
毎年、新春恒例となっている「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」(会期は20日まで。以下、駅弁大会)が東京・新宿の京王百貨店新宿店で開幕した。
全国の実力派駅弁が一堂に会す別名“駅弁甲子園”とも呼ばれるイベントで、今回で56回目の開催。しらべぇ記者は、「丑年」にちなんで最高にウマい「肉系駅弁」を探すべく会場に向かった。
今回は3会場に分けて開催

数々ある京王百貨店新宿店の催しの中で、年間トップクラスに反響を呼ぶのがこのイベント。


会場には300種を超える駅弁とグルメが並んでいるが、今回は新型コロナウイルス感染拡大防止策として、備品や施設の徹底した消毒、密になることを避けるための入場制限、さらには7F大催場、5F特設会場、中地階エキサイティングスポット・デリカコーナーと、会場を3つに分散させるなどの対策が組まれていた。
会場至るところでいい香りが...

記者が会場に到着すると、北海道から九州まで大小様々な駅弁調製元が出店しており、定番の人気駅弁や新作駅弁が次々目に飛び込んだ。

誰もがどれを選ぶか迷うレベルで、これは事前に弁当をリサーチしていないと困ってしまいそうだ...。

そんなことを思いながら、各ブースを回っていると「調理実演」が行われており、至る所から肉の焼ける美味しい香りが。これだと思い、今回は肉系弁当で記者がピックアップした5種を紹介したい。
「松阪牛ローストビーフとすき煮弁当」

まずは東海道本線「名古屋駅」で販売している「松阪牛ローストビーフとすき煮弁当」(税込1,980円)。

製造しているのは、大正時代に創業した松浦商店。“3大和牛”松阪牛を使った贅沢な一品で、ローストビーフは肉の旨味を味わえるよう塩のみでシンプルに仕上げられている。

まずは一枚そのまま食べてみると、とろけるようなまろやかさが口の中に広がる。甘みのある特製ソースをつけると、さらに肉の美味しさが広がった。なんてジューシーなんだコレ。

これだけで大満足だが、この弁当には松阪牛を醤油ベースで炊き込んだすき煮もついている。ほろほろとした食感の中にそれぞれ素材の旨味がギュッと煮込まれている印象。この両方の食べ比べは贅沢の極みとしか言えない。
「佐賀牛サーロインとランプステーキ&すき焼き弁当」

続いては佐賀県を走る佐世保線「武雄温泉駅」からやってきた「佐賀牛サーロインとランプステーキ&すき焼き弁当」(カイロ堂、税込1,998円)。

いま駅弁におけるブランド牛弁当は、ステーキorローストビーフ系+すき煮なのかもしれない。
佐賀牛は柔らかい赤身と見事な霜降りが特徴。そのサーロイン、ランプが豪快にグリルされており、こちらはさっぱりとした塩ダレ風の特製ステーキソースで食べる。

A5ランクの上質な肉からは豊潤な香り、さらには極上の旨味が感じられ、柔らかさも最上級。すき焼きは肉が大ぶりで肉肉しい食感も楽しめる。
ちなみにこのすき焼きだけを使った同社の駅弁は、強豪ひしめく「九州駅弁大会」で2連覇を達成している逸品。まさに龍と虎が揃ったような一箱だった。
「三味牛肉どまん中」

お次は山形を走る奥羽本線「米沢駅」の名物「三味牛肉どまん中」(新杵屋、税込1,350円)。超有名駅弁「牛肉どまん中」シリーズ3商品がオールスターのように揃った一品。

秘伝の甘辛醤油ダレで味付けしたスタンダードな牛肉煮に、地元米沢の味噌を使用しコクのある味に仕上げた「みそ味」、特製塩ダレで味付けした「しお味」を加え、肉の旨味を様々な味で楽しませてくれる。
これがどれも本当にウマい。交互に食べると味の変化が絶妙で、正直箸が止まらなくなる。

さらにお米は、山形で開発され、栽培量が少ない「どまんなか」を使用。
駅弁という冷えたまま食べる形態でも味や香りのレベルが落ちず、牛肉煮のエキスを吸い込み“悪魔的白米”にふっくら進化を遂げていた。どんどんご飯が進む、MAXレベルでプッシュできる商品だ。
「米沢牛 炭火焼肉弁当 極」

その近くで見つけたのは、同じく奥羽本線「米沢駅」で販売している「米沢牛 炭火焼肉弁当 極」(松川弁当店、税込1,500円)。

極の名は“伊達”ではなく、上質でしつこくない脂が特徴の米沢牛を炭火で焼き上げている。肉の部位はロースとカルビが分けられて敷き詰められており、いずれも特製タレの味がばっちり合う。とにかく炭火の香りが最高なのだ。

口に入れて噛み締めると、ジュワ〜っと最高の旨味が口内に広がり、もうこの脂と肉汁だけで白米が完食できてしまいそうなレベル。米沢の焼肉屋さんが一店舗詰まっているかのような印象である。
付け合わせのゆずだいこん、玉こんにゃくはご当地感があり、個人的には旅感を味わうことができこれも嬉しかった。
「松阪名物黒毛和牛 モー太郎弁当」

最後は、この弁当箱のインパクトになんとも魅了されてしまった「松阪名物黒毛和牛 モー太郎弁当」(あら竹、税込1,500円、輸送)。

三重県・紀勢本線「松阪駅」で販売されている。中には適度に脂身が入った黒部和牛の牛すき煮がこれでもかと敷き詰められており、甘辛いタレにじっくり煮込まれていた。具材は牛肉だけというストロングスタイルで、まさに“貴族の牛丼”だ。

この弁当、味はもちろん、弁当箱にもこだわりが。
箱は和牛をモチーフにしており、よく見るとうっすら瞳がうるんでいる。その妙なリアルさに驚きつつも、食べさせていただくことに感謝しながらゆっくり箱を開けると、今度は電子メロディが勝手に流れ出る仕組み。さすがものつくり大国・日本だ!

しかし音はというと、約20年前の携帯電話を思わせる単音で、曲目は「兎追いしかの山〜」の歌い出しでおなじみの「ふるさと」。なんというハイセンス。これぞ本気のエモい駅弁である。
駅弁業界の現在

牛肉は冷えると脂が固まって表面に浮き上がってしまう印象があるが、どの弁当もそんな心配が一切なく、料理人たちの工夫と知恵が詰まっており、「冷めていても120%美味しい」と実感させてくれた。

新型コロナウイルスの影響で、国内旅行にもなかなか行けない時代になった。
旅客が激減したことで、各駅弁業者にもその逆風が吹き込んでいる。会場は盛り上がっていたが、コロナの影響を鑑み泣く泣く出店を諦めた調製元もあったそうだ。また大雪による輸送障害で、会場への到着が遅れている駅弁もあった。
前述「三味牛肉どまん中」を手がけている新杵屋は、弁当用に用意した米「どまんなか」を米粉のピザに代用させ、自慢の肉をその上に乗せた新商品をリリース。各メーカー、アイデアを絞ってこの苦境を必死に乗り越えようとしている。

各地の駅弁調製元にとってこの「駅弁大会」は、全国に知名度を広める大きなPRの場所である。そして駅弁ファンを喜ばせることができる貴重な機会でもある。
どうかここに来たら、過去、電車の中で美味しい駅弁を食べながら旅程を楽しんだことを思い出して欲しい。気兼ねなく鉄道旅を満喫できる日が1日も早く戻ることを心から祈りながら、記者は「うまっうまっっ!」と独り言を言いながら駅弁を食べ続けるのであった。
(取材・文/しらべぇ編集部・キモカメコ 佐藤)