
幸食のすゝめ#079、無心な鍋には幸いが住む、広尾
「コヤさん、ここ餃子アゲイン!あと麻婆豆腐も、今度は牡蠣ヴァージョンね!」仕事仲間だろうか、溌溂(はつらつ)としたご婦人たちが、ワインを片手に今晩3回目の餃子をお替わりしている。知性も、食欲も旺盛な都市の女性たちは美しい。
小路側のカウンターに座った笑顔が眩しい女性は、赤星(ラガー)を冷蔵庫から出してシェフに目配せ。

いつものオーダーなのだろう、小さな茶碗にご飯を装い麻婆豆腐をかけて手渡されると、できたての麻婆丼を頬張り、残りはお持ち帰り用の容器へ仕舞って貰う。
飛び切りの微笑みでお辞儀をすると、ポニーテールの聡明な女性はお勘定をして帰路に着く。
家はきっと、広尾か恵比寿、うんとここの近くなんだろう。

でも、いちばんご機嫌なのは、その真ん中で踊るように鍋を振るシェフ、宮崎小弥太(こやた)さんかもしれない。
2018年、今年の1月始めにオープンした『coyacoya』は、いつのまにか広尾の街にすっかり溶け込んでいる。

しかし、ここは広尾、大人の遊び人たちの街だ。リーズナブルな料金体系だけでは、決して人は集まらない。しかも、広尾、恵比寿、どちらの駅からも徒歩10分、さらに小路を入ったところにあるから、知らなければまず訪れないだろう。

そんなコヤタさん、実は料理を習ったことも、修行経験もない。
でも、この30年間、仲間たちが集まる度に、いつもみんなに料理を振る舞って来た。
「とにかく料理を作るのが好き、ああでもないこうでもないと、いつも試行錯誤を繰り返してる。だから、いつまでたっても到達点なんかないんです。でもね、だからこそ面白いし、やめられない」、50歳を境に正業の車屋を辞め、大好きな料理の世界へ。最初は二足のわらじを履いていたが、瞬く間に店が忙しくなり料理が本業になってしまった。

まずはセラーから好きな酒を選び、軽い小皿のつまみを頼む。



餃子は、どこまでも肉々しく、赤星や紹興酒、ワインを誘う。

ていねいな仕込みと、天性のスパイス使い

塩麹に漬け込み、低温調理で仕上げられた後、自家製の辣油がかけられる「よだれ鶏」も未知の味覚だ。


エンドレスで楽しみたい、絶妙な〆の数々
〆に頼んだつもりが、すっかりまた酒が進んでしまう「仔羊のワンタン」にはフレッシュミントと、ミントソースが添えられる。


無心な鍋には、幸いが住んでいる。
【メニュー】
山くらげとキクラゲのコリコリつまみ 400円
きゅうりと新生姜の冷菜 500円
香港風素焼きそば 600円
干豆腐各種 500円(オリーブと生胡椒/皮蛋(ピータン)翡翠ソース/きのこきのこ)
卵だらけのポテトサラダ 600円
餃子(5個) 600円
トリッパと豆とカルダモン 800円
麻婆豆腐(自家製豆板醤入り) 900円
よだれ鶏 800円
仔羊のワンタン 600円
ビール(赤星) 650円
生ビール(香るエール) 600円
ワイン(グラス700円~/ボトル3,700円~)
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。
coyacoya(コヤコヤ)
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-6-6 第1三輪ビル1F03-6456-4458
18:00~24:00
日曜・月曜

この記事の筆者:森一起(ライター/作詞家/ミュージシャン)
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