ホルモンとは……体の中で作られ、体内の関係をコントロールするもの
「ホルモン」というと、何となく実体のない臭いのようなものをイメージされるかもしれませんが、しっかりした物質です。
ホルモンは体の中で作られ、体内の関係を調節したりコントロールしたりするはたらきがあります。食品の成分として「ホルモン」ではなく、「~ホルモン<類似>物質」と書かれていることがあるのは、本来は体の中で作られるもので、同様のはたらきをする成分を指すからです。
ホルモンは血液で運ばれ、標的の臓器に働きかけます。郵便物が決められた特定のポストに入れられるような感じですね。
女性ホルモンとは? 特に有名な「エストロゲン」「プロゲステロン」
身体の中を一定に保つために、さまざまなホルモンが働いています。よく知られているのは「成長ホルモン」でしょう。寝ている間によく分泌されることでも有名で、「寝る子は育つ」というのは医学的にも正しいと言えます。
ちなみに、体内にはたくさんのホルモンがあるのですが、これの多くを制御するのが脳の中の「視床下部」と「下垂体」と呼ばれる場所なのです。
そして、「女性ホルモン」として有名なのが、卵巣で作られる
・エストロゲン(卵胞ホルモン)
・プロゲステロン(黄体ホルモン)
の2つです。
そしてこの2つの分泌をコントロールしているのも、脳のなかにある
・視床下部
・下垂体
という部分。ここから卵巣に「このホルモンを出してください」と指令がいくと卵巣からホルモンが出るわけです。この卵巣への指令がどのような形で行くかというと、これもやはり「ホルモン」の形でお手紙が届くのですね。
結局、女性の「ホルモンバランス」というもののは、「視床下部」と「下垂体」と「卵巣」とのあいだでやりとりされる「お手紙の流れ」がスムーズにいくことで整っているとも言えます。
女性ホルモンの乱れ? エストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れる理由

図をご覧ください。紫の線で示されているエストロゲンは二峰性で、排卵前と月経前に多くなります。緑の線で示されているプロゲステロンは月経前に多くなります。
この2つのホルモンバランスが1ヶ月を通して上記の図のようにきれいに変化することで、女性の体のリズムもスムーズに整った状態になります。
反対に、「ホルモンバランスの乱れ」が起こることもあります。「視床下部」と「下垂体」と「卵巣」とのやり取りが上手くいかなくなった状態です。具体的に、ホルモンバランスが崩れやすいよくある原因を挙げてみましょう。
女性ホルモンを分泌させる視床下部は、同時に自律神経のコントロールもしています。そのため、ストレスの影響を強く受けてしまいます。このしくみはとても微妙で繊細なので、自覚できないことも珍しくありません。
例えば、「生理がくるはずだったのに、旅行中にこなかった」といった経験はありませんか? 月経リズムは本当に些細なことにでも影響されてしまうのです。不規則な生活や睡眠不足、過度なダイエットなどもホルモンバランスを崩す原因になります。できるだけバランスのとれた食事、規則正しい生活、睡眠を心がけましょう。
また、ホルモンバランスが乱れる時期が、女性の一生には2回あります。
ひとつは「思春期」。思春期はまだ身体がホルモンバランスをうまく一定化できないため、月経周期が乱れがちです。
そしてもうひとつが「更年期」。更年期は卵巣からの女性ホルモンの分泌量が減る過程で体が混乱してしまいます。
更年期でイライラ、めまい、ほてりなどの不定愁訴が現れるのは、少なくなった女性ホルモンを察知して、脳の司令塔である視床下部が頑張りすぎてしまい、その結果、逆に自律神経のコンロトールがうまく行かなくなるからとも言われています。
この時期にいるときは、ホルモンバランスの乱れによる不調はそういうものだと考えて、ゆったり過ごすようにしましょう。
東京大学医学部卒業。整形外科専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、認定産業医。東京大学医学部医療情報経済学客員研究員、ハーバード大学研究所客員研究員等を経て、現在、東京大学医学部附属病院整形外科。勤務医として診療にあたりながら、女性の健康をサポートする情報を幅広く発信している。
執筆者:山田 恵子(医師)