筋トレをしていると、カラダにまつわるさまざまな噂話が気になるもの。テレビやネットに出ていた健康情報を交換し合ううちに、どれが本当でどれが嘘なのか分からなくなってしまいますね。
- 筋トレをやめると筋肉量は落ちる?対策方法は?メガロストレーナーが解答
- 有酸素運動と筋トレ、どっちを先にやるのがダイエットに効果的?ティップネストレーナーが解説
- 「有酸素運動は筋トレ効果を低下させる」ってホント?体脂肪をもっとも減らす運動とは
今回はトレーニングにまつわるよく聞く疑問を取り上げ、それが本当なのか間違いなのか、回答・解説していきます。
[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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有酸素運動は20分以上続けなければ効果がない?
ダイエットのために行うウォーキングやジョギング、エアロバイクなどの有酸素運動。
これらは20分経った頃からようやく脂肪が燃焼し始めるので、それ以下の時間では効果がないと耳にしたことはないでしょうか。もしそうなら、時間があまり取れない人にとって、有酸素運動は高いハードルになります。
でも安心してください。これは間違いです。

カラダを動かすときにエネルギー源として使われる脂肪は、血中に流れている脂肪(遊離脂肪酸)です。そして血中の脂肪は、運動直後から燃焼されているということが分かっています。
運動を始めて血液中の脂肪が少なくなってくると、体脂肪と呼ばれる皮下脂肪や内臓脂肪が分解されて血中に放出されます。実はこの体脂肪の分解が、20分くらいから早まると言われているのです。
そのため、「20分以上しないと脂肪は燃焼しない」という情報が存在しています。
ある研究では、短時間(5~10分程度)の有酸素運動でもこまめに行うことで、体脂肪が減るという結果が出ているようです。有酸素運動は1度に長時間行うより、できるだけ毎日こまめに継続していくことをオススメします。
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筋トレしなくなると筋肉が脂肪に変わるって本当?
筋トレをやっても、途中で辞めてしまえばついた筋肉が脂肪に変わって余計に太ってしまう。そんな噂を聞いたことはありませんか? そんなことを聞くと「筋トレしないほうがよいのでは」と考えてしまいますよね。
安心してください、これは間違いです。
筋肉は脂肪に変化しない「筋肉」と「脂肪」はまったく別のもので、お互いが変化するということはありません。筋肉が脂肪に変わったと感じるのは、筋トレを辞めたことで筋肉量が少なくなる一方、運動量の低下によって同時に脂肪がついてしまうからです。
ただし、直接筋肉が脂肪に変わっているわけではないのですが、脂肪が増えてしまうことに変わりありません。
そのため、筋トレを辞めてしまう場合は、食事面での調整によって体脂肪を増やさないようにする必要があります。
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脂肪に変化はしないが、筋肉量に変化は出る「トレーニングを中断することを『ディトレーニング(Detraining)』と言います。ディトレーニングの初期(4週間目ぐらいまで)にみられる筋力低下は、神経活動の低下が原因となります。久々に実施した筋力トレーニングで重りが上がらないのは、この現象が起きているからです。ディトレーニングの後期(4週間目以降)は、実際に筋繊維の萎縮が始まります。遺伝的な要因もありますが、3~6か月ほどトレーニングを中断するとトレーニング開始後の状態に近づいてしまいます」
筋トレをやめると筋肉量は落ちる?対策方法は?メガロストレーナーが解答 より
筋トレと有酸素運動、どっちを先にやればいい?
脂肪燃焼が目的なら筋トレが先!筋トレと有酸素運動を同日に行う場合、どちらを先に行ったほうがいいのか迷う人は多いでしょう。
この疑問も、ある研究によって「筋トレ→有酸素運動」という順の方が脂肪燃焼に効果的という結果が出ています。
「ちなみに、筋トレは筋肉量の維持・増量に役立つと同時に、筋トレ後の2~3日間は代謝が上がりやすくなると言われています。疲労した筋肉を回復させるために、身体がエネルギーを必要とするからです。つまり、筋トレ後2~3日は何もしなくても体脂肪が燃えやすい状態が続くのです。もちろん、筋トレ時の消費カロリーも体脂肪減に役立ちます」
トレッドミルとマシントレーニング、どっちを先にやるべき?ティップネストレーナーが解説 より
ここで注意するポイントがひとつ。筋肉をつけたいという目的の場合、筋トレ後の有酸素運動を長時間やりすぎると、筋トレによる筋肥大の効果が薄れてしまうということも分かっています。
もし筋肉を大きくしたいのであれば、筋トレと有酸素運動は違う日に実施した方がよさそうです。
1日に有酸素運動を行う時間が30分を超えると、おもに下半身の筋トレ効果が下がり始めます。その後は有酸素運動時間が長くなるに伴い、下半身の筋トレ効果は反比例して低下する傾向が続きます。そして、1日あたりの有酸素運動時間が60分を越えると、筋肥大効果がほぼゼロになってしまいます。
有酸素運動を行う頻度も、筋肉への影響を大きく左右します。週1回の有酸素運動ならほとんど悪影響はありませんが、同時に脂肪を燃やす効果もありません。有酸素運動が週3回を超えると、筋トレ効果が低減する程度が大きくなることが分かっています。
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筋トレするとカラダが硬くなるって本当?
筋トレに抵抗感を持っているスポーツ指導者(競技のコーチ)の中には、筋トレすることでカラダが硬くなってしまうので、選手たちに筋トレはあまりやらせないという人がいます。
しかし、これは間違いです。むしろ筋トレを行うことで、筋肉の柔軟性は高まります。
正しい方法で筋トレをすれば、むしろカラダは柔らかくなる「筋トレでカラダが硬くなってしまった」と感じた場合、それは筋トレのやり方が間違っているのかもしれません。
関節可動域を狭くして動作を行っていると、筋肉が伸ばされず常に力が入った状態となるため、硬くなってしまうと考えられます。
チンニング(懸垂)で説明しましょう。皆さんはチンニングでカラダを持ち上げた後、完全に肘がまっすぐになるまで下ろしているでしょうか。

鍛えている広背筋を伸ばすには、完全にカラダを下すことが必要です。肘が伸びきらないところでまた持ち上げてしまうと、広背筋や上腕二頭筋は常に緊張した状態となります。
このように、関節可動域をフルに使わない筋トレがカラダを硬くしてしまうのです。筋トレを行う際は、しっかり関節可動域を動かすようにしましょう。
巷に広まっているウワサはまず正誤を調べてから
巷に広まっているトレーニングの情報は、意外に間違っていることが多いものです。あたかも効果があるようなダイエット商品の広告やテレビ番組の情報でも、実際のところ効果が疑わしいものもあります。
カラダ作りを行うためには間違った情報に惑わされず、正しい情報を自分で探すことが大切。正しい知識を身につけて、健康的で効率よくカラダづくりを行いましょう。
<Text:和田拓巳/Photo:Getty Images>