略奪愛、浮気、そして不倫。未知ならぬ恋をしたのち、誰もがつぶやく一言。
「私、今度こそ幸せになる」
やっと運命の人と結婚した先に待っていたのは、信じていた夫の不倫。
『離婚まで100日のプリン 5年後にサレタ側のババロア』2~5(きなこす著 KADOKAWA)は、コミックエッセイ『離婚まで100日のプリン』の続編です。前作で不倫シタ側だったババロアさんが、今度はサレタ側になってしまうのです。
【前作の試し読み出張編はコチラ!】⇒<離婚マンガ 1>「今日もモラハラが止まらねぇ」離婚までのプロローグ
【前作について詳しくはコチラ!】⇒「『離婚まで100日のプリン』離婚までの100日を描いたコミックエッセイが壮絶。夫の不倫、DVに妻はどうすべきか」
略奪婚したら、夫が不倫
前作の主人公プリンさんを苦しめたとはいえ、最後には人の家庭を壊してしまったババロアさんも改心しましたよね。しかし読者を安心させたのも束(つか)の間。ただ幸せになりたいだけの女性を、男性はどうしてこうも苦しめるのでしょう。
しかもババロアさんが不倫を経て結婚し、今は夫となった、カス寺(てら)さんは、罪の自覚なしにまたもや不倫をしています。
カス寺さんいわく、純粋にふたりとも愛しているから、ふたりに愛をそそいでいるのだとか。そもそもそこに罪はないというのです。一般的な概念だと、「はぁ?!」と頭を抱えてしまうのではないでしょうか。

ゆるフワなキャラクターで語られるエグい現実
とかく女性は感情的になることも少なくない生き物。まして妊娠中に夫の不倫が発覚したら、パニックになるのは当然。悲しさと悔しさと怒りで混乱するババロアさんの前に現れたのが、パンナコッ太(た)君です。前作でも活躍し、このシリーズで一番頼れる人物で、私達の意識をフラットにしてくれる人物です。
冷静沈着で聡明なパンナコッ太君の力を借りて、ババロアさんはカス寺さんの身辺調査を開始。やがて衝撃な事実に直面してしまいます。
ババロアさん、カス寺さん、パンナコッ太君、そしてカス寺さんの不倫相手のミル子さん。スイーツなネーミングとほのぼのとしたイラスト、テンポのよい漫画に、私達の心はつい和(なご)まされてしまいますが、語られているのはエグい現実です。
落ち着いて考えてみると、これってかなりリアルなのです。ユルふわなオブラートで包んでいるのは、身を切るほど残酷な人間の生態。ページをめくるたびに、私達の心は串刺しになっていきます。
血も涙もないと痛感しながらも引き込まれてしまうのは、誰もが経験しうることだから。「絶対に不倫なんかしない」「絶対に不倫なんてされない」とは、誰も断言できないからではないでしょうか。
不倫夫によって都合よく使われる“複数愛”
今作ではさらに新しいワードが登場します。「ポリアモリー」です。数年前からデフォルトになったポリアモリー、つまり複数愛ですが、間違った解釈をされる方もいるのですよね。
今作の不倫夫・カス寺さんがまさにそう。ポリアモリーの定義を完全に取り違えているのです。
カス寺さんの不倫相手、ミル子さんはカス寺さんのさらに斜め上を行くツワモノ。妻ババロアさんのことを「チャーミングな人」とか「迷惑はかけません」などと言い、謙虚にふるまいつつ、しっかり上から目線。思わず「負けるな! ババロアさん」とこっちまで熱くなってしまいます。
私自身はモノガミー(単数愛)ですが、ポリアモリーの考え方や実践する人々を否定しません。でも、複数愛を都合よく利用するのは単なる自己愛です。ポリアモリーの風上にも置けませんし、ポリアモリーの方々にも失礼です。
人を愛することを、自分で選択する
離婚する、離婚しない。吐くほど悩み、迷ったババロアさん。全身全霊で信じて、愛し、愛された夫、カス寺さんとこのまま離れてしまっていいのか?
カス寺さんの気持ちではなく、ババロアさんの気持ちはどこにあるのか。どの道を選んでも、女性の人生に深くて濃い沼はつきもの。
「私、今度こそ自分を幸せにする」。こんな潔(いさぎよ)い声が聞こえてきそうな、ババロアさんの下した選択に、私達はエールを送らずにはいられません。
不倫の向こう側にある景色は、あなたにとって何色でしょうか。
<文/森美樹>
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx
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