
「真心(丹)のこもった料理が永遠(久)に愛されますように」という店主の願いが詰まった、唯一無二の言葉『久丹』
日本中のおいしいが集まる銀座と築地の間に位置する新富町。次世代の奇才料理人たちが続々と暖簾を掲げる、いま注目の新たな美食スポットに今春、『久丹』は産声をあげた。

『かんだ』といえば、『ミシュランガイド東京』が創刊された2007年から三つ星に輝き続けている日本料理の最高峰。中島さんは10年間、この評価を守り続けてきた腕の持ち主なのだ。
食通たちの胃袋を満たす、中島流“東京和食”とは?
夕食時、店前ではモダンな装いの女将が笑顔でお客を出迎える。

「『久丹』は“東京和食”を楽しんでいただく店です。静けさから高揚感まで体感していただけるよう、ドラマチックな献立に仕立てています」と中島さん。11~12品あるおまかせコースのなかから、ドラマの一部を紹介しよう。

蛤(はまぐり)と昆布のうまみが染み込むスープをすくうと、磯の香りが鼻腔にまとわる。奥に隠れているのは、三重県桑名産の蛤。ふわりと柔らかい身から溢れるミネラル香と、うまみの膜で優しく包まれた口内を、スナップエンドウが弾けて甘みが襲う。

射込みとは、中身をくり抜いた食材のなかに、他の材料を詰めこむ調理法のこと。早々の揚げ物の出番に意表を突かれるが、ドラマの序章はそれだけじゃない。
スナップエンドウは、噛めばとろけるほどに柔らかい食感の奥から、芳ばしいエビのうまみが顔を出す。添えられた車海老の頭は、ジリリと音をたてながらこちらを睨むよう。
「先付けで召し上がっていただいた、スナップエンドウの余った皮を使っています。シュワっとのどごしのよい乾杯酒には、揚げ物が最高の肴なんです」と中島さん。献立に潜む物語をもっと探ってみたくなる。


口に入れた瞬間、しなやかにイカが開き、キャビアの塩味と卵黄のうまみ、心地よい薬味の食感が重なり合って、ねっとり濃厚に絡み合う。

惹きこまれるほど力強いアオサの混じった有明のノリが、口内を芳醇な香りの膜で覆う。筋が多く扱いづらいがうまみは格別という突先部分を提供できるのも、かつて鮨店で修業していた中島さんだからこそ。素材への自信と腕によって丁寧に筋を剥がれた身は、舌に触れると脂がにじみ、酸味と強いうまみを携えてしっとり溶けていく。
たった2口の小さなごちそうが、“東京和食”の物語を一気に盛り上げて、深い口福へと導いていく。

1kg強もの身厚な宮城県産アイナメは、箸を入れるたび淡いだしに塩味と脂をこぼす。ミョウガの清涼感が心地よさを煽り、最後のひと口をすすり切るまで増し続けるうまみの密度にうっとりしてしまう。
ところで、アイナメに寄り添う旬の野菜、アスパラソバージュを日本料理で見かけることは珍しい。一見意外なバリエーションにこそ、唯一無二の“中島イズム”を読み解くカギがあった。
正統派を極めたからこそできる、新境地への挑戦
「続く焼き物では、スッポンを照り焼きに仕立てたり、ハトを使うこともあります。日本料理の枠に縛られず、おいしいと思う食材があれば、国境を越えて積極的に取り入れたい」と中島さん。
【メニュー】
おまかせコース 23,000円
※価格は税別
※サービス料10%別
久丹(くたん)
〒104-0041 東京都中央区新富2-5-5 新富MSビル1F03-5543-0335
17:30~22:00(最終入店)
日曜・祝日

この記事の筆者:植木祐梨子(ライター)
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