「生き様は顔に出る」と言いますが、手にも出ると思います。綺麗な指先をしているか、ゴツゴツとして無骨な手をしているか、もしくは爪を伸ばしっぱなしにして不精な手をしているのか……。

　話は変わりますが、SNSのX（旧Twitter）でMKタクシーのアカウント（@MKofficial_PR）がタクシードライバーの手元の画像を続々とアップ、見事にバズりまくっていることを知っていますか？

　2018年1月より、ハッシュタグ「#働く手元シリーズ」としてドライバーの手の写真を放出している同アカウント。その意図について、MKタクシーの“中の人”に聞いてみました！


――そもそも、なんでドライバーさんの手元の写真を投稿するようになったんですか？

今井さん（以下、今井）：「こういうのはお好きですか？」という投稿を突然、突拍子もなく私の方から投稿させていただきまして……。まあ、チャレンジですよね。


　普段から私がカメラマンを担当し、広告用だったりSNSに載せる写真を撮っているのですが、ハンドルを持っているドライバーらしい姿が溜まっていくなかで「あれ？ これ、カッコいいかもな」と思いまして（笑）。「手元だけの写真を載せたことはなかったので、載せてみようかな」という流れだったかと思います。


　あと、アカウントのほうに「ドライバーさんの手元、カッコいい！」というようなコメントもごくたまにあったので、そういった方のご意見なども積み重なって、「#働く手元シリーズ」を展開したというところもあります。



――「#働く手元シリーズ」には、主にどのような反響が寄せられていますか？

今井：感謝が多いですね。「ありがとうございます」って（笑）。

――（笑）。

今井：「素敵なお写真、ありがとうございます」って、感謝が多いです。圧倒的に感謝です（笑）。

――こういうリアクションは女性からが多いのですかね？

今井：そうですね。女性からが多いように感じますし、そういった反響が見えやすいというのも重要なのかなと。社内でも「ここが注目されるポイントなんだ」と、改めて意識改善に役立てています。

　例えば、以前は暑い季節に手袋を外してしまうドライバーがいたんですけど、SNSでの反応を社内に共有しますと「手元はこんな風に見られていて、カッコいいと思われているのか」と、意識が変わったドライバーもいます。

――手袋をしているほうが、清潔感があってウケはいいんですか？

今井：そうですね。弊社の車は車体が黒いので、特に夏場に汗をかいているとベチャッと指紋が残ったりします。ただ、現在はコロナ禍の影響でアルコール消毒をこまめにするようになり、感染防止対策の一つとして手袋は着用しないようにしているんです。

　コメントを見てると、手袋をしているときに浮き上がる血管にリアクションをいただくことも多かったので、手袋をした写真が撮れなくなってから私も正直ちょっと困ってしまった部分はあるんですけども（苦笑）。なので、現在は手袋をしている画像としていない画像を半々で載せるようにしています。


――あとは、どういった反響がありますか？

今井：漫画家さんなど絵を描く方からの反応も多く、「ハンドルを持ってる男性の手元は、イラストで参考にしたかった素材なのでありがたいです」「執事さんの手元の素材になる、参考になる」といったコメントもたくさんございます。そういう需要もあるみたいですね。

――今までで、特に反響が高かった手元の写真はどれでしょう？

今井：実際にアンケートをとって、一番票の集まった一枚があります。

　ハンドルをただただ持ってるだけなんですけども、車内の綺麗さも相まって、人気を博しました。こちらから「車内が綺麗です」と言わずとも、見た方から「車内もすごい綺麗ですね」と言っていただけた1枚です。

――タクシードライバーさんの手元写真を撮る際に、気をつけているポイントはありますか？

今井：手袋だけではなく、プラスして車内を見せて撮るように気をつけています。

――車内を見るだけで、ドライバーさんのキャラクターが伝わるかもしれないですよね。「この人は綺麗好きだ」とか。こういう写真を2018年から撮り続けているなか、手元の写真を綺麗に写す今井さんのスキルは上がっていきましたか？

今井：いや～、どうでしょう。いっぱい撮ってみて「SNSに上げたときに、見やすいのはどれだろう」と思いながら載せてるような……難しいですね。

「画像を3枚組み合わせるとこうなるな」とか、タイムラインに流れる様子を想像しながら載せるイメージです。「これが強いかな」「目を留めてもらえるのはどれだろう？」みたいな。



――ちなみに、手元の写真の被写体になっているタクシードライバーさんたちは、どのくらいの年代の方々なんでしょうか？

今井：幅は広くて、もう退職された方など数年前の写真もあるんですが、SNSに上げているのは20～30代のドライバーの写真が多いような気がします。

　私としては、本当は男性の手元も女性の手元も「ドライバーの手元、カッコいいですよね」という形にしたいんですね。だけど、やっぱり反応してくださるのは女性が多いので、どうしても「男性のドライバーの手元、カッコいいですよね」という反響が多いのが現状です。

　写真撮影でも、ご協力いただくのは基本的に男性ドライバーさんなのですが、私としてはもうちょっと女性の手元を写す機会があればなあ……とは思っています。

――では、じきに女性のドライバーさんの手元写真をアップすることもある？

今井：いえ、実は今まで載せたこともあるんです。ただ、わざわざ「女性ドライバー」と明記しないようにしています。

――気付いていないけど女性ドライバーさんの手元の写真も我々は見ていたということですね。

――2023年1月のつぶやきで「他の企業さんの働く手元もご自由にこのリプ欄にお貼りくださいまし」という呼びかけがあったと思うのですが、その中で特に感銘を受けた投稿はありましたか？

今井：すごく印象に残っているのは、セメダインさんが上げてくださった写真です。

　建築用接着剤をカッコよく使っていたり、接着剤の試験を行っているときの手の写真でした。セメダインさんの専門的な情報と、細かい作業をしていることがわかる写真がとてもいいなぁと思っています。

セメダインさんの「働く人の手元」。接着剤の試験を行っているときの手元[/caption]――最後に、今後の展開を聞かせてください。というのも、これだけリアクションがいいわけですから、写真集を販売したり、何かに発展する可能性もあるのかなと……。

今井：昨今のコロナの関係で、手袋をしていない画像も多くなってきているので、今から発展する可能性はあまりない気がします。たまに、SNSに上げていくくらいでしょうか。

　ただ、2019年には手元の画像が多めのLINEスタンプを制作しました。2020年3月にMKタクシーの制服が新しくなり、旧制服のバージョンになってしまうのですが……。


――ところで、今井さんはもともと手が好きだったんですか？

今井：すごく、それを聞かれるんですよね（笑）。いや～……「めっちゃ好きか？」って言われると「別に」だったんですけども、多くの方々にとってカッコいいんだろうなという認識はしていましたし「手フェチ」という言葉があるのは知っていましたので。それで、私も別に嫌いな部分ではないので撮らせていただいて（笑）。

――「そういう嗜好の人にアピールできるだろうな」っていう、ある種のマーケティング的な気持ち？

今井：そうですね。恐る恐る「需要がありますか？」って聞いているような感じです。

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　それで多くの方から「ありがとうございます」と感謝の嵐が押し寄せたというのだから、今井さんの冷静な読みに感嘆です。

　少なくとも、SNSでは今後も「#働く手元シリーズ」を続けてくれるとのことなので、手フェチを自認する方々はMKタクシーのアカウントに注目です！

＜取材・文／寺西ジャジューカ＞