このところ、飲食店における「迷惑行為」が物議を醸している。
イタズラ動画をインターネット上にUPして面白がっている人が悪いのは当然として、こういった行為がなぜ“回転寿司店”に集中しているのか、今後の回転寿司業界はどうなるのか探っていきたいと思う。
回転寿司ならではのビジネスモデルが起因か
まず、筆者が回転寿司店に足を運んで感じているのは、極端に従業員との接触が減っている、ということ。それこそ入店から退店まで一度も従業員と接触することがない店舗も増えてきている。コロナ禍での取り組みとして大きく評価を得ていたことではあるものの、それが今回の事件の要因のひとつではないかと思う。
回転寿司のビジネスモデルでは、安価に寿司を提供する最後の切り札が「人件費の削減」である。人を増やし監視の目を厳しくすればこういった行為の抑制につながるとは思うが、それでは値上げをせざるを得ない。機械化によって「食の安心・安全」が脅かされることになるとは考えていなかったのかもしれない。
ただ、いまのシステムで「食の安心・安全」が守れないのだとしたら、企業としては対策を打ち出す必要がある。迷惑行為をする客が悪いとしても、何もしなければ今回の件で回転寿司に行くのをやめてしまった人々が戻ってくることはないからだ。
スシローでは被害を受けて、当該店舗と近隣店舗において、調味料、箸など従来テーブルに置いてあった物が一カ所に集められ、客がそれぞれ席に持っていく方式を採用。また、客席とレーンの間にアクリル板を設置し、迷惑行為が発生しにくい状況を作るとを発表した(※1)。
迅速な取り組みとして評価をすると共に、今後どのような形で全店に普及させていくのか注視したい。
実際にイタズラ対策をしている回転寿司店もある
ちなみに、実際にレーンにイタズラができないように対策を取っている回転寿司店もある。

「流れ鮨」というシステムをとっている店では、厨房で作られた商品が透明なトンネル状の筒の中を通って客席まで運ばれる。その間、商品は完全に外部から遮断されており、誰も触ることができない。

アメリカ・カリフォルニア州など食品衛生管理が厳しい地域では、トンネルの中にレーンがあり、寿司が空気に触れないようになっている。
また、今回スシローがレーンと客席の間にアクリル板を設置したのと同様に、オーダー専用レーンを通過中の商品が触られないように客席とレーンの間に隙間なく仕切りを設けている店もある。注文した商品は自動に開閉する扉から提供されるので、万が一にもイタズラされる心配はない。
このように、一部の回転寿司店ではシステムによって迷惑行為が発生しない環境がすでにでき上がってはいるのだが、もちろんこれらを導入するには莫大な費用がかかってしまう。特に大手回転寿司チェーン店は全国に500、600店舗もあるため、すぐに全店導入というわけにはいかないところが、各社頭が痛いところだろう。
ただでさえ、業界全体が値上げや不祥事の影響が後を引き、客数減に苦しんでいる状況にある中、さらなる値上げで費用を捻出するといったことだけは選べない。
飲食業界では「食の安心・安全」を第一義に掲げる企業が多いが、それを守るための努力も企業の評価につながる。回転寿司のように薄利多売の業態においては、設備投資のしわ寄せがダイレクトに客に来ることは多い。つまり、被害は我々一般客にまで及ぶことになるだろう。
かっぱ寿司では従業員の巡回強化や迷惑行為に対する注意喚起、防犯カメラの活用、寿司カバーの導入などを検討しているという(※2・3)が、全企業がどういった対策をいつ実施するのか、その取り組みいかんで業界の勢力図がガラリと変わってしまうかもしれない。
そこにどれだけのコストをかけ、どれだけの時間と労力を割くのか。ここなら安心して回転寿司を楽しめると、消費者に一番浸透した企業が一年後に業界トップに君臨している可能性は高いと思っている。
これからの回転寿司はどうなるのか?
では今後、回転寿司業界はどうなっていくのだろう?
今回の「迷惑行為」騒動で、注文商品のみをレーンに流すと発表したスシロー(※4)や、現在オーダー専用レーンしかない「回らない回転寿司」を標榜する魚べい、またこのシステムの全店導入を目指すはま寿司など、「回す店」と「回さない店」に二分されるだろう。どちらもそれぞれ良いところがあり、どちらのスタイルも存続していくことと思う。
「回さない店」では注文レーンを流れてくる寿司にイタズラができない仕組みを構築すること、「回す店」ではくら寿司が採用している抗菌寿司カバーの導入や監視の強化などアナログな取り組みが必要になるかもしれない。

グルメ回転寿司といわれる、レーンの中に寿司職人がいて握りたての寿司を提供する業態では、常に職人をはじめとした従業員の目が光っているため、今回のようなことは起きにくい環境にある。
機械化を推進する店は機械の力で、マンパワーを推進する店は人の力で問題解決をすることが求められるだろう。
テーブルからは調味料や食器がなくなる?
回転寿司は装置産業としての側面があり、これまでもさまざまな課題を機械の力をもって解決してきた歴史がある。
例えば、タッチパネルやオーダー専用レーンは、客のクレームのトップ3である、「注文品が来ない」「注文品が届くのが遅い」「注文品が間違っている」というクレームを解決するために開発された。このシステムをいち早く導入したかっぱ寿司は一気に業界のトップへと駆け上り、大手回転寿司チェーンの全盛期を牽引した。
ある意味、客のクレームや各種不都合を解決することで進化をしてきた回転寿司業界にとっては、今回も機械やアイデアによって解決するのはそれほど難しくはないと思っている。
ただし、飲食業界全体の問題として卓上の調味料や食器類をどうするかという問題は残る。先述の通りスシローは簡易的な措置として、それらを一カ所に集めて客がそれぞれ持っていく方式を打ち出したが、これも一案。
昔は上下2段のレーンがあり、上には寿司が下には湯呑みだけが回っている、なんてレーンが流行った時代もあった。客が来店するたびに箸や食器を従業員が持って行けば問題ないが、その人手をかけられないのが回転寿司の泣きどころ。合理化により人件費を抑えることは命題として、客に協力を求めても良いかもしれない。
例えば、マイ箸やコップを持参する人には特典がつくなど、両者がWinーWinの関係になれるやり方もありだと思う。
苦境が続く業界には痛手であった今回の事件だが、きっちりと乗り越えて新しい回転寿司のあり方を提示できるチャンスと捉えることもできる。「さすが回転寿司!」と感心される施策が各社より発表されるのを期待したい。
参考
※1:あきんどスシロー「SNSで拡散されたスシロー店舗での迷惑行為に関するお知らせ」
※2:時事ドットコムニュース 2023年2月4日
※3:読売新聞オンライン 2023年2月6日
※4:あきんどスシロー「店舗運営方法の一時変更について」
幼少時から回転寿司の魅力にとりつかれ、2007年にはTVチャンピオン2『回転寿司通選手権』チャンピオンとなる。回転寿司のスポークスマンとしてテレビや雑誌等で精力的に発信するほか、回転寿司店のコンサルティングなど幅広く活躍している。All About 寿司ガイド。
執筆者:米川 伸生(回転寿司評論家)