
のどかな住宅街の一角に行列! 開店1時間前から幻の「角食パン」を求める人々
京王線・仙川駅から徒歩4分、にぎやかな商店街から一本脇に入ると、暮らしやすそうな街並みの一角に、午前11時過ぎからちらほらと人影が並びだす。一人、また一人とその数は増え、正午近くには遠くからでも人目を引くほどの行列が。冷たい風が吹きつける真冬から炎天下の真夏まで、一年を通して絶えることなくそんな光景を生み出し続けているのが、人気ベーカリー『AOSAN』だ。

「お待たせしました!」の声と同時に開店すると、入口に立ったスタッフが少人数ずつ店内に招き入れてくれる。左壁にずらりと並ぶ「角食パン」の購入は、一人3斤まで。みるみるうちに緑色のビニール袋がなくなっていく。通常では約30分で完売するという、本当に狭き門なのだ。
鼻をくすぐる、焼きたてパンの豊かな香り




カリッとした耳の味わいと、中身のもちもちした食感。引きが強く、確かな食べごたえがありながら、生地そのものは滑らかでごく軽い。かすかな酸味と粉の風味を感じながら食べ進めるうちに、口の中であっという間に消えてなくなってしまい、もうひと口、もうひと口とつい後を引く。食パンって、こんなにおいしいものだったのか!
そのまま食べても充分おいしいが、トーストしてバターやジャムを加えて食べると、また違った魅力を満喫できる。
シンプルな材料でじっくり、ていねいに焼き上げる
この「角食パン」の原材料は、3種類の小麦粉と無添加のドライイースト、ハーレー浄水、塩、無塩バター、てんさい糖ときわめてシンプル。まずはドライイーストを用いて液状の元種を作るところから始まり、原材料のミキシング工程、そしてじっくりと長時間冷蔵発酵を施した後に焼成と、実に3日がかりで完成させるのだという。これだけの手間ひまをかけながら、価格は1斤250円といたってリーズナブルなのも大きな魅力だ。
また、同店の魅力は「角食パン」だけにとどまらない。角食パンと同じお昼の時間帯に焼き上がるパンのなかから、いくつか人気のメニューを紹介しよう。
名店『ルヴァン』での経験が活きるハード系ブレッド

奥田さん夫妻は、ともに天然酵母パンの第一人者として知られる『ルヴァン』で修業を積んだという経歴の持ち主。そんな二人が作り出すハード系パンは、確かな技術に基づくしみじみと奥行きのある味わいながら、老若男女誰でも食べやすいようにと中はやわらかめの仕上がりになっている。お好みでバターかクリームチーズを塗って食べるのもおすすめだそう。
フランス『ヴァローナ』社のチョコレートを使用した大人のチョコレートパン

パンの中からはチョコチップが顔を出し、ため息が出るほど芳醇な香りが漂う。それもそのはず、このパン生地には最高品質で知られるフランス『ヴァローナ』社のカカオとチョコチップをたっぷりと使用。甘さはごく控えめで、ビターな味わい。どこまでも豊かな香りが楽しめる大人のチョコレートパンだ。
しっとりとした生地とやさしい甘みのクリームが心を溶かす


日常にそっと寄り添う、愛され続けるパンの数々

一日に焼き上がるパンは、季節や日によって40~50種類ほどあるが、そのどれもが個性的過ぎず、高価すぎず、何気ない日常をより幸福なものにするために手間ひまをかけたものばかり。
カンパーニュなど常時5種類ほどが店頭に並ぶハード系パンから、午後15時頃に焼き上がる「シナモンロール」、そして夕方に焼き上がる、水玉模様が愛らしい「水玉コッペ」など、各時間帯ごとに焼き上がるパンには多くの固定ファンがいる。「角食パン」が売り切れてしまった後も、閉店まで客足はほとんど絶えることがない。
店頭ではコーヒーや店名にちなんだ「AOラテ」(青汁をアレンジしたドリンク)などのテイクアウトのドリンクの販売もあり、店の横にある小さなテラス席や、目の前の公園で焼きたてのパンとドリンクを楽しむこともできる。「近所にこんなお店があったらなぁ」と思わせてくれる『AOSAN』は、私たちの日常におだやかな口福をもたらしてくれる。
【メニュー】
角食パン 250円
ノワカランツ(丸中サイズ) 290円(一日70~80個の販売)
ショコラ 180円(一日約50個弱の販売)
カスタードクリームパン 180円(一日40~50個の販売)
あんボール 160円
シナモンロール 200円
水玉コッペパン 160円
イギリスパン(一山) 220円
※価格は税抜
撮影:岡本寿
AOSAN
〒182-0002 東京都調布市仙川町1-3-503-5313-0787
12:00~18:00
日曜、月曜

この記事の筆者:中村結(ライター)
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