<亀山早苗の恋愛時評>
次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)
南野陽子、夫の逮捕の6日後に離婚
南野陽子さん(56歳)が、12年連れ添った4歳年下の夫・金田充史容疑者との離婚を発表した。夫が業務上横領の容疑で逮捕されてから6日後のことだった。
逮捕された当初は被害者へのお詫びとともに、「悲しさ、怒り、情けなさ…いろんな感情が湧いています」と言いつつも離婚の決断はつかなかったようだが、気持ちを整理することができたのだろうか。
スピード婚当初から夫のトラブル続出
共通の知人がいた食事会で知り合い、半年後の2011年にスピード婚をしたふたりだが、結婚当初から夫のさまざまなトラブルが報じられてきた。
家賃の滞納、運転手への暴行、詐欺まがいの金銭トラブル、愛人と子どもがいることが発覚したこともある。
結婚記者会見で見せていた1300万円のハリーウィンストンの指輪も、実は彼女のクレジットカードで買ったものだという話もあった。
勤務先の資金流用で訴えられたこともあるが、なぜか立件はされなかった。南野さん自身もトラブルのたびに「これ以上、病みたくない」と言いつつ、「彼を信じている」として別れようとはしなかった。
「人間は過ちをおかすこともある。切り捨てるのではなくそばで見守る人間が必要」とも語っていた。彼を心から信じ、愛していたのだろう。
独身時代のインタビューで明かした本音
もともと恋多き女と言われている彼女だが、23歳で結婚したいと語るほど結婚願望は強かった。
17歳でドラマ出演して芸能界デビュー、18歳のとき歌手デビュー、雑誌の巻頭36ページを飾って話題となった。「ナンノー」と叫ぶ若い男性たちの親衛隊もいた。同時期、舞台にも出演し、極めつけは『スケバン刑事』の2代目麻宮サキ役だ。これで大ブレイクを果たし、20代はアイドルからトップ女優へと駆け上がっていった。
30代以降は女優に専念、ラジオやバラエティでも活躍している。そのころ筆者は彼女にインタビューをしたことがある。当時は話すことを決めていて、なかなか本音を出してくれない女優が多かったのだが、彼女はこちらの目をじっと見て、自分の心の内を話してくれたのが強く印象に残っている。
率直でまじめ、仕事に真摯(しんし)に取り組み、努力を重ねてきて今があると痛感させられた。とにかく感じのいい素敵な女性だったが、「予定ではもっと早く結婚しているはずだったんですけどねえ」と自ら笑いながらも残念そうに話していたことが思い出される。
そんなナンノが結婚したとき、内心、「よかった」と思ったものだ。ところが夫の不祥事が報じられるようになっていった。
元夫は南野の両親にも尽くす「人たらし」か
妻に対して、夫は非常に優しかったという。
結婚前から彼女の両親に電話をかけて気遣い、結婚して8ヶ月後に母親が急逝したとき彼女を支えたのも彼だった。介護が必要になった父を神奈川県の老人ホームに入居させて足繁く通ってサポートを重ねていたという。
南野さんのコンサートがあるときは、夫が父を会場まで送り迎えしていた。親孝行の南野さんからみれば、自分と両親に尽くしてくれる夫だったのだ。惚れ込んでもやむを得ないのかもしれない。
「究極の人たらし」だったという説もある。つまり自分の得になる人間に対して懐に飛び込むのがうまく、相手が心を開くとするりと入り込んで、よりよいビジネスをともにするふりをして横領したり資金流用したりするのだという。
外の人間に対しては「うちのカミさんが」とよく話し、実際に妻を紹介することも多々あったらしい。そのために相手が信用してしまったケースもある。
一方で、周囲に「妻は金づる」とも言っていたようだから、ずっと「夫を見守り続ける」と決意していた南野さんにとってはつらいだろう。最近も夫には愛人がいたらしいが、彼女は知らなかったようだ。
「私だけは…」ダメ夫を支える女性
「洗脳しゃぶられ婚」と報じられてもいるが、あのインタビュー時の彼女のまっすぐさを思い出すと、なんとも気の毒に思えてしまう。
芸能人は世間に触れる機会がないから男を見る目がないと言われがちだし、確かにそれも的を射ているのかもしれない。
だが自分と親に徹底的に優しく尽くしてくれる夫に、悪い噂が飛んだからといってそう簡単に別れる気になれない気持ちも理解できる。
「この人のよさをわかっているのは私だけ」
「私が見放したら、この人はきっと立ち直れない。ついていてあげなければ」
そう思ってしまうこと自体が彼をさらにダメにすると言われても、なかなか退けないのが惚れ込んだ女の心理なのではないだろうか。
「人を騙している男が自分の夫であっていいのか」という観点がなくなっているのだ。
彼を夫として選んだ自分の目を信じたい気持ちもあるだろうし、夫を支えることに自分の存在価値を見いだしているのかもしれない。ある意味で共依存に近い。
「離婚するくらいなら退所する」と事務所を辞めたが
夫の逮捕で、ようやく現実を受け止めた南野さん。
離婚を勧めてきた前事務所に対して「離婚するくらいなら退所する」と言って事務所を辞めた経緯がある。当時の周りの「冷静な意見」を今、どう振り返るのだろう。
これを契機に、女優としてもう一段ステップアップしてほしいと言ったら過酷すぎるだろうか。
<文/亀山早苗>
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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