中田敦彦による松本人志への“提言”から2週間余り。ベテランと若手、いずれの芸人からも中田に対して様々な反応が寄せられました。大半は中田に批判的だったり、冷めた感想を抱いたり、逆に笑いにしてしまおうとする向きもありました。
しかし、この一件と真っ直ぐ向き合いつつ、芸人としての役割も全うしようとする勇者もいました。
彼らの発言を再度検証し、中田敦彦問題の後味の悪さとは何だったのかを考えたいと思います。
まず“提言”動画で相方の粗品を名指しされた、霜降り明星のせいやです。動画を受け、即座に自身のツイッターで<真っ直ぐ勝負してないウンコみたいなやつが相方の名前使うな 中田>と怒りをあらわにしました。
これを見た堀江貴文氏から<お笑いの世界って「真っ直ぐ」勝負とかそんなんあるんだな笑>と茶化されたことを受けて、『霜降り明星のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、改めてせいやが「真っ直ぐ」に込めた意図を明かしたのです。
ネットニュースなどでは、せいやが“ウンコ”呼ばわりしたために中田を猛批判しているように取り上げていましたが、決してそうではありません。ラジオの冒頭、「あっちゃんにウンコって言っちゃったぁ!」と非礼をわびたせいやが繰り返し訴えたのは次のことでした。
<提言はぜんぜんいいんですよ。中田さんが理論立てて、勉強めっちゃできる人やからさ、きっと合うてる部分もある。ただ、他人を巻き込む部分がある。一人で戦ってたら提言やと思うんですけど、色んな人を巻き込みながらやる感じが、俺は前からそれだけ気になるなと思いながら見てたんですよ。>
つまり、せいやが批判をしたのは松本人志批判の主旨ではなく、中田自身の姿勢だったのですね。自分の責任を分散させるために無関係の他人の固有名詞を持ち出すことが、せいやには卑怯に映った。しかも今回は相方の粗品を利用した。それが許せなかったので、“ウンコ”だったり“真っ直ぐ勝負してない”といったツイートになってしまったわけです。
さらに、せいやは中田が唐突ではなく戦略的に粗品の名前を挙げたことに怒りを覚えているとも語っていました。確かに中田の「これ見てる粗品くんどう思う?」という口調は、“キミも味方だよね”と言外に同意を求めるトーンでした。
こうして他人に乗っかってセーフティーネットを築くやり方が「真っ直ぐ」ではない。せいやの怒りは、お笑い芸人どうこうではなく、まずひとりの大人として中田敦彦を問いただしているように見えました。
同時に、このトークをお笑いとして鑑賞できるパッケージに落とし込んだ霜降り明星のコンビワークもあっぱれでした。
と思っていたら、粗品は6月12日配信の自身のYouTube『粗品のロケ』で、問題の「THE SECOND」を<成功してない人らの大会やもんな。>と酷評したのです。新たな火種となってしまうのでしょうか?
しかし、この一件と真っ直ぐ向き合いつつ、芸人としての役割も全うしようとする勇者もいました。
彼らの発言を再度検証し、中田敦彦問題の後味の悪さとは何だったのかを考えたいと思います。
霜降り明星せいや<人を巻き込みながらやる感じが…>
まず“提言”動画で相方の粗品を名指しされた、霜降り明星のせいやです。動画を受け、即座に自身のツイッターで<真っ直ぐ勝負してないウンコみたいなやつが相方の名前使うな 中田>と怒りをあらわにしました。
これを見た堀江貴文氏から<お笑いの世界って「真っ直ぐ」勝負とかそんなんあるんだな笑>と茶化されたことを受けて、『霜降り明星のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、改めてせいやが「真っ直ぐ」に込めた意図を明かしたのです。
ネットニュースなどでは、せいやが“ウンコ”呼ばわりしたために中田を猛批判しているように取り上げていましたが、決してそうではありません。ラジオの冒頭、「あっちゃんにウンコって言っちゃったぁ!」と非礼をわびたせいやが繰り返し訴えたのは次のことでした。
<提言はぜんぜんいいんですよ。中田さんが理論立てて、勉強めっちゃできる人やからさ、きっと合うてる部分もある。ただ、他人を巻き込む部分がある。一人で戦ってたら提言やと思うんですけど、色んな人を巻き込みながらやる感じが、俺は前からそれだけ気になるなと思いながら見てたんですよ。>
つまり、せいやが批判をしたのは松本人志批判の主旨ではなく、中田自身の姿勢だったのですね。自分の責任を分散させるために無関係の他人の固有名詞を持ち出すことが、せいやには卑怯に映った。しかも今回は相方の粗品を利用した。それが許せなかったので、“ウンコ”だったり“真っ直ぐ勝負してない”といったツイートになってしまったわけです。
戦略的に粗品の名前を挙げたことに怒り
さらに、せいやは中田が唐突ではなく戦略的に粗品の名前を挙げたことに怒りを覚えているとも語っていました。確かに中田の「これ見てる粗品くんどう思う?」という口調は、“キミも味方だよね”と言外に同意を求めるトーンでした。
こうして他人に乗っかってセーフティーネットを築くやり方が「真っ直ぐ」ではない。せいやの怒りは、お笑い芸人どうこうではなく、まずひとりの大人として中田敦彦を問いただしているように見えました。
同時に、このトークをお笑いとして鑑賞できるパッケージに落とし込んだ霜降り明星のコンビワークもあっぱれでした。
と思っていたら、粗品は6月12日配信の自身のYouTube『粗品のロケ』で、問題の「THE SECOND」を<成功してない人らの大会やもんな。>と酷評したのです。新たな火種となってしまうのでしょうか?
マヂラブ野田<芸人からYou Tuberになった人ってお笑いを諦めてる人が多いんですけど>
他人を巻き込む手法はさておき、中田のいまだ冷めぬお笑いへの思いを評価していたのが、マヂカルラブリーの野田クリスタル。
<お笑いすごい好きなんじゃないかって思っちゃうことはあるよね。芸人からYouTuberになった人ってお笑いを諦めてる人が多いんですけど、(中田は)チャンネルの登録者数が500万超えでしょ? もうお笑いと一切関わらなくてもいいのにね。それでも何かが諦めきれなかったというか。>
と、中田の現状を分析し、松本人志への批判が決してただのイチャモンでもスタンドプレーでもなく、むしろお笑いに価値を認め、その頂点に君臨する松本人志という存在を崇めるからこそ発せられた言葉だと考えていました。
終始冷静かつ真面目なトーンで、中田敦彦と松本人志の双方の立場に配慮する冷静さが光ります。
<チョコプラと中田共演NG>発言は近い後輩&同期からのエール
野田クリスタルの話を深掘りしていたのがチョコレートプラネットの長田庄平です。ネットニュースでは、<松本人志派です>との発言が切り取られ、あたかも中田から距離を置いているような伝えられ方でしたが、果たして本当にそうなのでしょうか?
オリラジの後輩のチョコプラ、同期のシソンヌ長谷川忍、はんにゃ金田哲、藤森慎吾によるトークは興味深いものでした。以下、6月5日配信のチョコレートプラネットチャンネル『【ベーキング】中田ブチギレ問題』からのエピソードです。
長田は、中田がイジられることを極度に嫌うことを暴露。相方の藤森慎吾が劇場「ルミネtheよしもと」の楽屋裏で顔が大きいことをからかうと、何も言わずにひたすら蹴ってきたというのです。
また、中田は自分以外の人間が相方・藤森をイジることを許さないのだそう。チョコプラが以前に公開したYouTube動画で藤森をイジったところ、中田から<動画内で呼び捨てにされたり、相方へのいじり方を見ていて、あまり気持ちのいいものではありませんでした。(中略)これからは遠くで応援してます>と、決裂宣言がコメント欄に書き込まれました。
この中田の極度の生真面目さ、神経質ぶりに、長田は<ダウンタウンですらイジらせてくれる>と半ば呆(あき)れつつ、だからこそ松本人志への提言には論理的な根拠があるはずなのだと理解を示したのです。
そのロジカルな側面に加え、中田の性格が<天然でピュアで感情的>だと証言したのが金田。外から見るととんでもないことを突然言い出したように見えてしまうとフォローしているように見えました。
そして、中田がいわゆるプロレスではなくガチでケンカをしたがるタイプだということでも意見が一致。そんな中田が好きだからこそ、<あえてのチョコプラと中田共演NG>(長田)と突き放した。それこそが中田の求めるお笑いだと知っているから、この苦境にあっても彼らはそれに付き合おうとしているわけですね。
それを踏まえれば、<私は松本人志派です>という長田の言葉が中田への最高のエールなのではないでしょうか。
中田自身はボケたおし“お笑い”を利用してプライドを守った
さて、こうした仲間の芸人たちの苦労や工夫を知ってか知らずか、当の中田本人はすべてをスカしたボケでやり過ごすという選択を取りました。以下、6月8日公開の中田のチャンネルの動画『オリラジ会議』でのやり取りです。
“提言”動画の中で公開されたものの現在は削除された<中田で笑うのって結構知性いるからね。中田を面白いと思わないって、ドストエフスキー読めないとか、モーツアルトがわからないのと一緒だから。後世恥かくから。>という自身の発言を、<センスとオツムがない奴におれの笑いは理解できない>という松本人志の『遺書』からの一節になぞらえたのです。
そうすることで、自身のうかつさを軽減すると同時に、本当は松本人志が好きなのだと世間にアピールしたい意図が垣間(かいま)見えるのですね。正面からの謝罪や撤回ではなく、少しずつ論点をずらしたり反感を薄めたりするためにボケ倒す。相方の藤森も律儀(りちぎ)に全力でツッコむので、中田も誤った方向で加速してしまう。
ほんこん、上沼恵美子、東野幸治といったベテラン勢からの批判や疑問も、すべてこの方法で不真面目に処理してしまうので、視聴者の印象は良くなかったのではないでしょうか。
ここからうかがえるのは、“負けたくない”、“負けを認めたくない”というプライドだけ。そのためにお笑いを利用している雰囲気が、爽やかではないと感じました。
中田は藤森ふくめ多くの人の好意的なフォローに気づいていないのか
改めて、せいや、野田クリスタル、チョコプラの反応を振り返ると、そのプライドを真面目さだったり論理的な考え方だったりと、好意的に解釈してフォローしているように見えます。
しかしながら、当の中田敦彦がその友情に気がついていないのではないか? 藤森慎吾の必死な献身が、そのことを物語っているように感じました。
<文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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