人とのトラブルや、対人関係でのイライラが多い人の例
仕事でもプライベートでも、話し合いが苦手という人は少なくありません。中には、話し合いをしようとすると、しばしば相手と話がかみあわなくなったり、揉めたりしてしまうと、悩んでいる方もいます。そして、建設的な話し合いが苦手という方には、伝え方にしばしば二つの傾向が見られます。
一つは、自分の要望を伝える際に、つい相手を責める言い方になっているパターン。自分では前向きな提案として要望を言っているつもりでも、「どうして〇〇してくれなかったんですか?」「なぜ〇〇しようとしないの?」という言い方をされると、言われた方は非難されていると感じてしまいます。
そしてもう一つは、自分の基準での「当たり前」を、当然のこととして相手に求めてしまうパターン。「普通、みんなやってますよね」「こんな簡単なことがなぜできないの?」と、責めているような言い方になりがちです。
攻撃的な「YOUメッセージ」「WEメッセージ」で話し合いは破綻する
上記の二つの傾向は、話し合いがこじれてしまう会話のパターンである「YOUメッセージ」「WEメッセージ」に当てはまります。 「YOUメッセージ」とは「あなた」が主語になったメッセージ、「WEメッセージ」とは「我々」が主語になったメッセージです。
「あなたが○○するべき」「なぜあなたは〇〇しないのか」というように、「あなた=YOU」を主語にして、相手に要求する言い方になってしまいます。
「みんな○○しているのに」「私たちが迷惑しているのはあなたが○○しないせい」というように、「我々=WE」を主語にして、相手を責める言い方になりがちです。
この二つの言い方で自分の要求や思いを伝えてしまうと、相手は「攻撃的なメッセージ」だと受け止めます。攻撃を感知すると、人には動物的本能によって「逃げるか、闘うか」という心理と行動が生じます。これを「闘争・逃走反応」と呼びます。
つまり、相手が自分に何を要求しているのかを吟味する以前に、「そんな言い方することないじゃないか!」などの怒りの感情が湧いてしまいます。あるいは、「〇〇さんだってやっている」「自分のせいじゃない」というように逃げる口実を探そうとしてしまいます。
こうなると、相手に自分の思いをいくら伝えようとしても、うまく伝わらなくなってしまいます。場合によっては恨まれてしまうこともあるでしょう。
話し合いを建設的なものにする「Iメッセージ」
メッセージを伝えるのは、自分の気持ちを分かってほしい、行動を改めてほしいからではないでしょうか? そうであれば、その思いがきちんと伝わるメッセージを選択しなければなりません。
だからこそ「Iメッセージ」が重要なのです。「Iメッセージ」とは「私」を主語にした伝え方です。Iメッセージで自分の思いを伝えると、相手は素直に耳を傾けやすくなり、自分の行動を振り返りやすくなったりします。
たとえば何かを要求するときには、「〇〇してくれると(私は)うれしい、助かる」「〇〇されると(私は)とてもつらい、悲しい」というように、「私」を主語にして素直な気持ちを伝えます。使い慣れていないと、照れくさいかもしれません。
しかし、照れくさい言葉には心がこもっているため、相手はぐっと惹きつけられるのです。そして「そうか、そういう気持ちなのか」と素直に受け取れ、相手の立場を想像しながら物事を考えてくれるようになります。
そして、相手が自分の思いをわかってくれたら、「ありがとう」「うれしい」と素直な気持ちを伝えましょう。あなたのために行動してくれた相手に、素直に感謝や喜びの気持ちを述べるのです。すると、相手はさらにぐっと心を動かされ、あなたの気持ちを思いながら行動したいと思うようになるでしょう。
素直な気持ちを伝えると、建設的な話し合いができる
人の行動を変えることは、並大抵のことではありません。行動の決定権はその人自身にあるからです。自分の要求に沿ってもらうには、まず相手を尊重することが大切。そして、伝え方を工夫していくことが大事です。
攻撃的な言い方で人が動くのは、切羽詰まった状況のとき、相手に危機感があるときだけです。相手の行動を変えるには、素直な気持ちを相手に伝えることが最も効果的です。ぜひ「Iメッセージ」を使って、素直な気持ちを伝えてみてください。
公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つメンタルケア・コンサルタント。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。カウンセラー、コラムニスト、セミナー講師として活動しながら、現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法について幅広く情報発信を行っている。
執筆者:大美賀 直子(公認心理師)