心をコメる。究極の「おにぎり」作り【神谷よしえさんの12カ月の手仕事 #12】
古来より日本人の主食として親しまれてきたごはん。しかし近年では食生活の多様化により、ごはんを食べる人が減っていると聞きます。毎月、生活の知恵ともいえる手仕事と季節のレシピを教えてくださっているフードアドバイザーの神谷よしえさんも、そんな現状を嘆くひとり。「最近では主食としての存在感が薄くなりつつあるごはんですが、お米はやはり日本人の食文化の中心として私たちには馴染みの深い食べ物です。みなさんに、もっとごはんの魅力を知っていただきたいんです」
そこで最終回は、『ごはんはエール』を合言葉におにぎり作りをライフワークにしている神谷さんから究極のおにぎりの作り方を教わります。
フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ/神谷よしえさん大分県宇佐市出身。伝承料理研究家の母が設立した台所だけの建物「生活工房とうがらし」を継承。「ごはんはエール」をテーマに人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ活動や国内外でおにぎりや調味料の講演やセミナーなどをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること
ごはん大好きプロジェクト|Facebookページ
@kamiya_yoshie|Instagram
「なぜが私が握るおにぎりは昔から評判がよくて(笑)。いつしか趣味がおにぎりを握ることになりました。そこで今は、毎日おにぎりを握り続ける『おにぎりチャレンジ』や、お茶とおにぎりのペアリングを楽しむ『おにぎり神谷』というイベントなど、さまざまな取り組みをしています。『12カ月の手仕事』の最後は、今、私がもっとも力を入れているおにぎりをテーマにお届けしようと思います。心を“コメ”て握るおにぎり作りを通じて、手仕事の楽しさや素晴らしさを改めて知っていただけるとうれしいです」
夏こそ食べたい!「梅おにぎり」の作り方
調理時間:3時間(浸水時間を含む)「本来おにぎりは熱々のごはんをサッと握って頬張るのが、一番おいしい食べ方です。でもこの時期に炊きたてのごはんを食べるのは、ちょっと重たいと感じる人もいるでしょう。そんなときは、梅干しをおにぎりの具にしてサッパリいただくのがおすすめです。
特に6月が旬の梅は、この時期たくさんスーパーに並びます。『今年も新しい梅を漬けよう』と心が躍りながらも、未だ残っている去年の梅干しの使い道にお困りの方もいるのでは。そんな梅干しを食べ切るためにも、梅おにぎりは今の時期にぴったりですよ」
材料
・米……2合・水……2カップ
・梅干し……適量
作り方
1. ごはんを炊く
米を研いで、冷蔵庫で冷やしながら浸水させます。2時間浸水させたら、炊飯します。「最近は精米の技術が発達しているので、米の洗い過ぎに注意しましょう。米を研ぐときは、クルクルとやさしくかき混ぜて水を捨てます。これを2~3回繰り返し、そのまま冷蔵庫で2時間ほど冷やして浸水させます。
浸水が終わったら、電気炊飯器なら早炊きモードで炊飯しましょう」
2. ごはんをほぐす
炊きあがったら15分ほど蒸らしてから、ごはんをほぐします。「炊きあがったごはんをよくほぐして空気を入れることで、一粒一粒がツヤツヤになり、ふっくらとした仕上がりになります」
3. 手で握る
手を軽くぬらし、ごはんを適度に握ります。「炊きたてのごはんは熱いので、氷水でしっかり手を冷やしてから握るとよいですよ。手が濡れすぎていると余計にごはんが付いてしまうので、水が落ちたくらいの湿った手で握るのがポイントです。
また『熱い!』と感じるほど、強く握ったり何度も握り直したりしないことも大切。私の場合は、『1、2、3』で握り終わるほどです」
余った梅の活用法
「使いきれずに残ってしまった梅干しのもうひとつの活用法として、お米と一緒に梅干しと塩昆布を炊きこむ『梅昆布ごはん』もおすすめです。梅干しと一緒にごはんを炊くことで、ごはんの腐敗防止にもなります。食中毒が気になる夏の時期のお弁当に最適ですよ」 「作り方はいたってシンプル。浸水させたお米に梅干し1個と塩昆布を大さじ1杯入れて炊き、炊きあがったらよく混ぜ込むだけです。梅昆布ごはんは、絶妙な塩気が口の中をさっぱりとさせてくれるので、蒸し暑い夏でも自然とごはんが進みます。ほどよい塩気はありながらもシンプルな味わいなので、どんなおかずにも合う万能な主食ですよ。
また梅干しは腐敗防止だけでなく、疲労回復効果もあります。夏は体力を消耗して疲れが溜まりやすい時期なので、梅昆布ごはんは夏の疲れを解消するのにもおすすめです」
手仕事は季節の移ろいを楽しむための先人たちの知恵
日本には四季折々の豊かな自然の恵みと、人々の知恵によって育まれた食文化があります。しかし栽培技術の向上や輸入食品の増加によって、ほとんどの食品がスーパーで1年中手に入るようになった昨今。異常気象も相まって、旬や春夏秋冬の季節感がわかりにくくなっているように感じます。「手仕事」と聞くと、むずかしそう、面倒くさそう、と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、本来手仕事とは暮らしを豊かに楽しむための先人たちの知恵。真夏のうだるような暑さや真冬の厳しい寒さなどを快適に乗り切るためのヒントが、たくさん詰まっています。
この連載では、古くから受け継がれる手仕事を通した季節ごとの楽しみ方を1年間お伝えしました。何気なく過ぎ去っていく日々も、神谷さんのレシピを通じて少しでも思い出に残る毎日に変わったらうれしく思います。
取材・文/鎌上織愛
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