秋といえば、フルーツが美味しい季節。今回は、楽しみにしていた旬の果物を食べて、一生忘れられない経験をしたという女性から話を聞きました。


　神奈川県在住の桃井百合さん（仮名・33歳）は、梨が好きで毎年お気に入りの農園から取り寄せをしているそうです。

「収穫してすぐに配送してくれるので、毎年楽しみにしていました。梨が届くと、またこの時期がやってきたなと気分が盛り上がりますね」

　百合さんは、夫と小学2年生の息子との3人家族。ダンボール1箱分の梨を、いつも2週間ほどで食べ切ると言います。

「うちは家族もみんな梨が好きなので、朝昼晩で梨を食べると、結構あっという間に毎年一箱はなくなるんですよ。今年は近所にもおすそわけしたくて、いつもの農園に追加して、もう一箇所別の農園からも梨を頼んでみたんです」


　百合さんが、毎年頼んでいる農園と同じ時期に注文したのは、いつもとは違う地域から取り寄せた梨だったそうです。

「通販サイトで、比較的安めの梨を1箱注文してみました。正直、味に期待をしていたわけではなくて、いつもの梨と価格が安い梨とを食べ比べてみたかったんです」

　普段お取り寄せしている農園の梨は、1箱1万円超え。一方、今回試しに注文した梨は、1箱2800円だったそうです。

「梨の価格差があるので、いつも取り寄せている梨から味が落ちるのは分かっていました。たまたま破格の梨を見つけて、こんなに安い梨があるのかと興味本位もありましたね」

　梨の皮を剥くと、そのまま丸ごと食べるのが百合さんの楽しみ。

「あの時も、梨の皮を剥いてガブリつきました。意外にも安い梨は美味しくて、夢中になって芯の方まで食べると、なんだか口の中に違和感があったんです……。最初は気のせいかなと思ったのですが、口を閉じてもやっぱりモゾモゾとして」

　口の動きを止めても、百合さんの口の中でやっぱり何かが動いていたそうです。

「衝撃でした。まさか、自分の口の中に虫がいるなんて……。気持ち悪すぎて、涙が出ましたね。私、虫が大嫌いなんです。見るのも嫌なのに、虫が口の中に入って、しかも動くなんて。今思い出しても気持ちが悪くて涙が出ます」

　百合さんは、口の中のものをトイレに吐き出すとそのまま立ち上がれなくなって倒れ込んだと言います。

「もう気持ち悪くて、梨の箱ごと全部捨てようとしたのですが、夫が『その梨だけかもしれないから』と、結局夫がすべての梨を割ることにしました」

　夫が他の梨を包丁で切ると、箱に入っていたほぼすべての梨に虫が入っていたそう。中央は黒くなっていて、中には何匹も虫が入っている梨もあったそうです。


「その虫が、もう見た目がグロ過ぎなんです。ニョロニョロとした長さのある虫で、先端に顔のようなものがついていました。あれが口の中に入っていたと思うと、また気絶しそうです」

　梨に入っていた虫を調べると、「シンクイムシ」という虫だったと言います。

「農園に問い合わせをすると、『その虫は食べても大丈夫ですが、また新しいものを送ります』とのことでした。私も調べてみると、あの虫は食べても体に害がないことはわかりました。でも、もう同じ農園から梨は頼みません」

　新しい梨を送るという農園の提案も断り、その後しばらく百合さんは梨を食べられなくなったそうです。

　最近になってようやく、また大好きな梨を口にするようになったという百合さん。

「梨を丸ごと食べる怖さを知ったので、これから梨を食べるときは絶対に切り分けてから食べます！」

　なるべく農薬を使わずに栽培している農園だからこそ、虫の付く梨ができたのかもしれません。しかし、虫嫌いの人が口にしたら、相当な衝撃なのでしょう。

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＜取材・文／maki＞