通称、HIIT(ヒット/ヒート)と呼ばれるトレーニングは、短時間で体脂肪を落とす効果が期待できるものです。正式には、「高強度インターバルトレーニング:High-Intensity Interval Training(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)」という名前のこのトレーニング、ポイントは“全力”で行うことです。
今回は、HIIT(ヒット)とは何か、どのようなトレーニングメニューがあるのかなどのをご紹介します。
「HIIT(ヒット)」とは
「HIIT」とは「High-Intensity Interval Training(ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)」の略。
いわゆる高強度インターバルトレーニングを指します。
インターバルトレーニングとは、高負荷の運動と低負荷の運動を交互に入れるエクササイズのこと。その強度をぐんと高めたものがHIITです。
HIITの効果とメリット
HIITのメリットとしては、次のものが挙げられます。
短期集中でダイエット効果が出やすい 一般的な有酸素運動の数倍とされる脂肪減少効果をもつ トレーニング後もアフターバーン効果で消費カロリーが高い状態が続く 心肺機能の強化、体力向上、筋力アップなどにも効果が期待できるこのトレーニングの最大のメリットは、短時間で効果が期待できること。
じっくりと長期的なスパンで取り組む継続タイプよりも、すぐに効果を実感したい短期集中タイプの人に最適と言えるでしょう。
なぜ? HIITによって短期間で体脂肪を減らせる理由一般的に言われているのが、激しい運動をした後はエネルギーが消費しやすい状態が作られ、それがダイエット効果につながっているという説。
これは運動後の過剰酸素摂取量(EPOC)と関係しており、身体を元の状態に戻そうと酸素の消費が増え続ける「アフターバーン効果」の影響とされています。
また、このときの消費カロリーは一般的な有酸素運動の6倍とも10倍とも言われており、脂肪の減少や心肺機能の強化、筋力アップ、筋肉量アップにともなう基礎代謝の向上など、さまざまな付加価値も期待できます。
HIITの基本なやり方
『筋トレ⇒有酸素運動⇒休憩』を繰り返す基本的には、時間を決めて以下を繰り返します。
筋トレ↓ 有酸素運動
↓ インターバル(休憩)
↓ 筋トレ
↓ 有酸素運動
↓ インターバル(休憩)
※上記を規定時間まで繰り返す
運動はさまざまなバリエーションで行って構いません。最初は100mダッシュ(ランニング)、次は縄跳び60秒、次はバーピー20回というように、種目を変えても大丈夫です。
HIITのトレーニングメニュー例
2分でできるHIITメニュー 腕立て伏せ(20秒) 両手を肩幅より広く床につき、つま先を立て、一直線になるように姿勢を整える 肘を曲げ、胸が床につくギリギリまで下ろす ゆっくりと体を起き上がらせる
<休憩10秒>
バーピー(20秒) 足を少し開き、しゃがみ込んで両手を地面につける 両足を後ろに伸ばし、すばやく戻すと同時に両手を上げてジャンプする

<休憩10秒>
スクワット(20秒) 足を腰幅に開き、つま先は膝と同じ向きにする お尻を後ろへ突き出すように、股関節から折り曲げる 太ももが床と平行になるまで下ろしたら、ゆっくりと元の姿勢に戻る
膝がつま先よりも前に出ないよう注意
<休憩10秒>
もも上げ(20秒) 両足を、拳ひとつほど空けて開く かかとを少し上げ、右左交互にふとももを持ち上げる。腕も同時に振る
HIITの効果をきちんと出す絶対条件とは
自分を「限界まで追い込む」ことこれだけ聞くとメリットだらけのようですが、そう簡単な話ではありません。このトレーニングにおける最大の難点は、自分を限界まで追い込む必要があるということです。
ダッシュや腕立て伏せのような運動強度の高いエクササイズを何セットも重ねなければならず、途中で手を抜くと効果は半減してします。
自らの意思で自分を追い込むことは、想像以上にかなりの難題です。大抵の方は数セットが終わった段階で無意識に手を抜いてしまい、自分の限界を知る段階までたどり着けずに終わってしまうことでしょう。
「意地でも5㎏痩せる」「これが終わったらぶっ倒れてもいい」という強い意志を持って、最後までやり遂げることが大切です。
HIITの頻度と回数
HIITトレーニングは全力で追い込むことがポイント。正直キツいと思いますので、毎日気軽に行うことは難しいでしょう。疲労も回復せず、怪我のリスクも髙まります。
まずは週に1回を目安に取り組み、慣れてきたら週に2~3回に増やすようにしましょう。
HIITは1回につき何分かかる?
トレーニングメニューによって異なります。3分を全力で行うもの、20分程度のメニューなどさまざまな構成で行うことができます。
4分でできるHIITメニュー ワイドジャンプスクワット(60秒) 肩幅よりも少し大きく、"ハの字"に足を開く そのままジャンプをする。着地時、お尻を深く落とす
<休憩(30秒)>
プランクプッシュアップ(60秒)
<休憩(30秒)>
もも上げ(60秒) 両足を、拳ひとつほど空けて開く かかとを少し上げ、右左交互にふとももを持ち上げる。腕も同時に振る

<休憩10秒>
ワイドジャンプスクワット(20秒) 足を少し開き、しゃがみ込んで両手を地面につける 両足を後ろに伸ばし、すばやく戻すと同時に両手を上げてジャンプする
休憩10秒
膝つき腕立て伏せ(20秒) 両手を肩幅よりも大きめに広げて床につけ、膝をついて足は浮かせる 肘を曲げ、床に胸がつくくらいまで体を下げていく 一瞬キープし、再び体を持ち上げていく
<休憩10秒>
マウンテンクライマー(20秒) 両手を肩の真下につき、腕立て伏せの姿勢をつくる 片膝が胸に引きつけられるように、前方へ曲げていく 蹴って押し上げるようにして、左右の足を入れ替える
休憩10秒
プランク(20秒) 両肘を床につけ、うつ伏せになる 腰を浮かせる 頭、背中全体、腰、かかとが一直線になるように意識する そのまま30秒キープする
休憩10秒
ニークライマー(20秒) 両手を肩幅に広げ、床に置く。両足は後ろへ伸ばしておく 両足を胸側へ引き寄せる 再び両足を後ろへ伸ばす
<休憩10秒>
バイシクルクランチ(20秒) 頭の後ろに手を添えて、自転車を漕ぐイメージで足を動かす アゴが上がり過ぎないように、おへそを覗き込むように顔を上げる 上半身を左右にヒネりながら、肘と膝がつくように、交互に動かしていく
<休憩10秒>
バーピー(20秒) 足を広げた状態からしゃがみ、両手を地面につける 両足を後ろに伸ばし、すばやく戻す 両手を上げてジャンプする
<休憩10秒>
HIITのデメリットとは
HIITには多くのメリットがありますが、非常に負荷の高いトレーニングのため、不適切なやり方や頻度によっては危険性もあります。
HIITのデメリット とにかくキツイ(自分を限界まで追い込むハードさ) 高負荷のため、ケガのリスクが高い 運動の習慣がない人にはおすすめできない(そもそもできない)全力で行うがゆえに、全身に大きな負荷がかかることが挙げられます。体調に不安がある場合、あるいは痛めている箇所がある場合、ダイエットどころか怪我や故障の可能性が高くなるため、避けた方がよいでしょう。
ベストコンディションで行う際も、ケガを防ぐために事前のウォーミングアップ(準備運動)は必須です。
やりすぎるとどうなる?先述した通り、筋肉や関節の怪我の原因になります。また、「オーバートレーニング」という症状にも注意が必要です。
オーバートレーニングとは、トレーニングと休息のバランスが崩れて回復できなくなった慢性疲労状態を指します。
トレーニング効果が低下するだけでなく、日常生活でも体が重く感じる、息切れや食欲低下、手足のしびれ、体重の減少などを引き起こします。また、不眠や不安、集中力低下などの精神的な症状が現れることも。
真面目でストイックなトレーニーやアスリートが陥りやすい症状ですが、超回復の理論に基づき、適切な休養時間を挟むようにしましょう。
HIITは筋肉が落ちる?HIITを行うと、筋肉が落ちるという説も囁かれています。これは、有酸素運動を行うと筋肉が分解されるという話から来ているものと思われます。
たしかに、エネルギー不足の状態で有酸素運動を行うと、筋肉を分解してエネルギーを確保するため、結果として筋肉量の減少が起こりやすくなります。
これを防ぐには、運動時にプロテイン、BCAAを摂取してエネルギーの枯渇を防ぐとよいでしょう。
HIIT後に意識したい食事のポイント
運動後はタンパク質と糖質を補給しようトレーニングと同じくらい、トレーニング後の栄養補給も大切です。
HIITも他トレーニングと同様に、運動後はタンパク質と糖質を補給するようにし、その後はビタミンミネラルを含めた栄養バランスのよい食事を摂ることが大切です。
食事例糖質(お米、バナナ、オートミールなど)+たんぱく質(肉や魚、たまご、大豆・大豆食品など)
空腹のまま筋トレすると筋肉の分解が進む!日本体育大学体育研究所助教授の鴻﨑香里奈さんによると、「空腹時の筋トレは、食事を摂っていた場合よりも筋のタンパク質の分解が進むため、筋肥大には空腹を避けた筋トレが有効と考えられます」と回答しています(筋トレ効果が大きい時間帯はいつ?朝・夕方・夜のどれ?食事の前と後では?専門家に聞いてみた より)。
プロテインや小さいおにぎり、バナナ、ゼリータイプの糖質など、満腹にならない程度の軽い食事を摂った後に行うとよいでしょう。

基本的には、筋トレは食後2~3時間ほど経過したタイミングに行うのがよいとのことです。
<Edit:編集部/Photo:編集部>