
マニアックな会員制中国料理店の女性シェフが開いた、小さな「点心」のお店
新型コロナウイルスによる自粛期間中、自らの店の料理の在り方を見つめ直し、新たな道を選択したシェフは多い。中国出身の料理家・小薇(シャウ・ウェイ)さんもその一人。小薇さんは、会員制の中国料理サロンで、ごく限られたメンバーにマニアックな高級中国料理を提供していた女性シェフ。そんな彼女が2020年6月20日、本格中国点心&お惣菜の専門店『小薇点心(シャウウェイテンシン)』をオープンした。



フロアには4人掛けのテーブルと6人掛けのテーブルが各1卓あり、ランチ・ディナーともに完全予約制のおまかせコースを提供している(ランチは土日のみ)。
世界大会での入賞経験もある実力派シェフ、実は中国の元アナウンサー

上海東方放送で人気アナウンサーとして活躍していた小薇さんは、日本人男性と恋に落ち、結婚のために来日。ゼロから日本語を習得した後、中国語の語学教室をしていた時に生徒にふるまった家庭料理の腕が評判となり、料理教室を開くことに。
その後、中国に渡って本格的な料理修業を重ね、新宿御苑前に自身の店『Rose Shanghai Tokyo』(ローズシャンハイトーキョー・現在は閉店)をオープン。その後、マニアックな中国料理を提供する会員制の料理サロンを主宰すると、多くの日本人シェフが教えを請いに訪れるように。

小薇さんは「外食ができない今、本当に必要とされているのはマニアックな高級料理ではなく、自宅でも手軽に味わえる、本物の中国家庭料理ではないか」と考え、料理サロンの閉鎖を決意。自粛期間中にもともと得意だった点心の技をさらに磨き、中華まんシリーズ「小薇香包(シャウウェイ シャンパオ)」を開発し、自宅から歩いて通える場所に『小薇(シャウウェイ)点心』をオープンした。

小薇さんの故郷の家庭料理を中心にした、おまかせディナーコース
ランチコースは週末のみ提供、ディナーは6,600円と11,000円、2つのおまかせコースがある(いずれも完全予約制)。今回は上海とウイグルの家庭でよく作られている小薇さんの十八番(おはこ)料理を中心にした6,600円のディナーコースを紹介する。

左から時計まわりに「上海蟹の蟹味噌と人参の炒め物」「ズワイガニのゼリー寄せ」「よだれ鶏」「クラゲの赤酢 レモングラス風味」「春菊の白和え」「窯焼き叉焼」「あん肝の紹興酒漬け」「酔っぱらい上海蟹」の8品。
「家庭料理中心のコースといっても前菜はやっぱり、華があったほうが盛り上がるでしょう?」(小薇さん)と、高級食材をふんだんに使い、華やかでインパクトのある味わいの小皿料理をとりそろえている。


上海の家庭料理は、不思議なほどに癒される滋味深い味わい

小ぶりの肉団子「獅子頭(シーズートウ)」は、上海料理の定番。箸の重みでほろりとくずれ、湯気とともに肉汁が溢れ出す。白菜のやさしい甘さをとことん抽出しただし汁のホッとする味わいは、華々しい前菜への興奮をやさしくなだめてくれる。



付け合わせの「マコモタケ、高菜、枝豆の炒めもの」は、クセのある3つの食感、味わいが絶妙なハーモニーを奏でていて、淡白なサワラとメリハリのきいた取り合わせだ。

「骨付きのラム肉というと薔薇色のレアな焼き上がりをイメージすると思いますが、ウイグルはイスラム圏ですので、レアの肉は食べません」(小薇さん)
香味野菜とスバイスで一晩漬け、やわらかく煮込んでからオーブンで香ばしく焼いた骨付きラムは「中まで火が通っているのになぜ?」と不思議に思うほどのやわらかさ! たっぷりとかけられたクミンと唐辛子が、ラム肉のうまみを最高に引き出している。
小薇さんの本領発揮! 点心は研究を重ねた「爆汁ポークまん」の焼きバージョン
6,600円のコースでは、好みの点心を2品選べる。
イメージしたのは、小薇さんが子ども時代に上海の屋台で食べた、皮に茶色くにじみ出るほど汁気たっぷりの肉まん。小薇さんは研究を重ねてそれをさらに進化させ、餡のスープが染み出さない、特殊な皮を考案した。この皮の作り方は門外不出で、仕込みは必ず休日に行っているそうだ。



底の部分の焦げ目の香ばしさ、肉料理のようにボリュームのある餡、餡から湧き出る熱々のスープ…。食べ慣れた肉まんとは、まったくの別物だ!


高級食材は使っていないが、毎日でも食べたい味わい深い料理ばかり。家庭料理だけあって本来の作り方はシンプルだが、そこに小薇さんのハイレベルなテクニックが加わり、この店でしか食べられないスペシャルな家庭料理になっている。
なお、11,000円のコースは前菜が同じで、品数が増え、小薇さんの得意とする点心を“全種類食べられる”というから驚き! 「満腹だといいながら、全種類食べてしまう人も多いんですよ」と小薇さんは微笑む。
料理に合わせた紹興酒や自然派ワインも豊富に用意

「紹興酒は好みが分かれるので、私の好きな、まろやかで飲みやすいものを多くそろえています」(小薇さん)
また小薇さんの料理によく合う自然派ワインも、コストパフォーマンスのいいものを数多くそろえている。
小薇さんの魂がこもった「爆汁ポークまん」は、1個350円でテイクアウト可能!

一番人気はやはり「爆汁ポークまん」。これだけの技術が込められていて1個350円は安すぎるように思うが、この「爆汁ポークまん」を始めとした点心シリーズには、小薇さんのもうひとつの願いが込められている。

中国の両親も、小薇さんのこの願いに賛同し、応援してくれている。
「コロナがおさまったら、両親に日本に来てもらって、この店で私の『爆汁ポークまん』を食べてもらいたい。きっと『おいしいものができたね』と褒めてくれると信じています」(小薇さん)
【メニュー】
▼ランチ(土日のみ)
・ランチコース(前菜3種盛り合わせほか8品) 3,180円
▼ディナー
・ディナーコース 6,600円~
▼ドリンク
・紹興酒 100ml 880円~/500ml 3,500円~
・ワイン グラス 880円~/ボトル 4800円~
▼テイクアウト
・爆汁ポークまん(2個入り)700円 ※テイクアウトは2個から
▼生冷凍
・爆汁ポークまん (4個入り)1400円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
撮影:佐々木雅久
小薇点心(シャウウェイテンシン)
〒166-0012 杉並区和田1-17-203-6273-0399
テイクアウト 11:30~18:00まで(売切次第終了)、ランチ 11:30~14:00(土日のみ)、ディナー 17:30~21:30(ディナーは当日14:00までに要予約)
月曜日、水曜日
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この記事の筆者:桑原恵美子(ライター)