば、その分だけ肩関節の安定性が悪くなるということです。
日常生活程度であれば心配はありませんが、スポーツ競技となれば話は別。ケガのリスクが高くなり、パフォーマンスの低下をもたらします。
また、日常生活においてもローテーターカフの筋力低下はデメリットがあります。肩の動きが悪くなり、肩こりのような痛みの原因に繋がります。
そのため、ローテーターカフのトレーニングは欠かすことなく取り組んだほうがよいでしょう。
ローテーターカフを鍛えるエクササイズ
棘上筋のエクササイズ 足を肩幅に広げて立ち、両手に逆手でダンベルを持つ 肘を曲げず、ダンベルをやや前横へ、肩の高さくらいまで持ち上げる ゆっくりと元の姿勢に戻る
このエクササイズは「フルカン(Full can)エクササイズ」とも呼ばれます。ポイントはダンベルを持ち上げる角度。肩甲骨の延長線上にダンベルを持ち上げるのが効果的です。
肩甲骨はハの字になっているので、少し前側(30度~45度くらい)に持ち上げるようにしましょう。
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棘下筋のエクササイズ 横向きに寝そべり、股関節と膝を曲げる 上の腕でダンベルを持ち、90度に曲げて力を抜く 肘を動かさないように天井方向へ持ち上げる棘下筋は、肩を外側に捻る働きを持つ筋肉です。動作中に肘が動いてしまったり、上体が後ろに傾かないように気をつけましょう。
肩甲下筋のエクササイズ 横向きに寝そべり、股関節と膝を曲げる下の腕を90度に曲げ、ダンベルを持つ 肘を動かさないようにダンベルを天井方向へ持ち上げる
棘下筋のエクササイズとは逆に、今度は下の手でダンベルを持ちます。
肩甲下筋は肩関節を内側に捻る働きを持っています。そのため、棘下筋と逆の動きを行うことで鍛えることが可能です。
棘下筋のトレーニングと同じように、肘を動かさないようにしましょう。
ローテーターカフを鍛えるときのポイント
トレーニングは低負荷で行うローテーターカフは、先ほどご紹介したように小さい筋肉です。高負荷で行うとローテーターカフではなくその表層にある筋肉を使ってしまい、刺激が少なくなります。
そのため、負荷は軽く(1~3kg程度)して、筋肉を意識しながら行うことがポイントです。
さまざまなエクササイズを行うローテーターカフは4つの筋肉です。そのため、エクササイズ方法もそれぞれ違うものになります。個別エクササイズを行い、まんべんなく筋肉を刺激するようにしましょう。
ローテーターカフのトレーニングは、特別な器具がなくても手軽に行うことができます。ダンベルがない場合はペットボトルに水を入れたものや、チューブで行ってもよいでしょう。
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[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。スポーツ系専門学校での講師や健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師経験も多数。そのほか、テレビや雑誌でも出演・トレーニング監修を行う。日本トレーニング指導者協会JATI-ATI。
【HP】
<Text:和田拓巳>