
伝説のパン職人が満を持してオープンしたパン屋
焼きたてパンの香りは、まるで魔法のようだ。香りに誘われるかのように、通りすがりの人が一人、また一人と店の中に入っていく。神楽坂駅から赤城神社横の路地を通って徒歩5分ほど。坂道の途中にある『パン・デ・フィロゾフ』は、オープンしてまだ3カ月ほどだが、近隣のみならず遠方からも訪れる人が絶えない人気店となっている。

その中には、『シニフィアン・シニフィエ』の巨匠・志賀勝栄さんもおり、食べたパンのおいしさに思わず弟子入りを志願した。


“日常使いできる、日々の食卓にのぼるパン”を作りたい。そう考えていた榎本さんにとって、自身の店をオープンするのにぴったりな街だった。

街になじみ、10年後にカッコよくなる店を目指したという。

「今晩、こんな料理に合わせたい」、「チーズにはどれがあう?」。会話を交わし、丁寧に説明をしながら、パンを売りたいと思い、このスタイルを選んだ。
トップシェフが自在に作り出す絶品「パン」の数々
「おすすめのパンは?」と尋ねると「全部です」と榎本さん。いずれのパンもシンプルでありながら、榎本さんならではのこだわりや技量がぎゅっと詰まっている。
フランス産の発酵バターを使い、3種類の小麦粉を配合して作られたクロワッサンは、芳醇なバターの香りがたまらない。サクサクと香ばしい外側と、小麦の甘さがにじみ出る生地とのバランスが絶妙だ。
榎本さんの中には“こんなクロワッサンにしたい”というイメージがしっかりあり、小麦の状態を見ながら配合率を微調整するなど、繊細な心配りが揺るぎないおいしさを作り上げる。

ひと口食べれば、普通のバゲットにはない食感に驚かされる。外側は薄くパリっと歯切れよく、内側は柔らかくもっちりしている。秘密は常識破りの湯種使いにある。
湯種とは、小麦粉を熱湯でこねて、でん粉をアルファ化させた種。もっちりとした食感が特徴で、食パンなどによく使われる。この湯種を使うことで、これまでにないバゲットが誕生した。
時間が経っても固くならないため、サンドイッチにぴったり。甘みのある味わいはお米のようで、和食にも合うバゲットになっている。

「バゲット・ジ・コンプレット」は、北海道産キタノカオリの全粒粉を使ったパン。キタノカオリはクセのない小麦で、全粒粉で使用しても、香りや味わいがマイルドなところが魅力だ。

榎本シェフは、この小麦を「面白い」と思い、食パンにした。成形しづらいほど柔らかい生地を、榎本さんならではの技術で食パンに仕上げていく。
出来上がったパンは、しっとり柔らかいながらも、モチモチして、他にはない食感がクセになる。甘みが強いため、そのまま何をつけずに食べてもおいしい。
トーストすると、カリッとした表面と、柔らかくモチっとした食感の両方が楽しめ、どちらで食べようか迷ってしまう。1日に作れる量が限られているため、昼までには売り切れてしまうそうだ。

料理にはもちろん、このままワインと合わせてみたくなる。
目指すは街の人に愛されるパン屋さん
現在、3つの天然酵母を使用しているが、それらに加えて、ルヴァン種を起こしているところだとか。この種を使って、酸味のあるパンをいくつか作っていくプランがあるそうだ。
間違いなく日本のトップパン職人の一人であり、どんなフィールドでも活躍できる榎本さんが選んだ新しい世界。これから、どんなパンが生まれてくるのか。考えるだけでもワクワクがとまらない。
【メニュー】
クロワッサン 280円
アルファ・バゲット 220円
バゲット・ジ・コンプレット 480円
アサマ山食パン 680円
ル・ヴィニロン・ブラン(1/4サイズ) 750円
ポミエ 680円
※価格は税込
パン・デ・フィロゾフ
〒162-0813 東京都新宿区東五軒町1-803-6874-5808
10:00~19:00
月曜、不定休

この記事の筆者:小田中雅子(ライター)
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