こんにちは。恋愛婚活コンサルタントの菊乃です。

写真はイメージです(以下同じ)
AI導入や民間企業とのコラボなど面白い施策が話題になることもありますが、中には婚活者たちにとって“的外れ”な取り組みも。幸せを応援するつもりが、配慮や想像力の不足から炎上してしまうケースさえあり、効果を疑問視する声も多いようです。
私が見たいくつかの事例を紹介します。
ある自治体の婚活セミナーで驚いたこと
私も、行政の関係者の方から婚活セミナー講師の依頼を頂くことがあります。参加者はその自治体在住の独身者か、自治体が集めた婚活支援ボランティアであることが多いです。
新型コロナ感染症が流行したころにも、ある自治体からセミナー講師の依頼を受けました。感染者が増加している時期だったので、セミナーはオンライン開催だと聞き安心していました。

しかしセミナー当日、ZOOMを開いて驚きました。画面に映し出されたのは会議室。私だけがオンライン参加で、参加者たちは役場の会議室に全員集まって受講していたのです。
講師をやりながら、未婚率よりもクラスター発生の方が心配だったのを覚えています。
おばあちゃんがサンドイッチを食べているお見合い
自治体の婚活支援にはいろいろなパターンがあります。マッチングシステムを導入したり、婚活パーティーを企画したり。中には、結婚したいと考える若者を支援する“仲人ボランティア”を育成している自治体もあります。
ある自治体は、お見合いに必ず仲人ボランティアが同席するルールにしていました。「知らない人と一人で会うのは緊張する」という方がいるのは分かるのですが、マッチングアプリやSNSが普及し、ネットで知り合った人と初対面で会うのがわりと一般化した今、こういうボランティアって必要なのかなと疑問です。
そうした自治体のシステムでお見合いした方から聞いたのですが、お見合いのカフェに先に着いていた仲人の高齢女性が、一人でドリンクを2杯頼みサンドイッチまで食べていたそうです。知らないおばあちゃんがデートに同席し、お相手とは踏み込んだ会話もできません。

仲人ボランティアは登録者からお見合い料をもらうため、簡単なアルバイトにもなるのでしょう。でも仲人ボランティアがいる方が、二人の邪魔になっているケースもあるのではと思うのです。
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システムはあるけど、スマホや自宅PCから使えない
この「地元のボランティアがお見合いに同席する仕組み」は決して珍しいものではなく、わりと日本各地に見られる婚活支援です。サービスが生まれた時は画期的で成功事例も多数生まれたので、それにならう自治体が出てきました。その後、スマホやSNSの普及で生活が変化しても、システムだけが変化せず、古い事例からずっとアップデートできないのです。

他には、独自のマッチングシステムを導入している自治体もあります。しかし、システムが古いままのことも少なくないのです。
スマホや家のPCから相手探しができず、自治体が運営する出会いサポートセンターの専用端末でしか相手を確認できません。例えるなら、ハローワークで求人を探すイメージでしょうか。おそらく、ネットに独身者が個人情報を掲載するなんて受け入れられない時代に生まれたサービスなのでしょう。
大丈夫なの? 高齢者たちの個人情報をネットで公開
かと思えば、逆に個人情報をまったく守れていない自治体も。私が一番恐ろしいと思ったケースです。
その自治体でも仲人ボランティアシステムがあるのですが、登録している仲人ボランティアの写真、フルネーム、電話番号、メールアドレスのリストが全てネットに公開されていて、婚活をしていない人でも自由に見られる状態になっているのです。
ボランティアをする方には高齢者も多く、個人情報を公開することで詐欺の電話がかかってこないか心配です。
それに20~30代の独身者は、面識のないおじいちゃんおばあちゃんに、電話やメールで婚活相談したいとは思わないのではないでしょうか。
令和なのに「申込は電話のみ」デジタル化に対応しきれない
行政が主催・後援する婚活イベントも、各地でたくさん開催されています。ですが多くのイベントがなぜか、スマホから申し込みにくいのです。若者が対象のはずなのに。

婚活イベントが企画されるとたいてい、A4縦サイズのチラシデータが作られます。チラシを印刷して、役場や自治体の出会いサポートセンターに置いておくのでしょう。
そのチラシにはたいてい、申込フォームに飛ぶQRコードも載っています。ですがWEB上には、このチラシの“画像データ”だけが掲載されていることが多々あるのです。クリックで申込フォームに飛べるURLやリンクはありません。QRコードだけあっても、スマホから見ていたら直接アクセスできないというのに。中には、申込方法が「電話のみ」というイベントすらあります。
今のままでは、肝心の20~30代に情報が届かない
自治体から報道機関にもプレスリリースが送られますし、行政関係の情報誌にもイベントは掲載されやすいです。スマホから申し込みやすいように工夫をしなくても、ある程度は情報が広まるのでしょう。
とはいえ、自治体が婚活のために一歩踏み出してもらいたいと考えているのは20~30代のはず。彼らは、新聞や行政の情報誌をさほど見ない世代です。婚活支援に関わる方々がデジタル化に対応できず取り残され、20~30代に響く企画を開催できないのです。
人事異動や選挙で、知見が何度もリセットされる問題
一体なぜ、以上のような残念な事例が生まれてしまうのでしょうか。
もちろん、スマホなどを使いこなせる方が担当者になる場合もあるでしょう。しかし自治体の場合は3年ぐらいで異動があるので、身につけたノウハウがあっても人事異動でまたリセットされてしまうのです。また選挙で自治体のトップが変わることで、婚活支援の考え方もガラッと変わります。
ライバルに負けてしまう“恋愛弱者”の支援が必要
色々と書きましたが、個人的には、自治体の婚活支援は大事だと思っています。
新型コロナ流行の影響で、それまでは友人の紹介や合コンで恋人を作っていたような人たちも、マッチングアプリに登録するようになりました。比較検討できる場に華やかな人がいれば、人気はそうした人に集中します。

こうしてマッチングアプリは、「モテる人がさらにモテる場」になりました。マッチングアプリよりも高い効果を期待して、結婚相談所を利用する若者も増えています。若い人、華やかな人が民間のマッチングサービスを利用するので、ライバルに負ける“恋愛弱者”はマッチングしにくくなるのです。
とはいえ、恋愛弱者だとしても今の時代に、高齢者に電話で相談する婚活支援やセンターに行かないと申込できないお見合いは利用しないでしょう。
全国的にも自治体の婚活サポートが盛んになっている中、他の自治体の成功・失敗事例にも学びながら、若者に響くサービスへ進化していくことを期待します。
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<取材・文/菊乃>
菊乃
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt
(エディタ(Editor):dutyadmin)
