人工妊娠中絶は10代・20代の若者だけの問題ではありません。実は40代以上の人工妊娠中絶も、例年1万件以上が報告されています。
厚生労働省が発表している「令和3年度衛生行政報告例の人工妊娠中絶の年齢階級別件数」によると、1年間の人工妊娠中絶件数は、20歳未満が9093件、20~24歳が3万882件、25~29歳が2万6087件でした。一方で、40~44歳が1万2018件、45~49歳が1252件と、40歳以上の中絶件数も決して少ないとはいえません。
40代の妊娠は「望まない妊娠」「予定外の妊娠」であることも……
40代の妊娠は、妊活や不妊治療などの結果としての「待ち望んだ妊娠」であることも多い一方で、すでに20代、30代で出産を終えた人にとって「望まない妊娠」「予定外の妊娠」であることも珍しくありません。
実は40代でも、正しい避妊の知識がない方も多く見受けられます。「すでに生理不順などの更年期症状があった」「簡単に妊娠するわけがないと思っていた」といった思い込みから、適切な避妊を行わず、結果として妊娠してしまうケースがあるのです。1回だけの性行為でも、膣外射精でも、妊娠する可能性は十分にあります。
40代でも更年期でも、妊娠を希望しないなら確実な避妊を
また、日本人の7~8割はいまだにコンドームでの避妊を選択していますが、実はコンドームのみでの避妊は不確実な避妊法です。確実な避妊をしたければ、ピルや子宮内避妊具を入れる方法があります。10代、20代と同じように、「今は妊娠を希望しない」のであれば、確実な避妊の上で性行為を行うことが大切です。
■参考:令和3年度衛生行政報告例概況より『母体保護関係』(厚生労働省)
女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性に美と健康を!」をコンセプトに現場診療にあたる。ネット・雑誌・書籍等の媒体を通し幅広く健康啓発を行っている。
執筆者:清水 なほみ(産婦人科医)