『マツコの知らない世界』(TBS系、火曜夜8時57分~)の7月7日放送回「アイスの世界」に、ビューティーガールでも連載を持つアイスジャーナリストのシズリーナこと荒井健治さんが講師として登場しました。
シズリーナさんが番組内で紹介したのは、独自の研究で編み出した「“ドロドロになる寸前”の食感MAXなアイスクリームの食べごろ」でした。しかし、これが物議を醸(かも)し、「アイスはカッチカチじゃないとアイスじゃない!」「アイスを溶かすなんて許せない!」などとSNS上で“プチ炎上”をすることになったのです。
だけどこの食べ方に違和感を覚えた皆さんもシズリーナさんも、アイスクリームを愛する気持ちは同じなはず。ビューティーガールでは両者の橋渡しをすべく、シズリーナさんに改めてお話を聞くことに。
「自分が少数派だったと気付かされました(笑)」と本音を語ってくれたシズリーナさんに、彼がテレビで伝えきれなかったという「なぜドロドロになる寸前のアイスが美味しいのか」について、詳しく解説してもらいました(以下、荒井さんの寄稿と取材を元に再構成)。
“カチカチ派”のマツコ VS “やわらかい派”のシズリーナ
僕が今回マツコさんに対してプレゼンしたのは、それぞれのアイスには“食べごろ時間”があるということでした。マツコさんはアイスクリームに関しては“カチカチ派”で、僕は“やわらかい派”。番組では僕たちを対立させる構造で面白く見せてくださったので、視聴者の方もグイグイ引き込まれたのだと思います。
「エッセルスーパーカップ」「アイスの実」などの有名メーカーのアイス数種類を例に、アイスを冷凍庫から冷蔵庫へ移し、ドロドロになる寸前のタイミングを“食感MAX”として紹介。それぞれ冷蔵庫に入れてから何分待つのがベストか、という形で食べごろ時間を紹介していきました。
たとえば「アイスの実」は、巨峰、和梨、ピンクグレープフルーツなどのフルーツ系なら23分、ミルクショコラ、濃い抹茶など大人のシリーズなら45分待った頃が“食べごろ時間”……と説明。あとで振り返ると、そのあたりからネットではざわつき始めていたみたいです。
「えー、長くない?」
「冷蔵庫に入れたことを忘れてヒサンなことになりそう…」
「さすがに溶けちゃうんじゃないの?」
「あずきバー」の食べ方は特にネットをザワつかせた
特に反感を買ってしまったのが、カッチカチで有名な井村屋「あずきバー」の食べごろ時間でした。冷蔵庫に移して60分経ち、しっとり食べごろの「あずきバー」ができあがったんですが……マツコさんはその状態にちょっと引いた感じのリアクション。

おそるおそる口へ運ぶと「氷じゃなくなっているんだよね、水ようかんの固いのみたいな感覚になっちゃうわけよ」と一蹴。「あんた本当にアイス好き?」と言われて、僕が間髪入れず「大好きです!」と答えたシーンは笑いを誘いましたが、ネットでの僕に対する反応は冷ややかでした。
それでも“ドロドロになる寸前”を勧めたい理由
わかっていたことですけど、テレビに出て限られた時間の中で情報を伝えるのは難しいですよね。僕は多くの皆さんの好きな固いアイスを否定したいわけではなく、別の食べ方もあるよと提案をしたかったんです。余計なお世話かもしれないけど、知らないのは本当にもったいないんですよ~。
意外と知られていないんですが、品質保持のために定められたアイスクリームの温度と、人間が冷たいものを美味しいと感じる温度って、じつはメチャクチャ差があるんです。
市販のアイスは、製造工場から販売店へ輸送するまでに、品質保持のため「マイナス30度以下」までアイスを凍らせて送り届けられます。各販売店の保管温度は「マイナス20度前後」で、各家庭の冷凍庫の保管温度では「マイナス18度以下」で保存するようにアイスのパッケージ裏に注意書きが記載されています。
これに対し、人間が冷たいものを美味しく感じる(風味やコクなどを感じる)温度域は「0度~10度」なんですよ(学生時代に調査した結果です)。

家庭の冷凍庫から出したマイナス18度のアイスを食べても、主に冷たさしか感じられていないのでは? と気がついた僕は、アイスの素材の美味しさを知りたいと思い右手に温度計、左手にはストップウォッチを装備し、アイスの食べごろ時間を追求するようになりました。
“食感MAX”の原点は、工場できたての「雪見だいふく」
自分の人生の中で一番影響を受けたのが、2018年に訪れた雪見だいふくの工場(※一般公開されていません)で気づかされた、工場できたて「雪見だいふく」の味です。市販の雪見だいふくも美味しいと思っていたのに、できたてはさらにその上をいっていました。
そこで、その感動体験を自宅でもう一度味わいたいと思いさらに研究を進めた結果、「マイナス5度」の状態にしたアイスが、工場できたて食感に一番近い味でした。
冷凍庫から取り出して「常温」で溶かそうとすると、気温に左右されすぎて食べごろの計測が困難な上に、外側からドロドロに溶けてしまい工場できたての食感にはなりませんでした。でも冷蔵庫の「4度前後」の環境を利用することで、アイス全体の温度を中心部から均等にマイナス5度にさせてくれることを発見したんです。

ということで、全ての商品をこの「マイナス5度」にさせる時間が、番組で紹介した“食感MAX”の時間だったんです。
【参考記事】⇒「雪見だいふく」をベストな柔らかさにする方法を発見。お餅が「びよーん」
ダマされたと思って試してみて!
冷凍庫から出したばかりのアイスクリームを食べて、口の中で溶けていく過程が美味しいと感じる方も数多くいらっしゃいますよね。僕も今回は、色々と勉強になりました。
近年ではアイスメーカーさんも、「雪見だいふく」や「ハーゲンダッツ」などの商品で、“食べごろ時間”に注目して公式に発表していたりします。一度でいいから、ダマされたと思って「マイナス5度」の“食べごろ”も体験してみませんか? そこには「つめた~い、美味しい!」だけじゃない、アイスのコクや風味、味の奥行きを感じる、皆さんの“知らない世界”が広がっているかもしれません。
シズリーナさんが番組で紹介した“食感MAX”の時間
※冷凍庫に入ったマイナス18度のアイスを、冷蔵庫に移してからの経過時間
明治「エッセルスーパーカップ超バニラ」→70分
グリコ「アイスの実 巨峰・和梨・ピンクグレープフルーツ」→23分
グリコ「アイスの実 大人のミルクシェイク・大人の和ごころ濃い抹茶」→45分
森永乳業「ピノ」→30分
ロッテ「雪見だいふく」→35分
オハヨー乳業「ブリュレ(BRULEE)」→45分
井村屋「あずきバー」→60分
<文/シズリーナ(荒井健治)、ビューティーガール編集部>
シズリーナ(荒井健治)
年間4000種類以上のアイスクリームを食べ歩くアイスジャーナリスト。東京藝術大学出身。アイス料理研究家・企業コラボニストとして「雪見カレーヌードル」「エッセル冷やし中華」など、アイスを意外なものと掛け合わせるアレンジレシピを考案し話題に。インスタグラムは@sizzle_feeling426、ツイッターは@sizzleeena
(エディタ(Editor):dutyadmin)






