まだまだ異常な酷暑が続いています。街に出ると、手持ち扇風機をかざしながら歩く人をたまに見かけますよね? いや、共感します。なんだったら、扇風機を自分の体に設置したいくらいキツい暑さなので。
そんな日々の中、すごいものを見つけてしまいました。イヤーアクセサリーを制作する「マルま工房」(@MarumaKoubo)が2023年4月から発売しているのは、その名も『レトロ耳扇風機「耳扇」』です。
耳に、そのまま扇風機を設置してる人みたいなルックス。なんでこんなものを作ろうと思ったのか、マルま工房の牧野裕さんに話を聞いてみました。
身につける遊び心
――いったい、どうしてこんなイヤリングを?
牧野裕さん(以下、牧野):マルま工房は「身につける遊び心」というコンセプトを掲げ、身につけて面白そうだったり、意外性のあるものを発表しています。私も、普段から「面白いものは何かないかなあ」と考えながら生活しているんですが、特に今年の夏って暑いじゃないですか?
涼しそうなものがあるといいなあと思い「夏の涼しいアイテムといったら、うちわか扇風機かエアコンか?」というところから「扇風機を耳につけると可愛い」と、「耳扇」の商品化が決まりました。
――要するに、暑い日に身につけたり、視界に「耳扇」が入ると涼を感じる……ということが狙いでしょうか?
牧野:まあ、正直言うと、そんなに深く考えて作ってなくて(笑)。耳につけてる本人も楽しいし、見た人が「なに、それ!?」ってツッコみたくなるようなものという要素を重視しました。
あと、耳に扇風機をつけるのであれば、見た目的に壁掛け式のほうが面白いですよね。壁掛けと言えば、パッと思いつくのは銭湯の脱衣所にあるやつなので、その型のデザインにしました。
どんな人が買っている?
――あ、本当ですね(笑)。このイヤリング、見ていてすごく楽しいのですが、ファッション的に合わせるのは難しくないですか?
牧野:ファッションで合わせるというより、「面白いから買ってみよう」という方が多い印象です。あと、もしかしたら浴衣に合わせる方が多いかもしれません。「耳扇」は羽根のカラーバリエーションがいくつかあるので、自分の浴衣の色とコーディネートするなんてこともできます。
――購入した人からは、どんな反響がありましたか?
牧野:『予想以上に作りが細かい』という声が寄せられています。実際に羽根が回る構造になっていますし、首が可動式になっていてお好みの方向へ動くので、単純に「すごい」「見てて面白い」と言ってくださる方は多いです。あと「耳元が涼しげになって嬉しい」という声もいただいています。
羽根は回転し、首振り機能まで!
そうなんです。このイヤリング……というか扇風機、風に当たると羽根が回転するんです。
さらに、可動式になっているため、首振りで好きな方向に扇風機を向けることもできるきめの細かさ! しかし、このクオリティに到達するためには苦労も絶えなかったようです。
牧野:耳につけ外しするので、カバー部分(羽根を覆うふたの部分)の強度の調整と、いかに本物っぽく見せられるかというところの、ちょうどいい落としどころを探すのに苦労しました。あと、この小ささでも実際に羽根が回るようにするための構造を考えるのも大変でしたね。完成までに何度も試作を行い、改良を重ねてきました。
洗濯バサミのイヤリングは痛くない
――マルま工房さんで今まで販売してきたイヤーアクセサリーの中で、特に自信のある商品はどれですか?
牧野:去年から発売中の「耳専用洗濯バサミ」は、かなり反響が大きいです。
――「そのまま付けてきたのか?」って勘違いされそうですけど(笑)。
牧野:本物よりかなりサイズは小さいですし、食い込んで挟まっているように見えますが、微妙に隙間が空くようになっていて全然痛くないんです。あと、一昨年より発売している「光る!ランタンピアス/イヤリング」も反響が大きいです。
個性的なイヤーアクセサリーは他にも
牧野:キャンプとかアウトドア好きの方にすごく刺さっています。高さ3cmぐらいのミニチュアサイズで、重さは2グラム、耳に付けるにはちょうどいいぐらいのサイズ感です。ちゃんとLEDが光って、ボタン電池の交換もできます。そこが制作時に一番苦労した点ですね。
夏ということで言えば、うちの古参商品である「小さな風鈴ピアス・改」「かじられちゃったスイカの風鈴ピアス/イヤリング」と「ブタさん蚊取り線香ピアス」も、この時期にはたくさん注文が入ります。
あえて片耳ずつ販売するワケ
――めちゃくちゃレパートリーがありますね。
牧野:基本的にうちのショップは、あえて片耳ずつで販売しているんです。というのも、違うアイテムを組み合わせるおしゃれを楽しんでもらいたいなと思っていて。
例えば、両耳に風鈴をつけるのでなく、片方が風鈴でもう片方は扇風機を合わせてあげる。つまり、“風で鳴るもの”と“風を起こすもの”のセットにしてみたり(笑)。風鈴と蚊取り線香で、夏の縁側の組み合わせみたいなのも面白いですよね。
あと、近々発表する商品として、エアコンのイヤーアクセサリーを考えているんですが、片耳にエアコン、片耳に室外機みたいな組み合わせもいいですよね。ぜひ、購入した方ご自身で耳元にストーリーを作ってもらえると嬉しいです。
「耳」にこだわる理由とは
――今後、こんなイヤーアクセサリーを作ってみたいというアイデアはありますか?
牧野:発売中の商品の中に「耳からビールピアス」というのがあるんですけど……。
牧野:耳のところからタップが生えて、ジョッキにビールが注がれいるというデザインなのですが、お酒好きの方からは特に人気です。そこで、“グルメの秋”“食欲の秋”に向けて、このワインバージョンを作っています。すでに、そちらはいつでも販売できるくらいの状態です。
――ところで、マルま工房さんは単に面白いプロダクトを作るだけではなく、イヤーアクセサリーに特化して商品を展開されていますよね。そのこだわりの理由を教えてください。
牧野:実は、うちの商品はイヤーアクセサリーだけでなく、デザインフェスタなどイベントへの出展時にはネックレスへの交換も行っています。
必ずしも耳に限定してるわけではないのですが、“身につける遊び心”だけは大切にしたいと思っていて。せっかく、さりげない笑いを取り入れるなら、バッグなどにつけてどこかへ置いておくより、体につけておくことが素敵だと私は思っています。
人と会ってコミュニケーションを取るとき、私たちは絶対に相手の顔の周りを見ると思うんですね。よく目線が行く場所に面白いものがついていたほうが、それをきっかけに話題が広がると思い、耳や首元など顔周りにつけられるアイテムにこだわっています。
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マルま工房のプロダクトの購入層は20~50代の男女と幅広く、中でもメインは30代、40代の女性だそう。これらの商品は、アレルギー持ちの方のためにチタンや樹脂の仕様でオーダーすることも可能です。
軽い気持ちで作ったかと思いきや、意外に素敵なコンセプトが潜んでいた“扇風機型イヤリング”。街中で身につけてる人に遭遇し、偶然の涼を感じてみたいですよ!
<取材・文/寺西ジャジューカ>
(エディタ(Editor):dutyadmin)






