―連載「沼の話を聞いてみた」―
シングルマザーのMさんは、良くも悪くも何かを引き寄せているようだ。身の上話では、強烈なエピソードが連発される。聞いていると、何かを思い出させる……。
と思ったら、まったく同じ出来事があるわけではないのだが、漫画家・沖田×華氏の『毎日やらかしています』シリーズ(ぶんか社)という作品だった。発達障害の特性から来る周囲とのトラブルやドタバタを描く実話ベースのコミックエッセイで、Mさんの日常もかなり近いように感じられる(何となく雰囲気が伝わるだろうか)。
Mさんにはじめて取材したときに聞いたエピソードだけでも、これだけの出来事がある。
・高校時代、英会話教室で某新興宗教に勧誘され、入信する(その後脱会)。
・通院していた歯医者の受付女性が過激自然派。マミさんがコンビニで菓子を買っていたところたまたま出くわし、治療とは関係の薄い食生活について、激しくお説教をくらう。
・配偶者からのDVで離婚。
・ストーカーから逃げるために上京。
・職場をクビになり「風俗くらいしか勤まらない」と言われたのを真に受け、性産業へ。年齢的に人妻枠だったが、本人曰く「落ち着きのなさ」からか、性サービスのオファーはなく(客にチェンジされてしまう)「鼻くそをほじっていてほしい」などの特殊需要専門になる。
・近所の外国人に気に入られ、毎日バナナひと房を貢がれる。
・友人の見合い相手である神職から、「ふたりの仲が進展しないのはお前がキツネ遣いで呪いをかけているからだ」と罵倒される。
・アーユルヴェーダを習いに行ったら、講師がマルチ商法として有名なアロマのディストリビューター(卸売り業者)だった。座学的なものは行われず、ひたすらアロマを消費するマッサージの練習ばかりでリタイアする。
などなど……。特に性風俗を勧めた元職場の言葉はハラスメントかつ職業蔑視であり言語道断だが、トラブルが続くストレスで思考停止していたという。
「ずっとそんな感じだったので、ネタにしてしまおうとずっとブログを書いていたんですよ。そうしているうちに、子どもが保育園から発達障害の可能性があると指摘されます。それまで発達障害についての知識がまったくなかったので驚きましたが、検査を受けてみると親子で診断がおりました。
そのときは、すごくホッとしましたね。いままでのトラブルや困っていたことは、性格の悪さや努力不足じゃないことがわかったので。
その話もまた、ブログに書きました。すると、投稿を読んだという方からメッセージが来たんです」
それが今回の「沼の話」につながっていく。
シングルマザーのMさんは、良くも悪くも何かを引き寄せているようだ。身の上話では、強烈なエピソードが連発される。聞いていると、何かを思い出させる……。
と思ったら、まったく同じ出来事があるわけではないのだが、漫画家・沖田×華氏の『毎日やらかしています』シリーズ(ぶんか社)という作品だった。発達障害の特性から来る周囲とのトラブルやドタバタを描く実話ベースのコミックエッセイで、Mさんの日常もかなり近いように感じられる(何となく雰囲気が伝わるだろうか)。
Mさんにはじめて取材したときに聞いたエピソードだけでも、これだけの出来事がある。
・高校時代、英会話教室で某新興宗教に勧誘され、入信する(その後脱会)。
・通院していた歯医者の受付女性が過激自然派。マミさんがコンビニで菓子を買っていたところたまたま出くわし、治療とは関係の薄い食生活について、激しくお説教をくらう。
・配偶者からのDVで離婚。
・ストーカーから逃げるために上京。
・職場をクビになり「風俗くらいしか勤まらない」と言われたのを真に受け、性産業へ。年齢的に人妻枠だったが、本人曰く「落ち着きのなさ」からか、性サービスのオファーはなく(客にチェンジされてしまう)「鼻くそをほじっていてほしい」などの特殊需要専門になる。
まだまだつづく驚きのトラブル
・近所の外国人に気に入られ、毎日バナナひと房を貢がれる。
・友人の見合い相手である神職から、「ふたりの仲が進展しないのはお前がキツネ遣いで呪いをかけているからだ」と罵倒される。
・アーユルヴェーダを習いに行ったら、講師がマルチ商法として有名なアロマのディストリビューター(卸売り業者)だった。座学的なものは行われず、ひたすらアロマを消費するマッサージの練習ばかりでリタイアする。
などなど……。特に性風俗を勧めた元職場の言葉はハラスメントかつ職業蔑視であり言語道断だが、トラブルが続くストレスで思考停止していたという。
生きづらさと「沼」は背中合わせ
「ずっとそんな感じだったので、ネタにしてしまおうとずっとブログを書いていたんですよ。そうしているうちに、子どもが保育園から発達障害の可能性があると指摘されます。それまで発達障害についての知識がまったくなかったので驚きましたが、検査を受けてみると親子で診断がおりました。
そのときは、すごくホッとしましたね。いままでのトラブルや困っていたことは、性格の悪さや努力不足じゃないことがわかったので。
その話もまた、ブログに書きました。すると、投稿を読んだという方からメッセージが来たんです」
それが今回の「沼の話」につながっていく。
メッセージを送ってきたのは、ある自己啓発系セラピー協会の認定講師「ミランダ小林」(仮名)さん。Mさんと同じく、発達障害の子どもを持つ母親だという。同じ悩みを抱える同士でつながれるのは、とても心強い。
さらに彼女も同じサービスを利用してブログを書いていたことから、活動内容や人柄も知ることができた(表向きのものだとしても)。それはとても個性的な内容で、魅力を感じたMさん。

「ブログのコメント欄やDMで交流が続くうちに、一度スカイプでお話しませんか、となったんです。彼女が講師として広めているセラピーも、ワンコインで体験させてくれることになって。そのセラピーは潜在能力を開花させ、心を抑圧から開放することで、現実世界の問題を解決していくという、自己啓発のようなものでした」
一般に、悩みやトラブルを不特定多数に公開するのはリスクがある。弱点をさらけだすようなもので、懐へ入り込まれるからだ。そしてよからぬビジネスのターゲットになる場合もあるだろう(しかしその一方で助けを求めることも大事なので、むずかしいところではあるが)。
Mさんの場合は、常に生きづらさがつきまとい、実際に困りごとを多数抱えていることを公開しているので、「一緒に悩み・解決できる」という姿勢で時間をかけて近づけば、勧誘はたやすかったのかもしれない。
筆者の友人は「金に困っているアピールをすると、情報商材やネットワークビジネスをやっている、これまた金に困っている人が集まってくる不思議」なんて言っていたが、相通じるものを感じる。
「頼れる人もなく子連れで上京。そんななか親身になって心配してメッセージをくれたり、ブログで頻繁(ひんぱん)に私のことを取り上げたりしてくれるんですよね。そしてスカイプでセラピーを体験して以降は、まだ本講座を受けると決めたわけでもないのに、受講前提みたいな話をされていく。『あの!Mちゃんが!いよいよ!』『きっとすばらしい認定講師になれる!』なんて、煽られたり。
そうしているうちに、そのセラピーを身につけたいというよりは、親身になってくれるから恩返ししたい気持ちがわいてしまった。ブログでもさんざん紹介されて、引っ込みがつかなくなったのもあります」
弱みを相手に知らせるリスク
さらに彼女も同じサービスを利用してブログを書いていたことから、活動内容や人柄も知ることができた(表向きのものだとしても)。それはとても個性的な内容で、魅力を感じたMさん。

「ブログのコメント欄やDMで交流が続くうちに、一度スカイプでお話しませんか、となったんです。彼女が講師として広めているセラピーも、ワンコインで体験させてくれることになって。そのセラピーは潜在能力を開花させ、心を抑圧から開放することで、現実世界の問題を解決していくという、自己啓発のようなものでした」
一般に、悩みやトラブルを不特定多数に公開するのはリスクがある。弱点をさらけだすようなもので、懐へ入り込まれるからだ。そしてよからぬビジネスのターゲットになる場合もあるだろう(しかしその一方で助けを求めることも大事なので、むずかしいところではあるが)。
じょじょに詰め寄ってくる認定講師
Mさんの場合は、常に生きづらさがつきまとい、実際に困りごとを多数抱えていることを公開しているので、「一緒に悩み・解決できる」という姿勢で時間をかけて近づけば、勧誘はたやすかったのかもしれない。
筆者の友人は「金に困っているアピールをすると、情報商材やネットワークビジネスをやっている、これまた金に困っている人が集まってくる不思議」なんて言っていたが、相通じるものを感じる。
「頼れる人もなく子連れで上京。そんななか親身になって心配してメッセージをくれたり、ブログで頻繁(ひんぱん)に私のことを取り上げたりしてくれるんですよね。そしてスカイプでセラピーを体験して以降は、まだ本講座を受けると決めたわけでもないのに、受講前提みたいな話をされていく。『あの!Mちゃんが!いよいよ!』『きっとすばらしい認定講師になれる!』なんて、煽られたり。
そうしているうちに、そのセラピーを身につけたいというよりは、親身になってくれるから恩返ししたい気持ちがわいてしまった。ブログでもさんざん紹介されて、引っ込みがつかなくなったのもあります」
ミランダ小林なる講師が純粋にMさんを大のお気に入りとしていたのか、盛り上げて講座に引き込む営業の手口なのか、第三者にはわからない。しかしその後の対応を聞くと、やはり後者なのかなという気がする。個人的な印象を述べれば、Mさんはユニークで社交的、かつ華やかな雰囲気も備えているので恰好(かっこう)の広告塔になったのではないだろうか。
うまく行かない日々から抜け出したい
小林が主催するセラピー講座は、参加者が全員女性だった。受講料は当時で約16万円。講師を名乗って活動できる「認定講師養成講座」に進むと、約30万円。参加者の多くはその資格で仕事をしていこうというよりは「自分を変えたい」という目的の人が多かったという。

シングルマザーであるMさんにとってもなかなか痛い出費だったが、日々何をやってもうまくいかないと悩み、生きづらさを解消できるならと財布を開いた。
そして、セミナーを渡り歩く旅へ…
「みんなで『環境や周りのせいにせず、自分を変えていこう』という目的に向けてがんばっていました。ところがです。はじめに声をかけてくれたミランダ小林さんをはじめ、認定講師となった仲間たちが、ほかのスピリチュアルや自己啓発に次々手を出していくんですよね」
俗に言う「セミナージプシー」である。セラピー講師たちが我先にという勢いで、さまざまな物件に手を出していくという沼だった。
<文/山田ノジル>
山田ノジル
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
(エディタ(Editor):dutyadmin)
