バーベルやダンベルなどを使った高重量スクワットを行おうとすると、姿勢が不安定になってうまく動作できないという人はいないでしょうか。姿勢が崩れる、体がぐらつく原因は、脚の筋力不足だけではないかもしれません。
ここではスクワットの重量を増やすために必要不可欠な、「腹圧」のメリットや鍛え方について学んでみましょう。
腹圧とは
腹圧とは、腹筋と横隔膜の収縮によって起こる腹腔の内圧のこと。
内臓が納まっている部分を腹腔と呼びますが、腹腔のまわりには横隔膜や腹横筋、骨盤底筋群などさまざまな筋肉があり、それらによって覆われています。それらが同時に収縮することによって腹腔の圧力が高まることを「腹圧」と呼びます。
腹圧は、咳などの強制呼気や排尿や排便、腰椎の安定などの働きを持っています。
なぜ高重量スクワットに腹圧が必要なのか
なぜスクワットなどで高重量を扱う際に、腹圧が必要なのでしょうか。
腹圧を高めることによって体幹部が安定し、力をうまく伝達させることができるようになります。その結果、大きい力を発揮することができるようになるほか、腰部への負担を減らすことができます。
腹圧が重要な種目はスクワットだけではありません。デッドリフトやランジなど下半身のエクササイズのほか、ショルダープレスなどの上半身のエクササイズ、ハイクリーンやスナッチなどのオリンピックリフティングにも必要です。
また、高重量になればなるほど、腹圧が挙上重量を大きく左右します。
腹圧を高めるエクササイズ
腹圧を高めるにはどうしたらよいのか。そのためには、腹腔のまわりにある筋肉を鍛える必要があります。その主な筋肉が、腹筋のインナーマッスルである「腹横筋」です。

ここでは、腹横筋を刺激するエクササイズを紹介します。
ドローイング腹横筋を鍛える有名なエクササイズがドローインです。お腹をへこませる動作を行うことで、腹横筋を刺激します。
ドローインで腹横筋を刺激すると日常時での腹圧を高めることにもつながり、姿勢の安定や腰部の負担を減らすことができます。
ブレイシングドローインとは逆に、お腹を膨らませる動作で腹横筋を刺激します。
実際にウエイトトレーニングやスポーツ競技で力を瞬間的に発揮するときに、お腹にグッと力を入れて腹筋を固くする。これがブレイシングです。
ブレイシングを意識しながら、プランクなどの体幹トレーニングを行うとさらに効果的です。
関連記事:体幹トレーニング「プランク」の効果とやり方。初心者はまず30秒から!
腹圧を高める方法
腹圧を高めるエクササイズを取り入れるとともに、高重量でエクササイズを行う際は腹圧を高めた状態にするため、さまざまな方法を行いましょう。
リフティングベルト(パワーベルト)を使う腰に痛みがある、以前に腰を痛めた経験がある人は、リフティングベルトを活用しましょう。ベルトを使用することで、腹筋を収縮させたとき以上の腹圧を作り出すことができます。

リフティングベルトは、ただお腹に巻くのではなく、お腹を目一杯に凹ませた状態で巻きましょう。そうすることによって、力を入れた際にお腹が膨れた力とベルトの圧で腹圧を高めます。ベルトが緩い状態では、腹圧が高まらないのです。
また、高重量を扱う場合は、腰の痛みがない人でもベルトをした方が安全で大きな力を発揮できます。
関連記事:マッチョが筋トレ中に巻く「腰ベルト(パワーベルト)」の効果とは
動作中のドローインはNG腹圧を高めるエクササイズとして、ドローインを紹介しました。しかし、ドローインをしながらスクワットやデッドリフトを行うことはオススメできません。
ドローインでは大きな力を発揮できないだけでなく、ケガのリスクが高まります。ブレイシングのように、お腹に力を入れて動作するようにしてください。
ドローインはあくまで、腹横筋を刺激するためのエクササイズとして活用しましょう。
低回数なら、呼吸を止めてもよいトレーニング時は呼吸を止めないことが前提です。力を発揮するときに息を吐き、力を緩めていくときに息を吸う。このことは、多くの方がご存じでしょう。
しかし最大に力を発揮するときは、息を止めてしまうことがあるのではないでしょうか。実は、これは「バルサルバ法」という呼吸法です。
バルサルバ法は、息を止めていきむことで大きな力を発揮するという呼吸法です。もっとも負荷が掛かるポイントで息を止めて力を入れることにより、呼吸をしているときよりも腹圧が高まります。1RMなど、MAXに近い重量を扱うときに使いましょう。
ただしバルサルバ法は、呼吸を止めることで血圧が急上昇します。普段から血圧が高い人は、バルサルバ法を使わず、できるだけ呼吸するように意識しましょう。
関連記事:スクワット効果を高める「呼吸のタイミング」とは。いつ吸って、いつ吐くか【筋トレ】
腹圧が高いと怪我や故障も防ぐ
それほど高重量を扱わないからといって、腹圧が必要ない訳ではありません。腹圧が高ければ腰部にかかる負担が減り、腰痛などの予防・改善につながります。
また、腹筋まわりのエクササイズ、高重量を扱うエクササイズでも腹圧を鍛えることは可能です。ぜひ、腹圧の強化に取り組んでみてください。

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[筆者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師のほか、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、さまざまなメディアで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会(JATI-ATI)の認定トレーニング指導者
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<Text:和田拓巳/Photo:三河賢文>