
幸食のすゝめ#108、ひらかれた食卓には幸いが住む、学芸大学
「え、まだおなか目立たないね!?(予定日は)来年の春くらい!?」新店『Ri.caricaランド(リ・カーリカ ランド)』の開店日に駆けつけた、『あつあつ リカーリカ』時代からの常連の女性2人が若いスタッフに声を掛ける。

カットオフのスウェットの裾をエプロンの上にオンして、日差しの中で微笑む彼女の表情には、もう母親らしい優しさが溢れている。その後ろには、1歳の息子をおんぶした(スタッフの)花ちゃんがオフィスと店を行き来している。
こんな優しさに包まれた風景を、飲食店の中で見たことはない。かつて酒場やバー、レストランは男たちの戦場だった。先輩の技を目で盗み、寡黙に働く。努力の果ての独立を目指して、日常の幸せに目をつぶる…。
女性が帰ってこられる職場づくりを
「長い間、一緒に頑張って来た女性スタッフが、妊娠して出産したら『さようなら』って、そんな飲食の世界ってイヤだなって常々思っていたんです。産休・育休後に復帰する女性たちが帰ってこれる場所を作りたかった」(堤亮輔シェフ・写真下)
『Ri.caricaランド』は、飲食業界の仕組みを優しさという側面から少しずつ変えていく新しい「祖国」なのかもしれない。ウディ・ガスリーが作り、アメリカ第2の国歌と呼ばれる『This land is your land(我が祖国)』は、次のような言葉で終わる。
「This land was made for you and me.(この国はあなたとわたしのために創られたんだ)」
目黒通りに生まれたばかりの『Ri.caricaランド』は、『リ・カーリカ』、『カンティーナ カーリカ・リ』、『あつあつ リ・カーリカ』に続いて堤シェフが造り出したショップ・ラボ・オフィスを兼ねたまったく新しい空間、笑顔に包まれた夢の祖国だ。
店から家へ、幸せなストーリーを繋ぐ

でも、その中で見えてくるものもあったという。通常は子連れなのでレストランに行けない家族たちが、テイクアウトのセットをすごく喜んでくれた。いつもはショップやデパートで買っているワインを、顔なじみの店のスタッフから買えることで宅飲みの楽しみが広がった。家庭の時間を楽しんでもらうために、レシピも伝えやすいようにした。
『Ri.caricaランド』の物販スペースは、そんな客たちの想いの延長線上にある。


これから少しずつレシピも付けて、店のメニューを再現できるようにする。スタッフの花ちゃん特製のパンや、新スタッフのパティシェールが作る焼き菓子類も充実させる。

朝と昼、まったく違う食堂へ

イタリアンらしく、極薄生ハム「クラッタ」を粥が熱い内にのせて食べる。その後は、選び抜かれた薬味が待っている。

添えられるお茶は神戸の紅茶専門店『Uf-fu(ウーフ)』のルイボスティーと、何から何まで健康的で選び抜かれた逸品ばかりだ。


一見インドカレー、しかし韓国の「水キムチ」や和の発酵高菜、海苔の香味干し、ドライ納豆が散りばめられ、上質なペコリーノチーズも添えられる。その発酵とスパイスのジャムセッションは、東西どこにも属さない伊藤ワールド。『Ri.caricaランド』ならではの、食材の個性が身体を癒やす「発酵スパイスカレー」だ。

ラボ併設のイートインという可能性

「3店舗が軌道に乗ると、僕自身が料理する場所がなくなった。それに、これまでのメニュー開発では、各店舗のシェフが考えたメニューを試食して、僕が考えたアイデアをプラスしながら完成まで持っていく。それって時間のロスが多いし、無駄な作業や経費も生まれてくる」
だったら、いっそ同じ場所で一緒に考えて、互いの意見をプレゼンテーションしながら仕上げて行こう。もし若いコたちが新しい料理を考えたら提案してほしいし、もし素晴らしければ採用して、それが本人たちのモチベーションに繋がっていく。ラボの可能性は単なる料理の実験場を超えて、大きく広がっていくだろう。

生活の幸せ指数を少しずつ増やしたい



温かいおつまみには、「ほっこり煮た豆」や「羊の蒸し餃子」など軽い食事になりそうなものも用意される。しっかりと食事したければ、「牛丼」や「ご飯セット」もある。極限まで無駄を省かれたメニューは、すべて女性のスタッフたちの手で仕上げられ、広いテーブルへ運ばれる。



ひらかれた食卓には、幸いが住んでいる。


・あなたの健康を守る朝粥 1,500円
・発酵スパイスカレー 1,500円
・極薄クラッタとプロシュートコットタルトゥーフォ 2,400円
・スナック盛り合わせ 700円
・半熟茹で卵とカラスミ 700円
・カカオトーストとイチジクバター 600円
・アモールポレンタとピーマンとサラミ 600円
・塩漬けシラウオとバターのブルスケッタ 600円
・ミルク爆弾モッツァレラ 1,800円
・肴は炙ったイカがいい 900円
・ほっこり煮た豆 800円
・ポロネギとトリュフのグラタン 900円
・羊の蒸し餃子 900円
・お肉と野菜のワイン煮 1,500円
・ウニとサーロイン牛丼 1,300円
・いろいろ米のご飯とみそ汁と水キムチ 600円
・グラスワイン 700円〜
・ボトルワイン 5,000円〜
・東京ホワイト/バラデン・ズッカ・パンプキンエール 1,200円
・ナチュラルマッコリ ホワイトマンデー 700円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税抜です
Ri.caricaランド(リ・カーリカ ランド)
東京都目黒区鷹番1-4-9 小山ハイツ1F080-7279-2233
朝粥9:00〜11:30、カレー12:00〜14:30、バー18:00〜23:00(Shopは終日営業9:00〜23:00)
水曜
https://www.instagram.com/ri.carica_land/
この記事の筆者:森一起(ライター/作詞家/ミュージシャン)