ストレス発散のための飲酒・愚痴は危険? 逆効果になることも
集団生活の中では、ストレスが溜まることも多いもの。誰もが少なからず、不平や不満を抑えながら過ごしているかもしれません。
たとえば仕事上、上司の立場にある人は大変なときも冷静なふりをする必要もあるでしょうし、部下は仕事や上司に怒りを覚えても、立場上何も言えないこともあるでしょう。このような状態が長く続くと、私たちは欲求不満に陥ります。
そんなとき、「ストレス発散のため」にお酒を飲んでいる方も、少なくないのではないでしょうか。確かに、適量のお酒は心と体の緊張を解いてくれます。でも、愚痴をこぼすことは、必ずしもストレス発散にはならないので、注意しなければなりません。
そもそも愚痴は、解消できない不満を周囲に明かす行為です。愚痴をこぼすと、周囲の人が同意したり慰めてくれたりするため、不快な気持ちが和らぎ、心が軽くなります。
でも、これが有効なのは、最初に語る1回目だけに限られています。同じ話を同じ人に何回繰り返しても、それ以上心が軽くなることはありません。それどころか、はじめは耳を傾けてくれていた周囲の人がだんだんと離れていき、そのことにも不満を感じ、愚痴がますますひどくなる悪循環に陥ってしまうこともあります。
お酒を飲むたび愚痴ばかり言っていると、かえってストレスが溜まることにもなりますから、ほどほどにしましょう。
お酒を飲む目的は? アルコール依存症傾向をセルフチェック!
イライラして、いつもお酒を飲みたい、飲んでいないと落ち着かない……という方はいませんか? 俗に「アル中」(アルコール中毒の略)と呼ばれてしまうこともありますが、この表現は間違いです。
アルコール中毒とは、お酒を飲み過ぎてその場で倒れてしまうような状態をさします。お酒がきれてくるとまた飲みたくてたまらなくなる状態は、「アルコール依存症」です。私たちが飲むお酒に含まれるアルコールはエタノールなので、「エタノール依存症」ということもあります。
もしあなたが日常的にお酒を飲む人で、どうして飲むのかを聞かれたとき、どう答えるかでアルコール依存症へのなりやすさの危険度がある程度わかります。
こう答える人は、アルコール依存症になる心配はあまりありません。特に体質的にお酒を受け付けない場合、自ら進んでお酒を飲むことは少ないでしょう。アルコール依存症は、たくさんお酒を飲んだときに起きるからです。
こちらの回答の人も、アルコール依存症になることはまずないでしょう。楽しむことが目的の人にとって、お酒は体や心の緊張をほぐすキッカケを与えてくれるものに過ぎません。いったん心が軽くなれば、会話がはずんで楽しいひと時を過ごし、欲求が満たされることでしょう。
当然また飲みたいという欲求がわいてくるでしょうが、それは軽い精神的依存にすぎず、おいしい食べ物や飲み物がほしくなるのとさほど変わりませんから、心配はいりません。
こう答える人は、アルコール依存症予備群です。もしかしたら、もうアルコール依存症になっているかもしれません。
お酒を飲むと、一時的にイライラがおさまり、嫌なことも忘れた気になるかもしれませんが、実際はイライラの原因や嫌な対象物がなくなるわけではありません。お酒から醒めたら、またイライラや嫌な気分が始まります。
根本的に解決しないまま、ただ一時しのぎで逃避するようにまたお酒を飲んでしまいます。際限なくお酒を飲みつづける悪循環の始まりです。
また、厄介なことに、お酒を繰り返し飲んでいると、だんだんとエタノールの効き目が弱くなってきます。人に叱られると、はじめは少なからずショックを受けますが、何度も同じように叱られていると、慣れっこになってしまうようなものです。
そうなると、さらにたくさんのお酒を飲まないと満足感や安心感が得られなくなり、どんどんと飲酒量が増えていきます。増やすとまた脳が鈍感になり、さらに飲酒量が増えるという悪循環に陥ります。
イライラ解消や、憂さ晴らしの目的で、お酒を飲むのは危険です。気がつかないうちに、エタノールがあなたの脳を蝕んでいるかもしれません。
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)