
常連たちから熱い支持。夫婦で営む松陰神社のフレンチビストロ

昭和の時代を彷彿させる昔ながらの商店街には、古くから愛される商店に混じって、ここ10年でオープンした個人店も見られる。
近年、新たなカルチャーを携え一層注目度を増すこの街で、多くの常連客に愛されるフレンチビストロがある。駅の北口からすぐの場所にある『BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)』だ。

シェフは19歳から25歳まで和食店で勤務したのち、フレンチに転身。スーシェフ、メインシェフを務めたのち、2010年10月に『ビストロ トロワキャール』をオープンさせた。ちなみにご夫妻は前職のフランス料理店時代に、同僚として出会ったそう。
今でこそ遠くから足を運ぶ人も多い松陰神社エリアだが、『ビストロ トロワキャール』がオープンした10年前は違った。

フランス料理への熱量の高さがひしひしと感じられる木下シェフの料理

クロワゼ鴨を背中から開き、縦方向に内側へ巻くことで、一つの断面に胸肉とモモ肉を共存させている。中には内臓ミンチにフォワグラ、豚の挽肉ミンチにフランス産のトランペット茸とジロール茸、ピスタチオを入れ、低温で茹で冷菜に仕上げる。
ヴィネガーとオリーブオイルをベースに塩コショウで味付けしたフレンチドレッシングの定番「ヴィネグレット」を、ビーツで鮮やかに仕立てた。そこに、ソースと同系色で今が旬の黒イチジク、トマト、紫キャベツ、ラディッシュなどを添え、美しい一皿に仕上げている。

うまみを吸ったピスタチオはインゲンのような食感で、2種のキノコと豚のミンチが食感にアクセントをプラス。とろける食感で甘美な甘さの黒イチジクや、酸味のあるビーツのヴィネグレット(冷たいソースの一種)といただくことで、より一層鴨のうまみが際立つ。
甘鯛のヴァプールなど、技術の詰まったバランスのよいソースを添えて

「山口 萩 甘鯛のヴァプール ソースヴェルモット 白ナスのフォンダン」(写真上)もそのひとつ。
魚料理の基本ソースでもあるソースヴァンブランを応用したソースヴェルモットは、白ワインを数十種類の薬草で香り付けしたヴェルモット酒に、エシャロットとマッシュルームを加えて煮詰め、フュメドポワソン(甘鯛のだし)を加え、さらに煮詰め生クリームを足し、シノワで濾してソースのベースにする。
これにバターを加え仕上げたものがソースヴェルモットとなるが、ワインの酸味によるキレを出し、より香りを際立たせるため提供直前にもう一度ヴェルモット酒を煮詰め、まだ暑さの残る季節ということで仕上げにフレッシュなハーブを加えた。その結果、清涼感あふれるハーブの香りに酸味が爽やかなソースに仕上がる。


同じ土地の食材を合わせることで、味わいにまとまりを出す



「仔牛がブルターニュだったので、同じ地方のブランデーを加えました。料理って土地で合わせると、まとまってくるんですよね」と木下シェフ。
さらにセップ(イタリアンではポルチーニ)を炒めたア・ラ・クレーム(クリーム煮)を、根セロリのピュレとともに仔牛に添える。

デザートやワインのセレクトは奥様・真由美さんが担当
『ビストロ トロワキャール』のワイン担当は真由美さん。グラスは800円〜で赤・白それぞれ常時3種類は用意があるほか、ボトルは40種類ほどリストにラインナップ。しかし在庫が1本しかないようなワインリストに載っていないワインが、実は80種類ほど置いてあるという。味の好みや要望、予算を伝えれば料理に合わせたワインを丁寧に提案してくれる。
自家製の桃のムースに、ピーチリキュールとシロップでマリネした桃、レモングラスのジュレに桃のグラニテ、蔵王ヨーグルトのソルベをのせ、最後にフランボワーズのメレンゲをトッピングしている。
桃リキュールとフレッシュな桃の香りが芳(かぐわ)しく、トロッととろけるジューシーな桃にひんやりシャリシャリ食感のグラニテやすっきりとした味わいのヨーグルトのソルベが爽やか。サクサク食感で甘酸っぱいフランボワーズのメレンゲを、溶けてきたソルベにつけてもおいしい。
常連から人気の自家製バゲットは、お持ち帰りもOK

「フランス料理を引き立てるバゲットでありつつも、そのまま食べてもおいしいと思ってもらえるよう工夫しました。日本人の舌に合う水分量多めのバゲットを、白いパンと全粒粉パンの2種用意しています」とシェフが言うように、外側はパリパリで中はフワフワ、もっちり&しっとり。
独自にブレンドした小麦に「高千穂発酵バター」を使用し、芳醇なバターの香りとジューシーな味わいのバゲットに仕上げている。

店内をリニューアル。お客を気遣う衛生対策も万全

リニューアルでは衛生対策の一環で、カウンター席はアルコール除菌しやすいよう革に張り替え、テーブル席で使用しているチェアのカバーも刷新した。2020年8月現在はカウンター席を一時廃止しており、テーブル席も一つ空けるなど、席間も安心出来る間隔にしている。
また、お客の案内は一度に3組まで。入店時にすぐ化粧室へ案内し手を洗ってもらい、アルコール消毒を促す。料理もアラカルトは一時中断し、昼夜共にお任せメニューのみに絞った。
「緊急事態宣言解除後、初めて外食するのがうちのお店と言ってくださる方が多くて。その方たちに失礼のないよう、基本的に予約を必須にして、安心して食事を楽しめる空間づくりと対策を行っています」(真由美さん)と常連想いな対応は一貫している。
予約をすれば、各種メニューのテイクアウトも可能


「お店に必要な要素っておいしい料理、お酒、おもてなしという三要素があって、これにお客さんが加わることで初めて完成する。お客さんと一緒にお店を作っていきたいという想いを込めてこの店名をつけました。この想いは10年経った今でも変わりませんね」と木下夫妻。
お客も店もお互いに敬意を払い、尊敬の念を抱き信頼関係を築く。忘れかけていたホスピタリティの真髄をここで改めて感じさせられた。
【メニュー】
▼コース
・トロワキャールコース ランチ 一人2,800円〜
・シェフおまかせランチコース 一人4,500円〜
・トロワキャールコース ディナー 一人4,500円〜
・シェフおまかせコース ディナー 一人6,500円〜
(ディナーは別途アミューズ・パン代チャージとして500円)
▼ドリンク
・グラスワイン800円〜
・ボトルワイン 3,500円〜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:岡本寿(テイクアウトメニューのみ店舗提供写真)
BISTORO TROIS‐QUARTS(ビストロ トロワキャール)
東京都世田谷区若林4-21-4 2F050-3461-6060(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
水~日・祝前日・祝日
昼食 12:00~15:00
火~日・祝前日・祝日
夕食 18:00~23:00
(L.O.22:00)
月曜日
http://r.gnavi.co.jp/923njstn0000/
この記事の筆者:中森りほ(ライター)