こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

写真はイメージです。(以下同じ)
今や夫婦だけでなくカップルでも陥る問題として、取り上げられることも増えたレス問題。日本人は性格的にも文化的にも、性について話し合ったり、改善に向かって取り組んだりといったことが、苦手な人も多いようです。
今回はセックスレス問題を専門の一つとし、多くの男女の悩みにも向き合っている、カウンセラーの潮英子さんに、その問題の本質はどこにあるのか、また悩む前に回避はできないのかを聞きました。
セックスレスの理由で一番多いのが「面倒臭い」
潮さんのところには、男女両方から性の悩みが多く集まると言います。具体的に、どういった夫婦関係であるケースが多いのでしょうか。
「“レス”にもさまざまなタイプがありますが、基本的に夫婦仲自体があまりよくないケースが多いです。また、男女ともに『面倒くさい』が1番多い理由で、何が面倒くさいのか聞いてみると、男性は『仕事で忙しくて疲れている』、女性は『家事育児で疲れている』と答える傾向があります」
また男女どちらも口にする言葉として「家族になってしまったので、異性として見られない」といった理由も多いといいます。
レスになるのは、関係が安定しているから?
ここで気になるのが、「家族」という表現です。そもそも潮さんは、「家族になったからレスになる」というのは、少し違うのではと話します。
「『家族になってしまったから性欲がわかなくなった』という方が多いのですが、カウンセリング時はその言葉を受け止めながらも、ある程度異なる考えを提示していきます。
思うに、セックスは家族だからするものでもあるからです。そもそも夫婦とは、社会的に認知された唯一のパートナーシップですよね。だから『家族になったからできない』という理論は、本当はおかしいのではないでしょうか。では家族化によるレスはなぜ起きるのかというと、一つは“関係の安定化”がもたらしています。
恋愛中であれば、たまにしか会えなかったり、今日しなかったら次はいつできるか分からなかったりなど、ちょっと危機感がある関係が性欲を掻き立てていた部分があると思います。
しかし家族になると、今日頑張らなくても明日も明後日も一緒にいることが保障されています。そうなると、ズルズルと頑張らない(しない)関係になるというのは、理解できます」
日本は“日常の愛撫”の量が少ない
結婚後のレスが進む要因の一つは、家族化といった関係変化がもたらすものである。ちなみにこうした問題は、日本らしい理由も強く関係していると言います。
「パートナーの家族化といった問題は、日本ならではとも言えます。そもそもレスを引き起こす要因として、日常的なスキンシップの量が関係しています。スキンシップが減ると、相手に触れる行為自体のハードルが上がり、その先にあるセックスへのハードルの高さにも繋がります。
日本と諸外国で決定的に違うのは、ハグや軽めのキスといった、日常的な愛撫の量だと言われています。性的ではない愛撫をすることで、自然と性的な愛撫に進みやすくなるわけです。実際クライアントさんに『スキンシップは取っていますか?』と聞くと、『手を繋ぐくらいはあるけど、キスは無い』と答える方が圧倒的に多いです」
では、スキンシップ量を意識的に増やすことで、ある程度セックスレスの解消が見込めるのかというと、「可能性はある」とのこと。
「性欲はある種、筋肉のようなものです。つまり、セックスは筋トレと同じ。性欲は加齢によって衰えると言いますが、習慣的なものによっても衰えていくと考えます」
まずは手を繋ぐこと。普段何気ないハグをしていくことなど、日常での触れ合いの見直しから始めるのは、一つ大切なことかもしれません。
年齢とともに性欲は変化するが…
性欲は筋肉と同じ。なんともさっぱりした考え方に個人的には驚きますが、一般的に、中年に向かっていくにつれ男性は性欲は下がり、女性は上がると言われています。
こうした情報と矛盾するように思うものの、それには理由があるそうです。
「確かに、生物的な性欲は加齢により下がっていくと言われています。男性であれば、年齢とともにテストステロンの数値が下がり、精子の数は減ります。それによって、射精への欲求は減るとされています。
女性は35~45歳ごろになると、女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモンの働きが強くなっていくため、その結果性欲が上がると言われています。
しかしどちらも、加齢による身体的な変化に限定した話です。現実的な生活を見ると、男性は仕事が忙しく責任がのしかかっていたり、女性は育児や仕事の両立でヘトヘトになっていたりする方が多いです。心身ともに疲れていれば性欲は低下しますから、生物的な傾向を、そのまま当てはめるのは難しいと思います」
ここ20年でセックスレスは急増している!?
潮さんいわく、長年レスの問題に向き合っていると、この20年でレスの悩みは特に増えている実感があると言います。その理由は、“便利なアレ”が原因だとか。
「データを取っているわけではありませんが、インターネットが発達しスマホが普及することで、この20年ほどでレスが急激に増えているように思います。男性の場合、レスでもスマホなどでAVを見て、1人で済ませるなど、性処理がより手軽になったんですね。
また、スマホゲームが好きでセックスどころじゃないなど、可処分時間の分配が、性から別のモノへと移動しているケースもあります」
インターネットやスマホの便利さは、情報取得などで問題の解決にもつながるツールである一方、解決から目を背けるツールとしても便利なようです。そう考えると、成熟した今の世の中において、性を謳歌するというのは、ある意味“余暇”の側面も強いのかもしれません。
【潮英子(うしお・えいこ)】
セクシュアリティカウンセラー、公認心理師。日本語教師や航空会社勤務を経てお茶の水大学大学院にて夫婦関係を研究。現在はセックスレスや性依存等のセクシュアリティ、夫婦関係、女性のキャリアの悩み相談に携わっている。著書『女性カウンセラーが教える50代からのhow to SEX』(光文社)、共著『雑談力』(明日香出版社)
<取材・文/おおしまりえ>
水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518
(エディタ(Editor):dutyadmin)
