「普通を目指すつもりが、完璧を目指すように…」虐待連鎖の当事者が子育てに悩む人に伝

時刻(time):2023-01-05 15:04源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
イラストレーターで漫画家のあらいぴろよさんの最新作『母が「女」とわかったら、虐待連鎖ようやく抜けた』では、幼い頃から自分を虐待した父が亡くなった後、フラッシュバックに苦しみながら子育てをする様子が描かれます。 そしてあらいさんは、子どもの頃の記憶を振り返るうちに、今まで「父から子どもたちを懸命に守ってくれていた」と思っていた母に対して
 イラストレーターで漫画家のあらいぴろよさんの最新作『母が「女」とわかったら、虐待連鎖ようやく抜けた』では、幼い頃から自分を虐待した父が亡くなった後、フラッシュバックに苦しみながら子育てをする様子が描かれます。

 そしてあらいさんは、子どもの頃の記憶を振り返るうちに、今まで「父から子どもたちを懸命に守ってくれていた」と思っていた母に対して数々の疑念を感じるようになります。

「なぜ母は一度離婚したのに、父の元へ子どもたちを連れ戻ったのか?」「もしかして、父の性的虐待に気づいていたの?」そんな疑問と対峙しながら、あらいさんは過去の出来事や、自身の子育ての課題に対して向き合っていきます。

 本記事では3話を紹介。後半では作者のあらいさんに、「母が女だった」ことに気づいてからの変化や、虐待の記憶を抱えながら子育てをする人たちへのメッセージなどを聞きました。

【前編はこちら】⇒「虐待を受けた記憶がよみがえるのは、我が子に優しくしているとき」“連鎖”を断ち切れたワケを作者に聞いた<漫画>

【中編はこちら】⇒「0歳の我が子に手を振り上げてしまった… 」自らも虐待を受けて育った作者を取材<漫画>

【先に読む】⇒あらいぴろよさんのインタビューはコチラ

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母に対する今の気持ち


ーーあらいさんは、お母さんへの見方が変わってからどう接していますか?

あらいぴろよさん(以下、あらい):以前は母から手紙が届くと「もしかして今度こそ私の気持ちを分かってくれたかも…」と読みたくなってしまうことがありました。今は郵便物の受け取りを拒絶して、母と距離をとっています。でも宅急便は届くので、息子に対して送ってくれたものは、私の気持ちは抜きにして受け取るようにしています。

ーーお母さんとの関係を完全に断つことは考えていないのでしょうか?

あらい:私が懸念しているのは、息子が母に会いたがるのかどうかなんです。今はコロナ禍なので会いに行かない理由を説明せずに済んでいるのですが、今後子どもにどう話そうか考えています。私が過去のことを子どもに話してしまうのは「違うんじゃないかな」と思っていて、これは母と私の問題ですから、子どもを巻き込まないようにしたいんです。まだ答えは出ていないのですが、夫とこれからよく話し合っていきたいです。

 私自身の中には母の居場所はもうなくて、惑わされることはないと断言できるので、こうした視点を持てるようになったと思います。

ーー息子さんには、今のところお母さんのことをどう伝えられているのでしょうか?

あらい:私から積極的に話すことはありませんが、息子には、「おばあちゃんは息子のことが大好きだよ」と伝えています。私が「母は私のことが嫌いだから息子のことも好きじゃないだろう」と勝手に決めつけることも、祖母を嫌いになるような情報を与えることもよくないかなと思っています。

ーー現在は、お母さんに対してどんな思いがありますか?

あらい:「不幸になってほしい」とは思いません。以前は母の身勝手な言動でも、それを向けられると「母が私を見てくれる」と勘違いしていました。母に絡まれているだけなのに、つい愛情を期待してしまっている自分がいたし、母に対して「苦労して育ててくれた」という罪悪感もありました。

 でも今はそれが払拭されたので、私に構わないでいてくれるためにも母には幸せでいてほしいです(笑)。






子育てに起きた変化


ーーあらいさんがお母さんとの関係の問題に気づいてから、意識的に息子さんとの接し方を変えた部分はありますか?

あらい:「私がこの子を幸せにしてあげよう」とか、「守ってあげている」と思うのをやめました。それは私が子どもに感謝されたくて、自分のためにしていることであって、私に対する子どもの評価をコントロールしようとする部分があったんじゃないかなと思います。

 あと、間違ったことをしたらすぐ子どもに謝るようにしています。カッとなってしまったら自分を開示して「こういう理由で言ってしまったけど、お母さんがイライラしていたからで、あなたのせいじゃないんだよ」と説明するようにしています。そうすることで、自分の許容範囲や未熟さもわかってきたので、無駄に怒らなくなりました。

ーー子どもにちゃんと説明することは大切ですね。

あらい:私が怒ってしまうパターンとして、スケジュールを詰め込み過ぎてイライラしてしまうことがあったので、仕事の予定の組み立て方を見直すことにしました。これまでは子どもがいることを前提に日程を組むことができていなかったので、できるだけ余裕を持てるようにしています。

ーーそれでもイライラしてしまうときはどうしていますか?

あらい:イライラには段階があると思います。少しずつストレスが溜まって、最後に何かのきっかけで爆発してしまうんです。だからじわじわと苛立ちを感じている状態を耐えるのは良くないと思います。いつか達する臨界点を放置するのは、子どもや家族に対する甘えですよね。だから自分でそう感じたら「今イライラしているから○分待って」と伝えるようにしています。













子育ての「負の遺産」を断ち切りたい人へ


ーー「虐待の連鎖」や、自分の子育てに悩んでいる人にどんなことを伝えたいですか?

あらい:「虐待の連鎖」を自分の代で断ち切る決意を持つことは大事なことですが、自分は果てしないことをしようとしていると自覚することも大切だと思います。自分が赤ちゃんの頃から親にされてきたこと、その積み重ねを組み立て直すのはものすごく大変なことなんです。加えて、子どもとの他愛のないやり取りの中で、自分の嫉妬心や虐待の記憶など、多くのものとも戦わなければいけません。

 虐待されてきた中で「普通」を目指していると、知らないうちに「完璧」を目指すようになってしまっているのではないかと思います。そうして頑張りすぎると失敗するし、焦っていると自分に染みついたものを繰り返してしまいます。全部一気にやろうとすれば誰でも破綻してしまいます。

ーー行き詰まりそうになったときは、どうすればいいと思いますか?

あらい:抽象的な言い方になりますが、自分に優しくすることが大切だと思います。まずは休んで体力・気力を取り戻してから、楽しいことをしたり、一人になって自分に戻る時間を持つ努力をしたほうがいいと思います。そうして、自分と向き合う準備・実行することで、自分の家族にも目を向ける意識が持てるようになると思っています。

 自分と向き合うということは、過去と向き合うことになりますが、当然初めのうちは昔されたことに対する怒りや復讐心が湧いてきます。その感情を手放すことはすごく悔しいと思いますが、でも「それは今の自分の家族にとって必要なものなのか?」と見つめ直して折り合いをつけるために必要な時間です。そうすることで、今まで見えなかった道が見えてくると私は思います。

<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。




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