短時間で命を落とすケースも…危険な「一酸化炭素中毒」は日常のどんなシーンで注意すべ

時刻(time):2023-05-02 20:26源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
火災時だけでなく、日常的な環境でも起こりうる一酸化炭素中毒 一酸化炭素中毒は、一酸化炭素の濃度やそれを吸い続けた時間によっては命を落とすこともある危険なものです。一酸化炭素の毒性と、濃度によって起こる症状、一酸化炭素中毒になってしまった場合の治療法、予防法について、わかりやすく解説します。 一酸化炭素とは…二酸化炭素より不安定で酸素と結

火災時だけでなく、日常的な環境でも起こりうる一酸化炭素中毒

一酸化炭素中毒は、一酸化炭素の濃度やそれを吸い続けた時間によっては命を落とすこともある危険なものです。一酸化炭素の毒性と、濃度によって起こる症状、一酸化炭素中毒になってしまった場合の治療法、予防法について、わかりやすく解説します。

一酸化炭素とは…二酸化炭素より不安定で酸素と結合しやすい気体

一酸化炭素とは、炭素と酸素が1つずつ結合した気体で、化学式ではCOと表記します。分子の重さにあたる分子量が28.01g/molと、28.8g/molの空気よりわずかに軽く、無色・無臭で燃える気体です。燃えることで酸素と結合して、二酸化炭素になります。

一酸化炭素は二酸化炭素より不安定で、酸素と結合しやすい性質があり、体にとって有害なガスになりやすいのです。

一酸化炭素の毒性…体内の赤血球と結合し、体を酸素不足にする

私たちの体の中では、赤血球が全身に酸素を運んでいます。赤血球には酸素を運ぶためのタンパク質であるヘモグロビンが含まれています。一酸化炭素は、酸素より250倍もヘモグロビンに結合しやすいため、酸素とヘモグロビンとの結合を阻害して、一酸化炭素ヘモグロビンになります。

そのため赤血球は、酸素を全身に運ぶことができなくなってしまい、全身の組織では酸素不足になってしまうわけです。

一酸化炭素中毒の原因…ガスストーブ、排気ガス、ガス湯沸かし器なども

天然ガスなどの燃料用ガス、ガソリンなどの石油、炭、練炭などには炭素が含まれており、完全に燃焼することで二酸化炭素が発生します。しかし、不完全燃焼の場合は一酸化炭素が発生します。

身近な発生源としては、 窓を閉め切った状態での石油やガスストーブ、 自動車の排気ガス、ガス焚きのお風呂、ガス湯沸かし器やガスレンジの燃焼などが挙げられます。

さらに、火事発生時や炭鉱事故などでも、大量の一酸化炭素が発生します。

一酸化炭素が多い環境下で起こること…短時間で死亡するケースも

一酸化炭素が300ppm以下では軽度の頭痛程度で済みますが、400ppm以上で数時間にわたって曝露されると心臓への負担や呼吸困難が出始め、1000ppmを超えるとかなり重症な症状が出てきます。5000ppmでは5分で死に至ります。

濃度が数字より低くても、症状が現れる可能性もあります。

一酸化炭素中毒の症状・濃度による症状の変化

上記のように空気中の一酸化炭素の量に応じて症状は変わってきます。ヘモグロビンに一酸化炭素がどれだけ結合しているかで、症状の程度がわかります。結合の割合はCOHb濃度と呼び、%で示します。COHb濃度と症状を以下に示します。

・0~10%……無症状

・10~20%……軽い頭痛、皮膚の血管が拡張して肌が赤い

・20~30%……頭痛、倦怠感

・30~40%……激しい頭痛、力が入らない脱力、めまい、視力低下、吐き気、嘔吐

・40~50%……体の虚脱、過呼吸、脈拍数が多くなる頻脈

・50~60%……失神、Cheyne-Stokes呼吸(小さい呼吸から、徐々に一回の呼吸する量が増えて、大きな呼吸となったあと、次第に呼吸が小さくなり、一時的に呼吸停止となる、という周期で繰り返します。この周期は30秒から2分程度で繰り返されます)

・60~70%……昏睡、心臓拍動が弱くなり、死の危険性が高くなります

・70~80%……血圧の低下、呼吸ができない呼吸不全、死に至ります

心臓の筋肉のダメージがあれば、不整脈も起こします。肝臓や腎臓への機能が低下し、全身の筋肉もダメージを受けます。 さらに、間欠型一酸化炭素中毒と言って、意識が回復してから数日後に、物事を理解する見当識の障害、意識とは異なる動きをするなどの神経症状が出てきます。

一酸化炭素中毒の検査方法

COオキシメーターという機械で血液中の一酸化炭素中毒に結合したヘモグロビン(COHb)の濃度を測定します。COオキシメーターは、新型コロナで注目されたパルスオキシメータ―(酸素飽和度を見るO2オキシメータ)とは別の医療機器です。

低酸素による組織のダメージがあれば、組織からの酵素が血液中で高くなります。

一酸化炭素中毒の治療法

中毒の基本は、中毒物質をできるだけ早く体から出すことです。一酸化炭素中毒の状態では、体内の組織は低酸素状態になっているため、一刻も早い処置で、体内の一酸化炭素を除かなくてはなりません。

まずは、不完全燃焼が起きていて一酸化炭素が発生している場所から移動することが重要です。軽症であれば、新鮮な空気の下で安静に保ちましょう。不必要に動くと、組織が酸素を消費してしまいますので、安全な場所で安静にしてください。

COHb濃度が10~20%の中等症なら、100%酸素を吸入させる必要があります。

COHb濃度が20%以上の重症であれば、高圧タンクによる高圧酸素治療が必要になります。通常は大気圧の2倍の2気圧で1時間、酸素のあるタンクに入ります。治療は1回だけでなく、1日1~2回で数日繰り返すこともあります。高圧タンクが無い場合は、気管内挿管で、100%酸素を人工呼吸器で送り込みます。

一酸化炭素中毒の予防法…身近な機器の安全な使用と十分な換気

身近な場所で起こりうる一酸化炭素中毒の予防法としては、暖房器具を使う時は不完全燃焼に注意して、換気を十分にすることです。また火事の場合は、速やかに避難することが大切です。

清益 功浩プロフィール

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。


執筆者:清益 功浩(医師)
(エディタ(Editor):dutyadmin)
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