
幸食のすゝめ#065、寄り添う杯には幸いが住む、目黒
「みんなでしゃべって、みんなで笑って、みんなで飲んで、気軽にうまいものをお祭り気分で楽しめる!そんなビストロを作りたいんです」。新しい店のための物件を探していた年末も、帰省から戻った『アンドシノワーズ』の2人を迎えた今年初の飲み会でも、いつも満面の笑顔で話してくれた彼。

パティシエやペルシャ料理家、イベントやケータリングで高名なタイ料理人、いろんな食のプロや、食べることが大好きな仲間たち。話を聞きながら、みんなの頭の中には、楽しそうなビストロのイメージが膨らみ続けた。
それは今まで、この国にはありそうで実はなかったものだった。


その後、本店の 『ユーゴ ・デノワイエ』でも、さらに肉について徹底的に知識を叩き込んでいる。

「マトウダイ(サンピエール)って、生で食えるんだ! ってびっくり。とにかく食材がすごくて、日本と全然違ってて、驚きの連続でした。ごく普通のスーパーで加熱してない牛乳を売ってるし、バターの味が濃い。野菜やフルーツはとにかく豊富だし、トマトやニンニクは身の詰まり方が違う」。
素材を徹底的に見極めて、素材自身が持つ力を最大限に活かし、シンプルに調理して提供する。今に至るタケシシェフの料理哲学は、フランスの食材に培われたものだ。
新店『セルフェ』でも、『ル・セヴェロ・パリ』で仕入れまで担当していた彼自ら、築地に出向いて旬の食材を厳選して仕入れる。
旬のお任せコースは、その季節に考え得る最上の素材で組み立てられたものだ。

しかも、徹底的にお祭り気分で客に楽しんでもらうため、グランド・メゾンのサービスをビストロ価格で提供する。




味も量も本場そのもの、何よりも意外な隠し味や構成の巧みさでテーブルの会話が弾む。
ソムリエ渾身のペアリングも、当意即妙で爽やかな驚きに満ちている。

デセールは長女を抱いたパートナーから

アミちゃんの胸には、ベビーキャリアの中、去年生まれたばかりの長女が。こどもと一緒に、家族で働けるビストロって、なんて素敵なんだろう。この店だったら小さなこどもがいる家族も、気兼ねしないで食の時間を楽しむことができるはずだ。
フレンチにありがちなカップル優先ではなく、仲間や家族で出かけてワイワイ楽しんでほしい。
下町生まれのタケシシェフの願いは、そのまま目の前にいる齊田ファミリーが実践している。

送る日常を祝祭に変えるビストロ

礼拝の帰りだろうか、日曜日に家族でビストロに行き、丸鶏やパンタード(ホロホロ鶏)を和気あいあいと食べているパリの日常的なシーンが、シェフ自身の思い出と共に重ねられている。
楽しい時のフランス人の口癖、「C’est la fête(セラフェ=お祭りだ!)」にも発音をかけている。
「造り手を褒めてほしい」とタケシシェフは言った。一所懸命に育てられた食材と厳選された海の幸に寄り添う、生産者の顔が見えるナチュラルワイン。この店には、幸福が満ち溢れている。
寄り添う杯には、幸いが住んでいる。
【メニュー】
コース 6,000円、ワインペアリング4,000円、グラスワイン1,000円~
ボトルワイン5,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。
Cellar Fête(セラフェ)
〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-3-4 ベルグリーン目黒BF03-6420-0270
18:00~23:30(L.O.22:30)日曜11:30~18:00(L.O.17:00)
月曜、第1・3火曜

この記事の筆者:森一起(ライター/作詞家/ミュージシャン)
【Not Sponsored 記事】