
明治42年創業。ビールと洋食の組み合わせで、神保町の文化人に愛されてきた老舗
日本でビールの製造が始まったのは、明治初期。庶民にとっては高嶺の花であったビールは大正時代に入り、やがて街のカフェやビアホールで飲まれるようになっていく。その先駆け的存在として人気を博したのが、東京・神保町の『ビヤホール ランチョン』。現在も1日200杯のビールを売る人気店だ。そんな『ランチョン』の4代目オーナー、鈴木寛さんがそんな人気の秘密を話してくれた。
店名がなく“角の洋食屋”でスタート! 常連の学生が「ちょっと気取ったランチ」=『ランチョン』と命名
――まずは、お店の創業について教えてください。
鈴木:「当店の創業は、1909(明治42)年。初代の鈴木治彦(氏)が、現在の場所よりももう少し駿河台交差点寄りの一角に開いた西洋料理店が前身で、創業時からビールを提供していたそうです。当時はまだビールが家庭に普及しておらず、ビールと洋食を売りにする店というのも界隈にありませんでしたから、店名もなく『角の洋食屋』として営業していたそうです。あるとき、常連客だった東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)の学生さんたちが『名前がないのは不便だから、“ちょっと気取ったランチ”という意味の“ランチョン”(Luncheon)ではどうか』と名付けてくださったのを、店名として今日まで使わせていただいています」


鈴木:「1923(大正12)年の関東大震災でこの一帯は焼けてしまい、その後の区画整理ののちに現在の場所に移転しました。震災後に土地を買ったときには、かなり借金をしたと聞いています。その後、第二次世界大戦では幸い戦火は免れましたが、戦時中は物資が配給制でしたので、配給のある日は『今日、ビールあります』と貼り紙をすると、長い行列ができたそうです。戦後、外装は何度か改装しており、1982(昭和57)年に現在の建物になりました。店内は110席と、神保町の飲食店の中ではかなり広いほうです。神保町の街並みを眺められる窓際の席が人気ですね」

1965年生まれ。鈴木家の次男として生まれ、兄と弟がいる。高校生の頃から店を手伝い、大学卒業後、3代目の父・一郎氏とともに老舗の経営を支えてきた。2015年に4代目に就任。
伝統的な洋食に加え、オリジナルのおつまみも豊富!

鈴木:「メンチカツやハンバーグ、オムライスなど、洋食屋の定番メニューが中心です。デミグラスソースは2週間かけて仕込み、エビフライは特大サイズの天然エビを使用。オムライスはケチャップライスを薄焼き卵で包んだ昔ながらのスタイルです。今は、『帝国ホテル』にいた料理長が担当していますが、代々の料理長が昔の味をそのまま継承しているので、『いつ来ても変わらない味だね』と懐かしんでくださるお客様が多いですね」


こんもりの泡と、マイルドな炭酸、冷たすぎない温度がおいしさの決め手!

鈴木:「当店は、『大日本麦酒』(現在のアサヒビール、サッポロビールの前身)の工場に近いという立地もあって、創業時からアサヒビールを提供しています。今のような流通がない時代からビールは鮮度が大事でしたから、ひときわおいしいと評判だったそうです。現在は6種類のビールを提供していますが、なかでもおすすめは『アサヒ生ビール』。大阪・吹田工場でしか製造されておらず、業務用でしか流通していない通称『マルエフ』をお出ししています」


愛する街で、老舗としての暖簾を守り続ける

鈴木:「少し前までは、弟が一緒にビールを注いでいたのですが、独立して別の店をもったので、今は私一人しか注ぎ手がいないのがちょっと大変だなと感じることはあります。でも、お客様は、アルバイトではなく店主がいつもビールを注いでくれるということに安心感を持って下さっていると思うので、いずれ息子が店を継ぐまで、頑張りたいと思っています」
鈴木:「私は、神保町が世界で一番素敵な街だと思っています。どこに行っても知り合いがいて、昔から『ランチョンのひろし』と可愛がってもらっていました。最近は神保町も客層が変わり、週末はご家族連れや観光のお客様も多く、ファミレスのような賑わいになることも。女性のお客様も増えたので、数年前のリニューアルの際には、女性用のトイレを増やしました。神保町は、学生相手の安い飲食店をはじめ、カレーや喫茶店などが多くグルメな街としても知られていますが、老舗は数少ないので、これからも街の洋食店として、歴史を守っていきたいですね」
【メニュー】
エビフライ 2,600円
自慢メンチカツ 1,100円
ハンバーグ 1,150円
オムレツ 1,000円
キャベツ重ね焼き 1,100円(ハーフ600円)
ビーフパイ 1,400円
ランチョン風ポテト料理 850円
※価格は税込
ビヤホール ランチョン
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-603-3233-0866
11:30~L.O.21:00(土曜は~ L.O.20:00)
日・祝

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この記事の筆者:笹木理恵(フードライター)
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