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20代にして食を達観した店主が追い求める、本当に「うまいもの」「うまい酒」

時刻(time):2018-01-31 05:12源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
全国各地の名だたる店を食べ歩き、磨き上げた味覚の持ち主 食の道への入り方は人それぞれ。されど、『お燗とvinめし くいぜ』の店主、小澤篤史さんのような、異色のアプローチで料理人になったケースは稀だろう。進学校に進みながらも、部活の練習に明け暮れた高校時代。気づけば受験シーズンが目の前に迫っており、苦肉の策で見つけた進学先が管理栄養士を目指す
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全国各地の名だたる店を食べ歩き、磨き上げた味覚の持ち主

食の道への入り方は人それぞれ。されど、『お燗とvinめし くいぜ』の店主、小澤篤史さんのような、異色のアプローチで料理人になったケースは稀だろう。進学校に進みながらも、部活の練習に明け暮れた高校時代。気づけば受験シーズンが目の前に迫っており、苦肉の策で見つけた進学先が管理栄養士を目指す大学の学部。食に興味はあったものの、さほど執着がないまま2年間を過ごし、20代に突入した頃から突然食に目覚めてしまったという。

それからというもの、アルバイト代はすべて飲食に費やし、学生時代から銀座の老舗寿司屋の暖簾をくぐり、名だたる料理旅館を歴訪した。管理栄養士として就職した後も美食探訪を続け、培った味覚を頼りに自宅でも料理を探求。彼の確かな味覚は、この頃に確立したと言えよう。

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食べ歩きを続ける中、ある運命的な出会いがあった。それは京都の日本酒バー『たかはし』を訪れた時のこと。それまであまり得意ではなかった燗酒を勧められ、恐る恐る飲んでみたところ、あまりのうまさに後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けたという。

その時飲んだ日本酒こそ、鳥取の『山根酒造場』が醸す「日置桜(ひおきざくら)」。この酒のトリコになった小澤さんは、雪の降りしきる鳥取まで足を運んで酒造りを見学し、名古屋の自宅に『山根酒造場』の山根正紀社長を招いてもてなし、ついには「山根酒造場 名古屋支店」を名乗ることを許された。

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リリースされた酒は逐一チェック。気に入ったものはまとめ買いし、自宅には酒部屋なるものまで作ってしまったというから驚く。同じ頃に自然派ワインのおいしさにも開眼し、外食の店選びは自分の好みの酒を置いてあることが基準となった。

心底うまいと思える食と燗酒を提供したい…それが『くいぜ』の原動力


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こうした生活を続けるうち、外で高いお金を出して好みにそぐわないものを飲食するなら、吟味した調味料で作った自分の料理と、選りすぐりの燗酒や自然派ワインを自宅で楽しみたい、と考えるようになった小澤さん。だったらこのコンセプトで店を開いてしまおうと決意したのが2016年の2月。そこから自宅で試作と試算を繰り返し、管理栄養士の職に別れを告げ、2017年1月、30歳で自店をオープンした。

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燗酒押しの店であることが一目でわかるよう、店名は『お燗とVinめし くいぜ』。すでに名古屋では食通として知られていた小澤さんが店を出すとあり、周囲はかなりザワついた。

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『くいぜ』で扱う酒はすべて小澤さん自らが選び、酒屋任せにはしない。自分の舌で味を確認し、ベストな温度帯を必ず探る。酒の棚には「日置桜」をはじめ、島根『板倉酒造』の「天穏(てんおん)」や静岡『杉井酒造』の「杉錦」などが肩を寄せあうように並んでいる。

一旦開封した酒を常温で置いていいのか? との質問をよく受けるが、きちんと造り込み、火入れした純米酒は、空気に触れることで好ましい変化を遂げる。「酒や燗のことがわからなければ、丸投げしてもらっても構いません」と小澤さん。お客の好みを丁寧にヒアリングし、チョイスした結果「うまい!」の一言をもらった時は、心の中でガッツポーズを決めるそうだ。

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自然派ワインもかなりリーズナブルに提供している。巷では一般小売価格の3倍が相場と言われるが、『お燗とVinめし くいぜ』では一般小売価格にグラス使用代や管理費などを一律上乗せした価格設定。おいしいワインをより多くの方に知ってほしいとの思いが先立ち、あまり儲けは考えていないという。

「こうでなければいけない」という固定概念を持ち込まない

徹底的に吟味したもののみを使用する。特に醤油は管理栄養士時代に友人たちと数十種類を一堂に集めて食べ比べ、お眼鏡にかなった1本だ。

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この醤油と飲んでおいしい純米酒を使った「鴨ロース醤油煮」(写真上)は看板メニュー。絶妙な火入れでロゼ色に輝く断面が、食欲と燗酒欲をそそって止まない。

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また、燗酒のアテに固定概念を持ち込まないのが『くいぜ』流。メニューに目をやると、パテドカンパーニュやパスタなど、何とも多国籍である。また、チーズと燗酒の組み合わせも一押ししており、不定期に登場する「モッツァレラとフルーツトマト」(写真上)はいかにもワインと合いそうな一皿だが、これにもぴったりな燗酒をチョイスしてくれる。

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ちなみにモッツァレラの原材料は水牛の乳で、たっぷり回しかけるオイルは無農薬栽培・手摘み・ノンフィルターのもの。香り高いオイルを纏ったシルキーでミルキーなモッツァレラに、狙った温度までグッと上げた熱燗を合わせると、思わず幸せのため息が出る。

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固定概念を持ち込まないといえば、小澤さんの奥様が焼くパンも然り(写真上)。チーズはもちろん、パンも発酵食品。酵母の働きで醸す純米酒との相性が悪い訳がないと言われれば、「確かに」とうなずかざるを得ない。奥様も小澤さん同様、美食を求めて名店を歴訪した経験の持ち主で、小澤さんも一目置く味覚の持ち主。独学で作ったとは思えないクオリティのパンには、すでに多くのファンが付いている。パン単体と熱燗の相性をぜひ試してほしい。

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燗酒をたっぷり楽しんだ後、〆でオーダーしたいのが「南インド風カレー」(写真上)。ホールスパイスから香りと複雑な味わいを存分に引き出したカレーは、ジョークではなくまるで「飲み物」のようにサラッとしていて、食後感が良い。小腹を満たす程度のボリューム感と、500円というリーズナブルな価格も飲んべえにはうれしい限り。具材は仕入れ状況によって変わるので、一期一会な味わいも再訪時の楽しみになる。

燗酒の魅力を最良の方法で伝える、いわば「燗酒伝道師」


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フラリと立ち寄るのがふさわしいカウンターメインのお店だが、確かな味覚に裏打ちされた小澤ワールドに浸ると、ついつい盃が重なり、長居してしまう。30代前半とは思えない酒と食の豊富な知識も絶好の肴になる。「僕の人生を変えたと言っても過言ではない燗酒。この素晴らしさを多くの方に知ってもらって、豊かな食生活を提案できたら幸せです」と小澤さん。話を聞いて試すうち、「燗酒=冬」「良酒=冷酒」という既成概念が、いつしか払拭されていることに気づくはずだ。

【メニュー】
鴨ロース醤油煮 700円
モッツァレラとフルーツトマト 2,000円
自家製本日のパン 300円~
南インド風カレー 500円
燗酒1合 500円~(半合でのオーダーも可)
グラスワイン 800円~
ボトルワイン 3,800円~
※価格はすべて税別

お燗とvinめし くいぜ

〒461-0004 愛知県名古屋市東区葵2-11-22  アバンテージ葵1F
052-932-2322
平日16:00〜23:00 土曜14:00〜21:00
日曜・祝日
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https://www.facebook.com/atsukan.quize/

この記事の筆者:露久保瑞恵(ライター&編集 料理・酒・旅探求人)


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