穏やかな海と多くの島が織りなす多島美の風景が印象に残る瀬戸内海。数多くの景勝地が観光名所として取り上げられていますが、その中でも近年人気が急上昇している場所があるのをご存じでしょうか。
絶景写真が撮れると話題の父母ヶ浜
その場所とは、香川県にある父母ヶ浜(ちちぶがはま)。夕陽の名所であると同時に、水面の反射を利用した“映える”写真が撮れる撮影地として多くの人が訪れる場所になりました。
今回は、夕陽をバックに幻想的なリフレクション写真を撮る方法を、父母ヶ浜の美しい景色の魅力と共にご紹介します。
瀬戸内海に向かって美しい砂浜が広がる父母ヶ浜
父母ヶ浜は、香川県西部の三豊(みとよ)市にある海水浴場です。穏やかな瀬戸内海に面した砂浜が南北に1キロほど続いています。
一度は埋め立ての危機に見舞われたものの、地元の方々の「砂浜を残したい」という熱意が伝わり、埋め立ては中止され、美しい砂浜が無事に残ることとなりました。
西側に瀬戸内海が開ける地形のため、父母ヶ浜から見る夕陽は、瀬戸内海や沖合の島に沈んでいくように見えます。
その夕陽の美しさから、父母ヶ浜は夕陽の名所としても知られています。
リフレクション写真の撮影地として一躍有名に
瀬戸内海は、西側が関門海峡や豊後水道、東側が鳴門海峡に面しており、太平洋や玄界灘といった外海につながっています。そのため潮の満ち引きによる潮位の変化が大きいという特徴があります。鳴門のうず潮もこの潮位の変化で起きる自然現象のひとつです。
そんな瀬戸内海に面する父母ヶ浜では、潮が引くと砂浜のあちこちに大きな潮だまりが現れます。この潮だまりを鏡にすることで、人と人の影とが上下対象に映った美しいリフレクション写真を撮影することができるのです。
この撮影されたリフレクション写真の雰囲気が、名だたる世界の絶景のひとつである南米ボリビアのウユニ塩湖と似ている、と話題になり「日本のウユニ塩湖」として注目を集めています。その結果、父母ヶ浜はオールシーズンを通して多くの人が集まる観光スポットになりました。
リフレクション写真を撮りたいなら、干潮と夕暮れの時刻を狙って
父母ヶ浜でリフレクション写真を撮りたい場合、まず砂浜に潮だまりができる干潮の時刻を調べておく必要があります。
三豊市観光交流局のWebサイトでは、父母ヶ浜周辺の潮汐表を公開しているので、そこで訪れたい日の干潮の時刻を知ることができます。
リフレクション写真で最も重要なのは太陽の光。父母ヶ浜では、太陽が海のある方向に沈みます。そのため、太陽が低い位置になる夕暮れ時に逆光となって、人がシルエットとして映り込んだリフレクション写真を撮ることができます。
三豊市観光交流局のWebサイトでは、父母ヶ浜で干潮と夕暮れが重なる日にちの一覧をまとめています。思い出に残るリフレクション写真の撮影方法も説明されていますので、参考にするといいでしょう。
あとは当日の天候次第。風が吹いていると潮だまりが波立って鏡にならず、曇りや雨だと光が弱く反射しづらくなります。こればかりはどうにもなりませんので、これはこれとして旅の思い出のひとつとし、再訪を期すのもいいでしょう。
「日本のウユニ塩湖」と呼ばれ、美しい夕景やリフレクション写真の撮影を楽しむことができる父母ヶ浜を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
近隣には寛永通宝をかたどった巨大な砂絵「銭形砂絵」がある琴弾公園や「天空の鳥居」で知られる高屋神社、八十八ヶ所霊場のひとつに数えられる観音寺など観光名所が点在していますので、ゆっくりと時間をかけて香川の旅を楽しんでください。
執筆者:村田 博之(名所・旧跡ガイド)