不倫にもいろいろある。よくイメージするのは、痴情がもつれたドロドロの泥沼状態。が、ラブコメ的な不倫となるとうまく想像できるだろうか?
底抜けに明るく軽快な不倫ドラマ。毎週日曜日よる11時55分から放送されている『18歳、新妻、不倫します。』(ABCテレビ)はそんな作品。
「イケメンとドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、本作が描く“最強不倫”を解説する。
カラッと爽快、ライトな不倫モノ
10月期のテレビドラマはとにかく良作ばかりで、毎日のリアタイが大変だ。特に不倫ドラマが計4本。豊富なバリエーションを揃えている。なるほど、時代は不倫モノなのか。
“パラサイト不倫”をホラーテイストで描く『泥濘の食卓』(テレビ朝日、毎週土曜日よる11時30分から放送)から最新テクノロジーと不倫を組み合わせたハイブリッドな作品まで、実に多種多様。一週間毎日、不倫ドラマだけでも楽しめてしまう。
中でもトリッキーで変わり種なのが、『18歳、新妻、不倫します。』だ。
わたなべ志穂の漫画作品を原作とするラブコメきらきらな作風は、ドロドロしたいかにもな不倫のイメージではなく、カラッと爽快。軽い気持ちでサクッと楽しめてしまうライトな不倫モノだ。
ほんとうに不倫ドラマなのだろうか?
公家の末裔。明治期には鉄鋼業で財を成す。現代の日本であるはずだが、なぜか治外法権が許された一族。本作の主人公・三条明花(矢吹奈子)は、現実離れした財閥令嬢(慣習的に「おひいさま」と呼ばれる)だ。
明花は高校卒業を期に結婚する。お相手は、これまで彼女の傍らで付き従ってきたボディーガード藤宮煌(藤井流星)。まさかの身分差婚。とんでもない展開の本作だが、ほんとうに不倫ドラマなのだろうかと疑いたくなってくる。
でもドラマタイトルを信じよう。煌との結婚はあくまで形式的な偽装結婚。明花は、どうやらタイトル通り不倫をする気まんまんでいる。彼女はとにかく恋がしたくてうずうずしている。
貞操は守る令嬢
第1話では、煌との結婚後すぐに、友達に誘われて、合コンに参加する。東京の大学進学を諦めた明花は、女子大生気分でるんるん。夢のような時間についつい目移ろい。
これが不倫、あるいはその前段階の浮気行為だとしても、やっぱりあまりにもライトじゃないか。ところが貞操は意外と守る。別に遊びたいわけではないからだ。
純粋に恋がしたい。遊び半分で友達と二股をかけてきたちょいイケメン男子の誘いはきっぱりはねつける。
「シラケるわ」と言われても絶対動じない。さすが気品ある三条家の令嬢なだけはある。
ハチャメチャな“最強不倫”
ただ事実、彼女は結婚している。が、恋はしたい。で、それを新妻の不倫と呼ぶ。何だかめちゃくちゃじゃないかとも思うのだが、いやいや待てよ、ここで治外法権が頭をよぎる。
要するに、日本で定められた法律に従わなくてもいいということ。この設定がある限り、明花は自由に恋愛し、不倫ができる。何と自由な……。“最強不倫”ではないか。
明花にとっての不倫とは、ずはり真剣な恋のこと。この認識は、さすがに浮世離れがすぎる気がするが、最強不倫であるからにはこれくらいハチャメチャでなくては。
明花が想像する不倫とは?
この契約夫婦の特殊さは、明花だけでなく煌にも不倫が許されていることだ。
結婚指輪を買いに行くと、店員が煌の大学の先輩である岡本・J・真弓(小林涼子)だった。どうも真弓とは過去に関係があったらしい。
自分の前で煌との関係を見せつけてくる真弓に対して、明花はどう感じるのかと思えば、これがびっくり。イケイケドンドン。夫の不倫万歳という具合に推奨するのだ。一方の煌は、明花に一途な気持ちで、ストレートに彼女への愛を伝えてくる。
あぁ、もうよくわからない。すると第2話のラスト、煌からキスされた明花は、「好き」と呟く。煌のストレートな気持ちが通じたのか……。いや違った。明花があっけらかんと言う。
「それで……いつかちゃんと不倫相手見つけるの」
さすがに笑ってしまった。彼女はどうしても不倫にこだわるのだ。初恋、運命の人、そしてその先に想像されている明花の不倫とはいったい、どんなものなのだろう?
<文/加賀谷健>
(エディタ(Editor):dutyadmin)
