
人生の転機に頭に浮かんだ、少年時代の「うなぎ」の記憶。
うなぎの名産地、愛知県西尾市一色町(いっしきちょう)に生まれた柴田哲滝(さとる)さん。
だが、7~8年経ったときに、幼い頃から身近に感じていたうなぎの存在が頭に浮かんだという。
ただ選んだのは養鰻業ではなく、うなぎ屋への弟子入りだった。門を叩いたのは名古屋市昭和区の『うな富士』。週末ともなると3時間待ちの行列必至の大繁盛店で、明けても暮れてもうなぎ尽くしの月日を重ね、関西風の「地焼き」の技術を身につけた。

独立開業のあと押しをした、江戸時代から続く風情ある町並み
入門して15年が経ち、大将に次ぐ二番手として活躍する中、独立開業という言葉が柴田さんの胸の内を占領し始めた。そんななか知り合いから、江戸の風情を今に残す名古屋市にある四間道(しけみち)界隈の物件が空きそうだという情報をもらう。

燃え盛る炭火で一気に「地焼き」。中フワッ、外パリッに仕上げる職人技

一方、個体差のあるうなぎの性質を見抜き、刻一刻と変わる炭火に気を配りながら行う関西風の「地焼き」は「一生」だとしみじみ語る。
1300℃もの熱を発して燃え盛る炭火と対峙し、会心の出来を狙う地焼きはまさに一本勝負。中はフワッ、外はパリッパリに仕上がるタイミングを逃すまいと、厳しい眼差しでうなぎと炭を見つめる後ろ姿には、灼熱をも凌駕する気迫がみなぎっていた。

オープン間もなく夏の最盛期を迎え、以降も客足が途絶えることがなかったことから、カドが取れて味もかなり乗ってきたと『うな富士』時代を知るお客からも高評価。
加えて糖度と塩分濃度を数値化して理想のバランスを保つため、クオリティは日々上昇しているようだ。


好物をうなぎ料理で表現! ユニークな発想から生まれるオリジナルメニュー
同店のお品書きには、オーソドックスなメニューのほか、オリジナルメニューが多数揃う。

小ネギやワサビ、刻みノリなど、ひつまぶしの様に茶碗に盛って薬味を加え、味の変化が楽しめるのも一興だ。

『しば福(ふく)や』で扱ううなぎは、業界用語で3Pサイズといい、特大で脂もノリノリだが、大根おろしとポン酢を合わせることで、想像以上にさっぱり食べられる。
江戸っ子みたいに居酒屋使いをして欲しい…だから酒の肴も充実のラインナップ!

「もっと適切な提供方法があると思っています。うなぎ1尾にひとつしかないせっかくの肝を、何の疑いもなく吸い物へ投入しては、あまりにももったいないでしょう」と柴田さんは力説する。

なるほど、この方が肝の存在価値がグッと上がる。うなぎが焼き上がるのを待つ間、日本酒やビールのお供に最適だ。
また、その他にもオリーブオイルで蒸し煮した「肝のアヒージョ」や「肝わさび」など、おいしい肝の食べ方を追求したメニューも揃う。

夜になると、柴田さんの実家がある宮崎から直送される「日向地鶏のたたき」や、うなぎを串焼きで味わう「くりから」など、酒が進むメニューが勢揃い。こうして肴系を充実させるのも、理想とするうなぎ屋像があるからだ。

江戸の風情を残す街並みをそぞろ歩き、暖簾をくぐったら矢継ぎ早に肴を頼み、盃を傾けながら焼き立てのうなぎを待ちわびる…なんとも粋でいなせな使い方である。
【メニュー】
うなぎ重 4,250円
スタミナまぶし 4,250円
うなぎのたたきポンズ 3,250円
肝焼き 1,250円
肝のアヒージョ 1,250円
肝わさび 1,250円
うまき 1,250円
日向地鶏のたたき(夜のみ) 1,500円
くりから(夜のみ) 1,200円
※価格はすべて税別
うなぎ家 しば福(ふく)や
〒451-0042 愛知県名古屋市西区那古野1-23-10052-756-4829
11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~20:30(L.O.20:00)
火曜日、第2・4水曜日
https://r.gnavi.co.jp/3cgubtw90000/
この記事の筆者:露久保瑞恵(ライター&編集 料理・酒・旅探求人)
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