ヨガ・ピラティスの流行や、野球選手、また陸上やテニスプレーヤーといったスポーツ選手も実践しているとテレビで紹介されたこともあり、体幹を鍛える人は増えています。
サッカー選手・長友佑都選手も体幹を鍛えているアスリートとして広く知られています。
体幹トレーニングは、トレーニンググッズを使わず自重で行う種目も多く、ジムに通わなくても家で簡単にできる“宅トレ感”が魅力。筋トレはハードルが高いけれど、体幹トレーニングなら挑戦しやすそうだと、運動不足の女性や高齢者にも人気です。
深層筋(インナーマッスル)を鍛えて身体を引き締めたい、姿勢をよくしたい、ダイエット運動として取り入れたい。
さまざまな目的にマッチする「体幹トレーニング」について、効果やメリット、鍛えられる部位、トレーニングの種類などを徹底解説していきます。
体幹とは
首から上、腕・足を除いた部分のことを「体幹」といいます。
腹筋や胴体部分のことだと勘違いしやすいのですが、胸や背中などの大きな筋肉、肩関節・股関節まわりの小さな筋肉まですべて体幹であり、それらを鍛えるのが体幹トレーニングです。

体幹を鍛えるメリット
体幹を鍛えることで感じられる最大のメリットは、筋肉のバランスを整え、カラダ全体の安定性が高まるという部分にあります。
たとえばランニングフォームの改善やケガ予防、動きをスムーズにさせることで競技パフォーマンスを向上させるほか、筋力向上による体の引き締め、体力向上などが期待できます。
日常生活においても、筋肉がつくことで疲れにくくなったり、腰痛予防、姿勢の崩れを防ぐ、転倒予防などのメリットもあります。
また、ひざに痛みを抱えている人や、腰痛といった怪我が心配な人の自宅トレーニングにもおすすめです。
自宅でできる体幹トレーニングメニュー
多くの種類がある体幹トレーニングですが、まずは器具なしでできる基本ポーズから紹介します。継続して毎日行うことで、ボディラインの引き締めや柔軟性の向上、健康維持にも役立ちます。
プランクまずは肘をつけた「ロープランク」から解説していきます。ひじの痛みを軽減させるため、マットを敷いて行いましょう。
基本のやり方 両肘を床につけ、うつ伏せになります 両足を腰幅に開き、つま先を立て、腰を浮かせます その姿勢のままキープします
ロープランク
肘を曲げないハイプランクも、体幹強化のほか腕・肩の筋持久力向上におすすめです。60秒ほど行いましょう。

ハイプランク
動画でもチェックしてみましょう。

ポイントは、「お尻を高く上げない」「頭・肩・腰・膝・カカトは一直線になるよう姿勢をキープする」「頭は常に床の方向を見て、動かさない」です。
頭・肩・腰・ヒザ・かかとが、横から見たとき常に一直線になるように意識する 腹筋を中心に、全身に力を入れるのを意識する 20秒×3セットを目安に行う肘が痛くなる人は、厚めのトレーニングマットを敷いて行いましょう。厚手のタオルでも構いませんが、滑りやすいので注意が必要です。
長時間やればやるほど効果が出る?プランクで耐えられる時間を伸ばして、負荷を高めようとする人がいます。しかし長時間できるということは、負荷が少ない可能性が高いでしょう。
長く行うより、習慣化して正しいポーズで60秒行った方が効果が期待できます。
アライメント(姿勢)を意識して全身に力を入れるように行うと、長くても30秒程度しかキープできないほどきついトレーニング方法と言えます。
プランクのアレンジメニュー
ワンレッグプランク(片足プランク)
「ワンレッグプランク」は、プランクの姿勢から片足を浮かせるエクササイズです。足を浮かせたときにしっかり腹筋を意識し、カラダの一直線を保ったまま行なうことがとても大切です。
ワンレッグプランクのやり方
腕を肩幅ほど広げてつま先を立て、下半身を持ち上げる 左右どちらかの足を浮かせ、キープする 左右交互に行なう
実施回数
左右 各30秒×3セット
ポイント
かかとはお尻の高さまで上げる 呼吸を止めず、リラックスして行なう お尻が上がりすぎないよう、上腕四頭筋にも力を入れ、体をまっすぐに保つ鍛える筋肉(場所)
体幹 背筋 臀部(お尻) ハイリバースプランク
「ハイリバースプランク」は、胸を開き、肩甲骨まわりのストレッチ効果も期待できます。時間や高い負荷をかけることより、正しいフォームで行なうことがとても大切です。
ハイリバースプランクのやり方
仰向けに横になる 手ひらを肩の真下の地面に置く 腰を上げていく 頭から足先まで一直線をキープして上を向く
実施回数
30秒×3セット
ポイント
視線は天井へ向ける お腹を上げるようなイメージで行なう 呼吸は止めない鍛える筋肉(場所)
大腿四頭筋 ハムストリングス お腹まわり プランクレッグレイズお尻や太ももの裏の筋肉を鍛える「プランクレッグレイズ」。ヒップアップとお尻の引き締め効果が期待できます。


プランクレッグレイズの正しいやり方
腕を肩幅広げて、上体を起こす つま先を立てて、下半身を起こす 片方のつま先で体を支えて、片足は肩の位置まで持ち上げる 左右交互に行なう
実施回数
左右 各10回×3セット
ポイント
上げた脚だけでなく、体全体を持ち上げる意識で行う 肩と手を力ませないようにする かかとを蹴るイメージで足を上げる鍛える筋肉(場所)
臀部(お尻) ハムストリング ヒップリフトお尻と腰全体を鍛えることができる「ヒップリフト」。腰を水平方向に動かすことで、腰の筋肉や大臀筋へのアプローチに効果的です。

ヒップリフトの正しいやり方
仰向けに寝て、膝を90度に立てる 肩・腰・膝が一直線になるように、床から腰を持ち上げる お尻を締めるように意識し、姿勢をキープする
実施回数
20回×3セット
ポイント
足が地面から浮かないように注意する 片足を伸ばしてキープすると、さらに効果アップ鍛える筋肉(場所)
大臀筋 ヒップリフトブリッジ
腹筋をはじめ、背筋や太ももなどが鍛えられる体幹トレーニング「ヒップリフトブリッジ」。基礎代謝も上がる効果も期待できます。
ヒップリフトブリッジのやり方
うつ伏せで横になる 上半身を起こして腕を肩幅に広げる 下半身を持ち上げてつま先を立てる お尻を限界まで上げる
実施回数
20秒×3セット
ポイント
体が「くの字」になるように、お尻は限界まで高く上げる 目線は前に、頭から足まで一直線になるようにキープする鍛えられる筋肉(場所)
体幹 腹筋 背筋 大腿四頭筋 ローリングプランク体を横に回転させながら、ノーマルプランクとリバースプランクの体勢を繰り返すトレーニング。一般的な“静”のプランクに対して、こちらは“動”のプランクです。
5往復を3セットが理想ですが運動負荷が高いため、無理のない回数から始めていきましょう。

ローリングプランクのやり方
腕立て伏せの姿勢になる 片手を離しながら体を横に回転させ、離した手を床に戻す 逆側の手を離し、回転させて腕立て伏せの姿勢になる 反対の回転を行い、もとの姿勢に戻る(これで1往復)
実施回数
5往復×3セット
ポイント
常にお腹に力を入れて、フォームが崩れないようにする 自分でできる稼働範囲で回転して、体を支える 腰が下がらないように注意する鍛えられる部位
三角筋 上腕三頭筋 腹直筋 腹横筋 ドローイング
インナーマッスルを鍛えるトレーニングとしておすすめのドローイング。腹式呼吸をしながらお腹を凹ませることで、腹横筋を鍛えます。
ドローイングのやり方
お腹に空気をため込む意識で、息を大きく吸う 限界まで吸ったら、息を止めて一時キープする お腹が凹むように息を吐き出す 凹ませた状態で20秒キープする
実施回数
15秒×2セット
鍛える筋肉(場所)
腹横筋 インナーマッスル横になって行うドローイングもやり方は同様です。

腕立て伏せには腕力を鍛えるだけではなく、体幹を含む上半身全体の筋持久力向上にも効果的です。
両手を肩幅よりやや広めに床に置き、肘を伸ばす 肘を曲げ、胸が床につくまで体を下ろす 床で静止した後、体をまっすぐ上へと押し上げ、はじめの姿勢へと戻る
体全体を棒のように意識してください

体をまっすぐに保つことがポイントです。

強度を上げたいときは、以下の動作をプラスしてみてください。
いつもよりゆっくり行う 逆にすばやく行う ダンベルやバーベルのプレートなど、重りを乗せる 起き上がる際に一気に力を入れ、両手を床から浮かせるようにする腕立て伏せが苦手な人は、膝をついて行ってもOKです。

肩や腕など上半身の筋力も鍛えるだけではなく、股関節屈筋や腰、脊筋を強化して、バランスのとれた体幹を作る効果があります。まずは壁を使ったやり方からチャレンジしてみましょう。
床に両手をつき、壁に足をつけて、斜めの姿勢になる 手を1歩ずつ壁に近づけると同時に、壁につけた足を上に登らせていく ほぼ垂直に近い位置まで来たら、両足を揃えて静止する

はじめは低い位置までで構いません。徐々に登る高さを上げていき、壁に体を近づけていきましょう。
10~15分程度の練習を、週2~3回行うほうが、体への負担も少なくおすすめです。
すでに逆立ちができる人は、逆立ちをしながら腕立て伏せを行う、逆立ちのまま手で歩行を行うといったステップアップしてみましょう。筋肉量の維持、バランス感覚の向上にも役立ちます。

ヨガのポーズは、どれも体幹を鍛えるトレーニングとして有効です。
ハイプランクの姿勢でもある「板のポーズ」や、全身の引き締め効果もある「猫のバランスポーズ」などを行ってみましょう。

板のポーズ

猫のバランスポーズ
エクササイズアイテムを使った体幹トレーニングメニュー
続いて、バランスボールやダンベルなど、一般的な道具を使った体幹トレーニングのバリエーションです。
バランスボールバランスボールは、その弾性や不安定な形状により、体幹部の筋肉や関節部分に大きな刺激が加わりやすくなります。
それにより筋肉のバランスを整え、姿勢の崩れや肩こり、腰痛、関節痛などの予防も期待できます。クランチやプランクなどを、バランスボールを使用しつつ行ってみましょう。
今回は例として、腹筋を鍛えるバランスボール・クランチを解説します。
バランスボール・クランチ バランスボールに座り、両足をしっかりと床について、仰向けで寝る バランスをとりながら上半身を起こしていく 限界まで起こしたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る

ボールから落ちないよう自然と姿勢をキープするため、自重で行う体幹トレーニングが苦手な人も行いやすいかと思います。
10回×3セットを目安に行いましょう。

100円ショップなどでも見かけるほど人気のトレーニングアイテムです。ローラーを動かしながら体を前後へ伸ばす動きによって、筋肉と体幹を鍛えます。
床の保護のため、マットを敷いて行いましょう。
膝つき腹筋ローラーのやり方 両膝を床につけて、グリップを握る ローラーを前方に転がしながら、体をゆっくりと前へ伸ばす これ以上伸ばせないところでストップし、伸ばしたときと同じスピードを保って元の位置に戻る

スピードをつけると筋肉に効きにくいので、ゆっくり行う

腹筋ローラーはかなりきついトレーニングメニューです。ローラーを押した後、筋力がない人はまず引き戻すことができません。
初心者は転がして引き戻さず、そのまま倒れ込むだけでも充分効果的です。
バランスビーム体操競技で使う平均台を低くした「バランスビーム」。幅10センチほどの角材でも代用可能です。上を歩くことで、体幹の安定性を鍛えることができます。
歩幅を小さくして、前足の踵を後ろ足の先につけて歩いてみましょう。視線はまっすぐ前方を見つめ、両腕を横に広げるとバランスが取りやすくなります。
慣れてきたら片手ずつダンベルをぶら下げて歩いてみてください。

関連記事:角材の上を歩いて体幹を鍛える。「バランスビーム」を使った家トレメニュー
懸垂(チンニング)鉄棒や懸垂バーなどを使った「懸垂(チンニング)」は、体幹はもちろんのこと腹筋や広背筋、上腕二頭筋など、広範囲の筋肉を鍛えることができます。
初心者はまず「ぶら下がりホールド」からチャレンジしてみましょう。
ぶら下がりホールド 手の平は前に向けて、手の幅が肩幅と同じぐらいの広さの位置で握る 鉄棒から肘を完全に伸ばしてぶら下がる 30秒キープする
足先は揃えて、体が1本の棒になったような状態を保つ
30秒行えるようになったら、肩甲骨を押し下げてみましょう。さらに腹筋に力を入れ、揃えた両足を前に上げます。
こちらも20~30秒ほど行えるようになったら、あごが鉄棒の上に来るところまでジャンプしてください。この状態で静止します。

懸垂を行うときは、肘を完全に伸ばして可動域いっぱいに筋肉を働かせることが大切です。回数をこなすことを優先して肘を曲げた状態までしか下ろさない場合、正しい効果を得ることができません。
回数より正しいフォームを優先しましょう。
さらなるステップアップとして、下半身を揺すった反動を使い体を持ち上げる「キッピング」、バーにぶら下がって両足を持ち上げ、つま先でバーにタッチする「トー・トゥー・バー」など上級者向けのワークアウトもあります。

キッピング

トー・トゥー・バー
ケトルベルころんとした形が可愛らしいケトルベルは、女性にも人気のワークアウトアイテムです。ダンベルのようなものと感じるかもしれませんが、ケトルベルは腕力ではなく体幹で操るアイテムです。
足を肩幅に開いて立ち、ケトルベルを両手で握る ケトルベルを両足の中央に位置させ、膝を曲げ、お尻を後ろに突き出す 腰を前方向に振る反動を利用して、ケトルベルを頭上、あるいは目の高さまで振り上げる
前かがみになったり、大きく腰を反らすと腰痛の原因になります。視線は前方へ向け、背筋をまっすぐ保つのがコツです。
10~20回×3セットほど行いましょう。
最後に、体幹トレーニングの効果を高めるポイントを解説していきます。
体幹トレーニングの注意点と効果を高めるコツ
体幹を効果的に鍛えるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
腹筋を意識する体幹トレーニングは、腹筋群や背骨周辺にある小さな筋肉に対して効果が高いメソッドです。そのため、動作中に腹筋を意識するのとしないのでは、強度や効果に大きな違いが現れます。
腹筋全体に力が入るように行いましょう。
姿勢(アライメント)を意識しながら動作を行うトレーニング中、キツさから姿勢が崩れたり楽なポーズをとってしまうと、効果が半減します。プランクでお尻が上がってしまう例などがそれに当たります。
姿勢が体になじむまで鏡を見てチェックをする、他者に見てもらうなど、アライメントの崩れがないか確かめましょう。
先端部分にも意識を向ける頭の向きや指先、つま先、足首の角度など、先端部分にまできちんと意識を向けて行うことが非常に重要です。
ここを意識することによって、全身に力が入り、効果的に体幹部を刺激できるのです。
ウエイトリフティングでも体幹を鍛えることができる
自重が多い体幹トレーニングですが、バーベルを使ったウエイトリフティングも、体幹を鍛えるにはおすすめです。
バーベルを頭上で静止する動きによって体幹を強化することができるほか、腕や肩、下半身の筋力向上も同時に狙えます。
以下の種目などを行うとよいでしょう。
オーバーヘッドスクワット

<Text:編集部>