一日に約2.5リットル…汗をかかない冬でも失われる体の水分
私たちのからだは一日に約2.5リットルもの水分を失っています。汗をかきにくい冬の時期はさほど水分を失っていないようにも思えますが、汗や排尿など目に見える水分以外にも、皮膚や粘膜、あるいは呼気など目に見えないところから水分が失われる「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」というものがあります。
不感蒸泄の量は、およそ一日に約900ml程度ですが、気温が低く、空気の乾燥した冬の環境では不感蒸泄によって失われる水分量が増えると言われています。
冬の環境では汗をかきにくい、喉の渇きを感じにくいといったことから、水分を失っているという自覚がないまま過ごしてしまいがちです。ついつい水分補給がおろそかになってしまうだけではなく、水分をとると体が冷えてトイレが近くなるからあえて水分をとらない、といった人もいます。
それに加えて気温の低下によって暖房器具を使用すると、空気はさらに乾燥して不感蒸泄が増えてしまうと考えられます。知らない間に体の水分が失われ、適切な水分補給ができていないと「かくれ脱水」を起こして、さまざまな体調不良を引き起こすことにもつながります。
一日の水分補給量の目安は「1.5リットル」…こまめに飲むのがポイント
脱水を予防するためには失われた水分量を補給することが大切です。一日に失われる約2.5リットルの水分を食事や飲み物などから補うようにしましょう。このうち飲み物では一日約1.5リットルを目安として「こまめに」水分補給を行うことが大切です。脱水を予防する水分補給のタイミングを確認しておきましょう。
・就寝前……就寝中は水分を失うばかりで補給することができません。寝る前にコップ1杯程度の水分補給を行いましょう。
・起床時……就寝中に失われた水分を補給します。
・入浴前後……入浴時には汗とともに多量の水分が失われます。入浴前、入浴後とこまめに水分を補給しましょう。
・運動前後……運動時には体温が高まり、発汗することで体温調節を行っています。運動前、運動後はもちろん、運動中にもこまめに水分を補給しましょう。
飲み物の中ではカフェインを含むもの、お酒、ビールなどのアルコール飲料などは利尿作用が働くため、脱水予防のための水分補給には適していません。このような嗜好品をのぞく飲み物で、一日約1.5リットル程度を摂取するようにしましょう。
うっかり脱水を防ぐために…実践しやすい水分補給のコツ
飲み物で補給する水分は一日約1.5リットルを目安としますが、これをコップ1杯(200ml程度)に換算すると、7~8杯程度を飲むことになります。水分補給が必要なタイミング(就寝前、起床後、入浴前後など)の他にも、食事のタイミングにあわせて三食ごとにコップ1杯の水分を飲むようにすると、これだけで一日コップ7杯分の水分を補給することができます。
この他にも外出先から帰宅したとき、デスクワークや勉強などで休憩を取るときなどにも水分を補給するようにすると、体に必要な水分量を確保することができるでしょう。
この他にも500mlのペットボトルを3本準備する、もしくは3回飲むといったことでもわかりやすいですし、最近ではメモリと時間が記された水筒やボトル、水分補給をサポートするアプリなどさまざまな便利グッズも登場しています。
冬の乾燥した時期は、熱中症対策を強く意識する夏と比べるとついつい水分補給のことを忘れてしまいがちです。失われた水分によって脱水を起こさないためにもこまめな水分補給、「コップ1杯の水」を繰り返し補給することを心がけましょう。
20年以上に渡り、スポーツ現場でのトレーナー活動に従事する日本体育協会公認アスレティックトレーナー。NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト。選手へのトレーナー活動だけでなく、幅広い年齢層を対象としたストレッチ講習会やトレーニング指導経験も豊富。スポーツ傷害予防や応急処置などの教育啓蒙活動も行い、毎日の健康づくりに役立つ運動に関する情報発信を精力的に行っている。
執筆者:西村 典子(アスレティックトレーナー)