
私たちが感じる「お腹がすいた」という感覚。実は、あるホルモンが私たちに働きかけている作用なのをご存知でしょうか。以前、満腹中枢を刺激し「お腹がいっぱい」と感じさせるレプチンというホルモンの働きをご紹介しましたが、今回は、反対に空腹中枢を刺激し「お腹がすいた」と感じさせる空腹ホルモン「グレリン」を紹介します。この二つのホルモンを知っておくと、ダイエットに効果的ですよ。
グレリンってなに?
グレリンは1999年に日本の研究者によって見つかったホルモンです。主に胃から分泌されて、“お腹が空いた~、食べたい!”と食べることを促します。よく、お腹が一杯なのに、好きなスイーツを見ると、別腹で食べたくなってしまったり、そんな時にグレリンが活躍しています。ある意味、ダイエットには大敵なのかもしれませんね。
グレリンは、成長ホルモンをしっかり作るように促すことがはじめにわかっていたので、成長、という意味を示すインド・ヨーロッパ期語の“ghre、グレ”という言葉と、成長ホルモンを分泌させるという意味の英語、“release”という言葉から名付けられたんです。
胃から主に分泌されて、成長ホルモンや胃酸の分泌、胃の運動を調節したります。大事なのがこれから詳しくお話する、食欲増進、体重増加への効果です。
グレリンの働き
食欲増進

グレリンは、空腹ホルモンなので、お腹が空くと増え、お腹が一杯だと減ります。というわけで、ダイエットをすると増えます。主に糖質が胃に入ると、分泌が減るようです。
Sumithran P et al., Long Term persistence of Hormonal adaptations to weight loss. N Engle J Med 201; 365: 1597-604.
ある有名な医学雑誌に出た論文では、食事制限だけでダイエットを成功させた人たちをダイエット前、ダイエット直後、ダイエット後1年後にいろんなホルモンの値を調べました。グレリンも測定しているのですが、ダイエット中から、無事ダイエットが終わってもかなりの間グレリンは高くなっていました。ダイエットが成功しても、その後リバウンドしないように気をつけるべき理由の一つはここにあります。
成長ホルモンを促す作用があるグレリンですが、グレリンの食欲増進作用と、成長ホルモンを分泌させる効果とは直接関係はないようです。
胃で分泌されたグレリンは、脳の中に移動して、食欲増進を起こします。このとき、睡眠や目覚めの調節に関わるオレキシンというホルモンの経路を一部利用して、食欲増進作用を起こしていることが知られています。
グレリンは食事前に増えて、食事後に減ります。1日の中で見ると、夜中の2時から3時に一番多いことがわかっています。なんと、この時間、成長ホルモンが一番分泌される時間と同じなんですね。
脂肪の蓄積
グレリンの作用として、脂肪をためこみ、体重を増やしていく効果もあります。ダイエット的には、これはなんとか抑えたいものですね。体内のバランスが整っている場合は、グレリンは体重が増えると減少し、体重が減ると増えます。
《グレリンとレプチンのバランスが大事!》
しかし、以前お話した満腹ホルモンである“レプチン”がたくさんあっても満腹感が得にくい、レプチンがあまり効かないような場合は、食べた後もグレリンが減りにくくなるようです。つまり、レプチンとグレリンのバランスが大事になってきます。グレリンとレプチンはお互いに逆の働きをしています。この二つのホルモンは、どちらかが増えればもう一方は減る、といったように常にバランスをとり変化しています。レプチンの“食欲を抑える”作用と、グレリンの“お腹が空く”作用がバランス良くあるためには、レプチンの効きにくくなる、体脂肪の多い状態、を避けることが一番なのですが、その他、
・ 自分にあった充分な長さの睡眠
・ 睡眠の質を高める
・ レプチンをしっかり分泌するよう、夕食の後食べない
・ 一回の食事は腹八分目
・ 炭水化物は減らし目に(完全にはやめない)
などがおすすめです。
グレリンのその他の働き
ダイエットにとっては扱いに工夫が必要なグレリンですが、身体にとっては必要なホルモンなんです。
例えば、
・身体の修復、成長を促す成長ホルモンを分泌させるように促す
・胃での消化に大切な胃酸の分泌を促す
・胃の運動を促す
・インスリンを調節することにより、血糖を一定に保つようにしている
・筋肉を強くする
・心臓を守る、心筋梗塞を予防する効果がある
食欲を増進させるホルモンであるグレリンが、一方では身体を守る働きをしているんですね。
グレリンを調節するために

先ほど、レプチンを高めるためにお勧めすることをいくつかお伝えしました。
それに加え、グレリンを調節するのには
・良質なタンパク質の割合を増やす
・オリゴ糖を毎食摂る
・適度な運動(成長ホルモン分泌により、グレリンは減少)
などがお勧めです。
まとめ
今回は、空腹ホルモンであるグレリンの働きについて、そのコントロール方法についてお伝えしました。グレリンとレプチンのバランスが大事、ということから、睡眠をしっかりとり、食事に工夫をし、適度な運動をする、といった方法をお勧めします。グレリンをうまく調節することでストレスの少ないダイエットを行えるといいですね。
(参考文献)
肥満の化学—[II]肥満のメカニズム
2.胃から発見された摂食亢進ペプチド:グレリン 中里 雅光 第124回日本医学会シンポジウム p45-52.