アスリートやトレーニング愛好家にとって、筋肉づくりや疲労回復に必要な栄養素の摂取は重要事項です。日常の食事だけでなく、サプリメントを積極的に利用している人も多いでしょう。
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すばやく体内に吸収され、筋肉づくりに役立つといわれるのが、必須アミノ酸の集合体であるBCAA(ビーシーエーエー)です。BCAAというとサプリメントを思い浮かべる人もいると思いますが、通常の食品にも多く含まれています。
それでは、1日の中でどのようにBCAAを摂っていけばいいのでしょうか。
BCAAの効果的なとり方や、EAAとの違いといった基礎知識をまとめ、さらに管理栄養士の佐藤樹里さんにおすすめの食事メニューについてのアドバイスをいただきました。
BCAAとはどういう栄養素なのか
筋肉や臓器、肌など人体をかたち作っている「たんぱく質」は、「アミノ酸」から構成されています。
このアミノ酸は全部で20種類あり、体内で合成することができないため食事から摂る必要がある「必須アミノ酸(9種類)」と、体内で合成できる「非必須アミノ酸(11種類)」に分けられます。
●必須アミノ酸バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン(リシン)、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン(トレオニン)、ヒスチジン
●非必須アミノ酸アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸

必須アミノ酸の中でも、枝分かれした分子構造(分岐鎖)をもつのが「ロイシン」「イソロイシン」「バリン」の3種類で、その構造から「Branched Chain Amino Acids」(分岐鎖アミノ酸)、略してBCAAと呼ばれます。

BCAAの効果とは
BCAAは筋たんぱく質中の16%を占め、筋肉づくりにとくに効果が高いとされている注目のアミノ酸です。
その働きには「筋肉を増やす」「回復を促進する」「集中力を高める」などの効果があるとされます。
EAAとの違いは?BCAAを調べている人なら、「EAA」という単語も聞いたことがあるかもしれません。
BCAAもEAAも、アミノ酸を摂取するための栄養です。
BCAAには、必須アミノ酸バリン、ロイシン、イソロイシンが配合されていて、筋肉の合成促進のほか、筋肉の分解を抑制する働きが期待できます。そのため、連続した運動をした場合の疲労感の軽減を狙えると言われています。
トレーニングによる筋疲労を軽減させることにより、質のよいトレーニングを重ねることで効果を得たい場合はBCAAが利用されます。
EAAは、20種類のアミノ酸のうち必須アミノ酸9種類を配合したものです。摂取して高強度のトレーニングが行われたときに筋肥大を狙えるほか、筋たんぱく合成は『BCAA』を上回るとも。
とはいえ、タンパク質の合成には20種類のアミノ酸すべてが必要なので、BCAAやEAAだけ摂るのではなく、バランスのよい食事とサプリメント補助が望ましいでしょう。
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BCAAの効果的な食べ方
トレーニングの効果を高めるためには、これらBCAAをどのように摂ればいいのでしょうか。
BCAAは摂取から30分程度で血中濃度がピークになります。
つまり、筋トレなどの運動をどのくらいの時間行うかにもよりますが、基本的に運動中、もしくは開始すぐに摂るのがよいタイミングになります。
摂取量は1回で5~10gを目安にすればよいでしょう。
運動時にはサプリメントが効率的しかし、運動中にガッツリ食事をするわけにはいきません。基本的に食事から摂取すると、吸収されるまで時間がかかってしまうので、すぐに効能がほしい運動時にはサプリメントで補うのが効率的です。
運動前には食事やプロテインなどの摂取でアミノ酸の血中濃度を上げ、そのまま運動中にBCAAを摂取していくほうが、筋たんぱく合成や筋持久力の観点でみても効率的です。
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続いて、BCAAが多く含まれる食品を紹介していきます。
積極的に食べたい!BCAAが多く含まれる食品たち
BCAAはアミノ酸のため、野菜などにはさほど含まれず、おもにたんぱく質の食品に多く含まれています。
たとえば、魚介類ならマグロ(赤身)、カツオ、アジ。
肉類なら牛肉(ヒレ)、鶏肉(むね肉)。
高野豆腐や納豆といった大豆製品、卵、牛乳、チーズなどがあります。

それでは運動のタイプごとに、トレーニング後におすすめの食事メニュー例を具体的に見ていきましょう。
タイプ別・おすすめ食事メニュー
タイプA:持久力をつけたい早朝ランナーの場合朝起きて、1時間ランニングしてから出社するサラリーマンなら、ランニング前後の食事が大切になります。
走る前にはバナナやおにぎりなどの軽食でエネルギーを補給し、運動後の朝食ではたんぱく質を摂ることを目的にしましょう。
「どのタイプも基本は変わらないのですが、ランナーならとくによりよい脂質や鉄などのミネラル分も摂っていただきたいので、魚をメインのおかずにするといいと思います。ランニング後にBCAAが多く含まれるプロテインを飲むと、疲労回復にも効きますよ!」(佐藤さん)
おすすめ食事メニュー白飯、マグロの刺身、ほうれん草のおひたし、豆腐とワカメの味噌汁
タイプB:ダイエットを頑張ってカラダを絞りたい人の場合休日にジムに通い、ダイエットとともに筋肉づくりを目指す中高年なら、まず体脂肪を減らすことが大切です。
BCAAには満腹ホルモンのレプチン感受性を高めてレプチンの働きを高め、食欲を減らす効果もあります。
トレーニング前、あるいはそのあとにBCAAのサプリメントを摂れば、その後の食事量を抑えることを期待できます。
「昼食や夕食には、脂質が抑えられ、高たんぱく質な鶏むね肉をメインに使用するといいでしょう。タイ料理のカオマンガイは、鶏の茹で汁で味付けした米飯に茹で鶏のブツ切りを添えた料理で、コラーゲンもたっぷり! ただし食べ過ぎないように注意してください」(佐藤さん)
おすすめ食事メニューカオマンガイ(鶏むね肉+白飯)、ブロッコリーと卵のサラダ、野菜スープ

よりきれいな筋肉をつけるため定期的にジムに通っている人にとって、筋肉を増やすBCAAは見逃せません。さらに、集中力をアップさせる効果もあるので、トレーニング中にサプリメントを摂るのがおすすめ。また、筋肉の回復を促進するので、トレーニング後の筋肉痛を軽減させることも期待できます。
「筋トレ後の食事には、たんぱく質量もBCAA量も高い牛ヒレ肉をメインにした献立がおすすめです。牛ヒレは牛肉でもちょっとお高い部位ですが、ここは筋肉のために奮発しましょう!」(佐藤さん)
おすすめ食事メニュー牛ヒレ丼、トマトサラダ、玉子スープ、フルーツナッツ入りヨーグルト
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[監修者プロフィール]
佐藤樹里(さとう・じゅり)
管理栄養士。フィットネスクラブにて水泳インストラクター兼管理栄養士として勤務後、フィリピン留学を経てカナダ・バンクーバーへ渡航。現地のブランチレストランでカナダ人のシェフと共にシェフアシスタントとして働く。帰国後はアスリート向けの食堂と老人ホーム厨房でのWワークを経てスポーツ栄養系健康会社に転職。その後、「アスドリファクトリー」代表として独立。好きな食べ物:チャーハン。趣味:チャーハンめぐり・筋トレ
【公式Twitter】 http://twitter.com/jurijapan1
<Text:渡辺幸雄/Edit:京澤洋子(アート・サプライ)>