
再開発が進む日本橋兜町に、最注目ビストロ『Neki』がオープン
古くから 金融街として知られてきた日本橋兜町(かぶとちょう)。多忙な証券マン向けの飲食チェーン店が多いこの街に、2020年5月27日、あたりの風景を一変させるようなオーラを放つビストロ『Neki(ネキ)』がオープンし、注目されている。
『ネキ』という店名は、関西地方の方言で「そば・かたわら」という意味。幅広い年代の方から、身近な存在に感じてもらえるレストランにしたいと思い、名づけたそうだ。

父も祖父も父の兄弟も料理人。自然にスッと料理の道に入った。

最初はパティシエを目指していたが、京都『ホテル グランヴィア』内のレストランで働くうちフレンチにも興味を持つようになり、フランスの地方料理を学ぶために渡仏。アルザス地方の小さなオーベルジュ『シュナンブール』で修業を積み、帰国後は『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得している『キュイジーヌ(S)ミッシェルトロワグロ(現在は閉店)』で3年間、腕を磨いた。
「20人近くも料理人がいる大きなレストランで働くのは初めてで、一つの料理を仕上げるのに大勢が分業するスタイルにびっくりしました。でも、それだけにどの工程も技術のレベルが高く、本当に勉強になりました」と西さんは振り返る。その後、『ミシュランガイド東京2015~2020』で6年連続ビブグルマンに掲載される『bistro ROJIURA』(渋谷)でシェフを務めた。

当初のオープン予定日だった2020年5月が新型コロナウイルスによる自粛要請期間と重なる不運はあったが、まずはランチタイムのテイクアウト販売のみでスタートし、6月3日からはランチタイム営業、7月2日からはディナー営業がスタート。
「平日は意外にも男性客が多く、食べたり飲んだりするのが好きな人が多い街だとわかりました」(西さん)
気軽にふらっと立ち寄ってほしいから、あえてアラカルトメニューのみ

「テーブル席でコースを楽しむ人、カウンター席でスタッフとの会話を楽しみたい人、1日の終わりに軽く1杯のワインとつまみをご褒美にしたい人、それぞれが自分のスタイルでくつろげる店にしたいと思ったのです」(西さん)
ディナーメニューは今のところ、前菜が10種類前後、メインが4種類、デザートが2種類。その中から西さんのおすすめを選んでいただいた。
まるで絵画のよう! 息をのむ美しさ、そして感動のおいしさ

赤紫色の葉野菜トレビスをベースに、ヘーゼルナッツ、フェタチーズ、ドライトマト、素揚げしたブルグル(挽き割り小麦)が散りばめられ、ひと口ごとに違う味わいと食感があらわれる。煮詰めたバルサミコ酢にハニーマスタードをきかせたドレッシングが、トレビスのほろ苦さの中の甘みを絶妙に引き出している。

フレンチの技法に和の味わいを添えて、親しみやすい一皿に
“誰でも気軽にフレンチを楽しめる店にしたい”という西さんの想いは、料理からも伺える。本格フレンチの技法を使いながら、“和”のテイストも繊細に織りまぜることで、フレンチでありながら食べ疲れない、親しみやすい味わいになっているのだ。「やりすぎると和食そのままになってしまうので、その点は気を付けています」(西さん)

ソースは焼き茄子のピューレがベース。付け合わせは軽くソテーしたモロヘイヤ、トッピングとしてたっぷりのカラスミのパウダーと花穂紫蘇(はなほじそ)を散らして仕上げている。




付け合わせのニンジンのピューレは、コリアンダー、クミンなどのスパイスで風味をつけたインド料理風のフレーバー。もうひとつのゴボウの素揚げには発酵させたマッシュルームのパウダーがかかっていて、香ばしさに複雑なうまみを加えている。食材一つひとつに隠された、おいしさのマジック。いったいどこから、こういう発想が生まれるのか。
「料理のアイデアは食材から生まれることもあれば、器から生まれることもあります。ただ、全てが奇をてらったものにならないよう、そして味に緩急をつけるよう、配慮していますね」(西さん)
ランチメニューは全て、テイクアウト可能!
ランチメニューは、「プティポワの冷製スープ」(700円)といった軽いものからしっかりボリュームのあるものまで、6種類を用意し、すべてテイクアウト可能。350円プラスすると、セットサラダかセットスープが付けられるが、600円でその両方を付けることもできる。
パンは日本橋で愛されているベーカリー『ビーバーブレッド』から仕入れている。

コロナで、今までの「あたりまえ」を反省した
オープン時期とコロナ発生時期が重なった不運について、西さんは「自分の覚悟を見直すいい機会になった」と語る。「正直これまでは、食べることが好きな人が集まる場所に店を出せば、あたりまえにお客さんが来るものだと思っている部分がありました。でもこれから、飲食店のあり方は大きく変わるでしょうし、『何を提供するために店をやるのか』という信念が、これまで以上に必要になると感じています」(西さん)
自粛期間中に始めたテイクアウトは、これまでと全く違うスタンスでメニューを考えるいい機会になったという。「鴨胸肉のローストと十五穀米ご飯、マデラ酒ソース」(1,150円)は、和食の「鴨重」をイメージして考えたメニュー。ボリュームがあるので男性にも好まれ、十五穀米はヘルシーなイメージがあるので女性にも人気だという。
「まさか、自分の店でご飯ものを出すとは思わなかったです(笑)。でも、こういうものが喜ばれるということがわかり、勉強になりました。テイクアウトメニューももっと研究してみたいし、幅広い層の方に店に来ていただくために、挑戦を続けていきたいですね」(西さん)
グランドオープンから数日後のランチタイムに訪れてみると、予約なしのお客が入れないほど盛況。若い女性に混じってビジネスマンの姿も見られ、この街の食シーンが、同店を起点に大きく変わりそうな予感がした。


<ディナーアラカルト>
・トレビスと生ハム、イチジクのサラダ 1,500円
・アナゴのフリット/焼き茄子/カラスミ 2,000円
・フランス産鴨肉の炭火タレ焼き 3,500円
<ランチ(テイクアウト可)>
・プルドポークのグリルホットサンド 950円
<ドリンク>
・グラスワイン 900円~
撮影: 小野千明
Neki(ネキ)
東京都中央区日本橋兜町8-1 1F03-6231-1988
11:30~14:30(L.O.14:00)/18:00~23:00(L.O.22:00)
日曜

この記事の筆者:桑原恵美子(ライター)