
今月の一軒『オステリア・デッロ・スクード』【by マッキー牧元】
「イタリアにはイタリア料理というものはない。各地方の郷土料理があるだけだ」。とはよく言われる言葉である。

『オステリア・デッロ・スクード』は、人気レストラン『インカント』のシェフであった小池教之さんが独立し、2018年に開いた店である。

そして料理は、前菜7種、プリモピアッティ12種、セコンド7種も用意されている。
2カ月間三回いっても食べきれない数である。
しかも、パンも菓子も食後の焼き菓子類も、その州のものを作られ、ワインも当然その州のものしか揃えていない。これを二人で仕込みをし、作っているのだから並々ならぬ熱情である。
口にすると興奮が鳴り止まない、「ボローニャ風タリアッテレ」
さて12月は、エミリア・ロマーニャ州であった。北イタリア、イタリア半島の付け根にあたる地域で、パルマ、モデナ、ボローニャなどがある。

そのソースには、優美と剛健という二つの異なる因子が存在していた。
運ばれてくると、まず甘い香りが顔を包む。
パスタにからめて口に運ぶ。その瞬間に、なんてエレガントなのだろうと、目を細めた。
野菜やバルサミコや肉の味が球体となって舞う。
タリアッテレは、喜びに富んで弾む。さらに噛めば、肉の味がじわりじわりとしみ出して、体のうちに眠った野生に火をつける。優美さに満ちながら、肉自身の強靭さもある。ソースとパスタが、まるで生きているかのように、口の中で踊る。
興奮が鳴り止まなかった。
肉と野菜だけで、ここまでの味が出せるのである。この一品だけをとっても、小池シェフの凄みがわかる。
伝統を踏襲する「アーティスト」が作る料理の全貌
それでは当日の全皿を紹介しよう。

自然と笑顔が生まれる。ハムの塩気とほの甘いランブルスコをやっていれば、永遠に食べられるねという幸せである。


豆の甘みとハムの旨味が、遠くから静かにやってくる。しみじみとうまい。フリットを噛めば、クニャリとトリッパが身悶え、ほのかに甘い。余分ではない下味とトリッパの厚みが、精妙に計算されている。



この豊満なスープと素朴なパスタの組み合わせは、限りなく美しい。

シェフの勇気と度量、技術の深さが成した、どこにもない料理

豚肉の甘い肉汁が弾けながら、サラミのような熟成感もある。紐を持ってしごくようにかじりつくとうまい。そしてローズマリーの香りがきいたレンズ豆は、コテキーノを食べて上気した気分を、落ち着かせる。コテキーノ、そしてレンズ豆。コテキーノ、そしてレンズ豆と交互に食べていくと、幸せが体の中に満ちて行く。
そう平和がここにある。

とくにコーヒーとカカオの香りが共鳴し合う、トルタバロッティが素晴らしい。

「各地方の郷土料理で使っていない食材や調味料は、一切使いません。しかし調理過程や方法は、化学的に検証して、もっとも良い方法を選びます」(小池シェフ)。こうして作られた郷土料理は、基になった料理を知らなくとも、その料理の思い出がなくとも、僕ら日本人の心を捉える。

小池シェフの勇気と度量、技術の深さが成した、どこにもない料理である。食いしん坊なら、イタリア料理好きなら、ぜひ出かけて欲しい。
※写真のコースは6,500円、ハム類の盛り合わせのほか、前菜とプリモから3種類、主菜から一皿選ぶシステム。他に一皿少ない5,500円のコース、おまかせの8,000円のコースあり(いずれもデザート付き)。アラカルトも注文可。本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
写真提供元:PIXTA(一部)
Osteria dello scudo(オステリア・デッロ・スクード)
〒160-0011 東京都新宿区若葉1-1-19 Shuwa house10103-6380-1922
月~金ディナー18:00~21:30(L.O.)/月・水ランチ12:00~13:30(L.O.)/土12:00~19:00(L.O.)
日曜・不定月曜
https://www.osteriadelloscudo.net/
https://r.gnavi.co.jp/8thwecyt0000/
この記事の筆者:マッキー牧元(タベアルキスト)
【Not Sponsored 記事】