筋トレ初心者から、「トレーニングのとき、腰につける太いベルトは買った方がいいですか?」と質問を受けることがあります。
ムキムキ系のハードコアなフィットネスジムでは、タンクトップから太い腕を覗かせ、幅が15センチぐらいはありそうなベルトを腰に巻いたマッチョな人をよく見かけるでしょう。こういう人たちにはベテランや上級者が多いので、初心者が真似してみようと思っても不自然ではありません。
このベルトはトレーニングベルト、パワーリフティングベルト、ウェイトリフティングベルトなど、呼び方がいくつかあります。
ここでは「トレーニングベルト(以下ベルト)」で統一し、その種類やメリット・デメリット、効果的な使い方について詳しくご紹介しましょう。
なぜベルトをつけるのか。メリットはこの通り
体勢が崩れるのを物理的に防ぐ筋トレでベルトを着用するメリットはいくつかあります。ひとつは立った状態で重いモノを持ち挙げるとき(例:スクワットやデッドリフト)に、腰や背中の下部へかかる負担が軽減されること。
そして、頭上にモノを持ち挙げるとき(例:ショルダープレス)、背中が反りすぎないようにすることです。
ベルトできつく腹部を締め付けることで、内部の腹圧が高まります。そのことによって腰まわりが安定し、重量の負荷に体勢が崩れることを防ぐのです。
スクワットやデッドリフトの動作説明で、よく「腹筋に力を入れて」とか「体軸をまっすぐにして」と言われます。ベルトを巻くことで、その動作が自然に促進されるわけです。
姿勢やフォームに意識が向きやすくなるもうひとつのメリットは、ベルトが皮膚に触る感覚によって、背中や腰の姿勢、フォームに意識が向きやすくなることです。
スクワットやデッドリフトで背中を丸めないことはもちろん、ショルダープレスなどバーベルを頭上に持ち挙げるとき、背中を後ろに反らさないことも同様です。

また、ベルトを着用することによる物理的および心理的効果から、普通は最大挙上重量が大きくなります。つまり、より重い負荷をかけて筋トレができるようになるわけです。
トレーニングベルトにはデメリットもある
主に以下の理由から、ベルト着用を勧めないトレーナーもいます。
血圧の急上昇ベルトを着用すると血圧が急上昇することがあります。特に、心臓や血管に疾患のおそれがある人は注意が必要です。
腹圧を高める能力が伸ばせないベルトが腹圧を高めてくれる反面、自ら腹圧を高める能力が伸ばせません。そのため、せっかく筋トレで鍛えることができる体幹が十分に鍛えられなくなるおそれがあります。
正しいフォームを覚えることができなくなるベルトが姿勢を矯正してくれる反面、正しいフォームに意識が向かなくなることがあります。
トレーニングベルトの種類とタイプ

ベルトにはさまざまなタイプのものがありますが、大きく分けると伝統的な皮製品で留め金のバックルがついているタイプ、そしてマジックテープ式(ベルクロ)のタイプがあります。
マジックテープ式タイプの方が軽量で着脱しやすく、窮屈さも伝統的タイプに比べるとあまり感じないかもしれません。しかし窮屈さを感じない程度では、ベルトを着用する目的である腹圧を高め、姿勢を矯正する効果が低くなるという懸念もあります。
どちらのタイプにしても、背中の厚みが大きいものを選ぶと、重量負荷から脊椎を強く守る効果が期待できるでしょう。ただしその分、動作には制限がかかる点に注意してください。
トレーニングベルトの使い方
こうしたメリットとデメリットを頭に入れた上で、ベルトを使用するときの注意点も確認しておきましょう。
ベルトを強く締める(効果の最大化) 長時間は使用しない 最大挙上重量かそれに近い重さを挙げるときのみ使用する 1ラウンドごとにベルトを緩め、血圧を正常に戻すトレーニングベルトが必要ないパターンとは
軽い重量を扱うときにベルトは必要ありません。
また、腰や背中に重量の負荷がかからない動作(例:ラットプルダウンやレッグエクステンションなど)のときも同様です。このようなときには、ベルトを着用するメリットよりデメリットの方が大きくなるでしょう。
ベルトを着用すると腹圧を高め、姿勢が崩れることを防ぐことができます。それによって、腰と背中を怪我から守る効果と、筋トレ効果を高める効果が期待できるでしょう。どちらも、腰や背中に重量の負担が大きくかかる動作時に着用すると、もっとも効果的です。
しかし、正しく使用しないと血圧の上昇を誘発すること、体幹の筋力が低下してしまうことがある点にも注意が必要です。
以上のことから、筆者は筋トレ初心者にベルト購入をおすすめしません。初心者が高重量に挑むことはあまりありませんし、それよりもテクニックの習得に集中するべきだと思うからです。体幹を鍛えるのを邪魔してしまう点も見逃せません。
中級者以上になり、しかも筋トレの主な目的が筋肥大や最大パワーの向上であるという人は、高重量低回数のプログラムを行うときに限ってベルト着用も選択肢のひとつではないでしょうか。
[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>